Intelは当初、自社ファウンドリーでの完全内製化を目指していたが、その方針を修正し、18A製造技術の本格稼働後もTSMCの製造サービスを継続利用することを明らかにした。同社の幹部は「TSMCは優れたサプライヤー」と評価し、外部委託の適切な割合を模索している。

次世代プロセッサ「Core 300シリーズ」では、コンピュート・チップレットを自社で製造し、利益率向上を狙うが、一部の製品は依然としてTSMCで生産される見込みだ。特に周辺チップや低価格帯の製品は、TSMCのレガシープロセスが適していると判断されている。Intelは今後、外部委託と内製のバランスを戦略的に最適化する構えだ。

Intelの18A製造技術とTSMCの関係 変化する製造戦略

Intelは長年にわたり、自社ファウンドリーでの完全内製化を目標に掲げてきた。しかし、Morgan Stanley Technology, Media & Telecom Conferenceでの発言によれば、その方針に修正が加えられた。Intelの企業計画・投資家向け広報担当副社長ジョン・ピッツァー氏は、TSMCのウエハーを確保し続ける方針を明言し、TSMCとの健全な競争を維持する重要性を強調した。

次世代プロセッサ「Core 300シリーズ」のコンピュート・チップレットは、米アリゾナ州のFab 52やFab 62などで製造される予定だ。これはIntelの最新18Aプロセスを用いることで、高い粗利益率を実現する狙いがある。

一方で、Intelが提供するすべてのプロセッサを自社製造するわけではなく、周辺チップや低価格帯の製品については、引き続きTSMCの製造サービスを活用するという判断が下された。

この戦略変更は、Intelにとって現実的な選択である。自社の最新製造技術を活用しつつも、TSMCの確立された生産体制を部分的に利用することで、リスクを分散しながら安定供給を確保できる。競争力の維持とコスト最適化のバランスを取るため、Intelの外部委託割合は今後も調整される見込みだ。

Intelの内製化戦略と外部委託のバランス どの製品がどこで作られるのか

Intelは収益性の高い製品群については内製化を進める方針だ。例えば、数千ドル単位の高利益率プロセッサである「Xeon」シリーズは、これまで一貫して自社工場で製造されており、今後もその方針に変わりはない。また、クライアントPC向けのプレミアムプロセッサについても、可能な限り自社製造を優先することが予想される。

一方で、Intelのラインナップには、価格帯の低いコントローラーやチップセットなども含まれる。これらの製品は、Intelが現在持たないレガシープロセスノードを活用する必要がある。特に14nmや22nmといったノードは、Intelの自社製造設備では効率的に生産できないため、TSMCをはじめとする外部ファウンドリーの利用が妥当な選択となる。

Intelが自社の先端技術を最も利益率の高い製品に適用し、それ以外の製品についてはTSMCに委託するという戦略は、短期的なコスト削減と長期的な競争力維持の両面で理にかなっている。製造コストが膨大になりがちな最新プロセス技術を適用する製品と、外部委託で製造コストを抑える製品を明確に分けることで、Intelは最適な利益構造を確立しようとしている。

TSMCの存在がIntelの競争力を左右する可能性

IntelはTSMCとの関係を単なる外部委託先としてではなく、競争環境の一部として捉えている。ピッツァー氏の発言にもあるように、TSMCの技術力と製造キャパシティを活用することで、Intel Foundry自体の競争力を維持する狙いがある。

この視点から見ると、TSMCとの関係はIntelにとって不可欠だ。TSMCは、最先端プロセスだけでなく、多様なプロセスノードを持つことで、Intelがカバーできない製品群にも対応できる。このため、Intelがすべての製品を自社製造に切り替えることは、現実的に難しい状況にある。

また、TSMCの存在がIntelの製造戦略の柔軟性を支えている点も注目すべきだ。新プロセスの立ち上げ時には、製造歩留まりの問題が生じることがあるが、TSMCを活用することでそのリスクを分散できる。特に、高利益率製品は自社製造し、リスクの高い製品やコストを抑えたい製品をTSMCに委託することで、Intelは効率的な製造体制を維持できるのだ。

今後もIntelは、TSMCとの関係を調整しながら自社の製造技術を強化していくと見られる。完全な内製化にこだわらず、外部の製造力を活かすことで、競争優位を確保し続ける戦略が続くだろう。

Source:Tom’s Hardware