Appleは、これまでiPhoneとiPadのエントリーモデルに採用してきた64GBのストレージをついに廃止し、128GBを新たな最低容量とした。背景には、写真・動画データの肥大化、iOSのストレージ要件の増加、そしてApple Intelligenceの登場によるストレージ圧迫がある。

2017年にiPhone Xが登場して以来、Appleは8年間にわたり64GBを最低ストレージとして維持してきた。しかし、近年ではアプリやシステムの容量が増加し、64GBでは快適な利用が難しくなっていた。特にApple Intelligenceの利用には数GB以上の空き容量が必要であり、従来のストレージでは対応が困難だった。

今回の変更により、最新のiPad AirやiPhone 16eを含むすべてのiOSデバイスで、最低ストレージが128GB以上となった。一方で、iCloudの無料ストレージは未だに5GBのままであり、クラウド環境の改善を求める声も依然として多い。Appleのストレージ戦略は進化したが、クラウドストレージの問題は残されたままだ。

Appleが64GBを捨てた理由とは 変化するストレージ需要

Appleは長年にわたりiPhoneとiPadのエントリーモデルに64GBのストレージを採用してきたが、ついに128GBへと引き上げた。この決定の背景には、データサイズの肥大化とApple Intelligenceのストレージ要件がある。

特に、写真や動画の高解像度化により、ユーザーが保存するデータ量は飛躍的に増加した。2017年にiPhone Xが登場した当時、64GBは十分な容量と考えられていたが、今ではアプリやOSの更新だけで数GBを消費する状況になっている。Apple Intelligenceの導入も大きな要因だ。

AI機能を活用するためには端末に大規模なデータを保存する必要があり、Appleはその動作要件として7GB以上の空き容量を必要とすることを明言している。これにより、64GBでは快適な使用が難しくなり、128GB以上への移行は避けられなかった。ただし、今回の変更は歓迎される一方で、ユーザーの不満も少なくない。

特に、iCloudの無料ストレージが5GBのままである点が問題視されている。ローカルストレージが増えてもクラウドがボトルネックになれば、結局データ管理の負担は変わらない。Appleがストレージ環境を本当に改善したいのであれば、iCloudの無料容量の引き上げも必要になるだろう。

64GB時代の終焉 iOSの進化がもたらした新たな基準

64GBがかつての標準だった理由には、iOSのシステム要件の変化が関係している。過去のiOSバージョンでは、システムのストレージ占有量が今ほど大きくなかった。しかし、近年のiOSアップデートでは、数GB単位の容量が必要となることが一般的になっている。

これにより、64GBの端末ではアップデートのたびに空き容量を確保する必要があり、多くのユーザーが不要なデータを削除する手間を強いられていた。また、アプリの肥大化も無視できない。近年のゲームアプリは数GBを超えるものが珍しくなく、写真・動画編集アプリもAI機能の導入によりデータサイズが大幅に増加している。

Apple自身も、高機能なProRes動画撮影を可能にするなど、ストレージを大量に消費する機能を次々と導入している。その結果、64GBではあっという間に容量不足に陥ることが常態化していた。

128GBへの移行は、これらの変化を踏まえた必然的な対応と言える。ただし、Appleは過去にも段階的に最低ストレージを引き上げてきた歴史があり、今後もストレージの増加が続く可能性が高い。現時点では128GBが新たな基準となったが、数年後には256GBが最低ラインとなる時代が来るかもしれない。

iCloudの5GB制限が生む新たな課題

Appleがローカルストレージを増やした一方で、iCloudの無料ストレージは2011年の5GBから変わっていない。このギャップが、ユーザーにとって新たな問題となりつつある。たとえば、iPhoneのストレージが128GBに増えたとしても、バックアップやクラウドストレージとして利用できる容量が5GBでは、写真や動画の保存にはまったく足りない。

結果として、多くのユーザーが月額料金を支払ってiCloudの有料プランを契約せざるを得ない状況にある。Appleは、写真や動画をクラウドに保存する「iCloudフォトライブラリ」を推奨しているが、無料プランのままでは実用的とは言えない。

特に、高解像度の写真や4K動画を撮影するユーザーにとって、5GBは数日分のデータしか保存できないレベルだ。これは、Appleがローカルストレージの拡充を進める一方で、クラウド環境の改善には消極的であることを示している。

もしAppleが本格的にストレージ環境を向上させるつもりなら、無料のiCloudストレージも引き上げる必要がある。GoogleやMicrosoftはより大容量の無料クラウドストレージを提供しており、Appleもこれに追随する可能性はある。しかし、現時点ではクラウドの制約によって、多くのユーザーがストレージの問題に悩まされ続けているのが現状だ。

Source:Analytics Insight