Appleが新型iPad(A16)を発表した。エントリーモデルながら、A14 BionicからA16チップへの進化により最大50%の性能向上を実現し、ストレージも64GBから128GBへ倍増している。しかし、最新のApple Intelligence(AI機能)は搭載されておらず、この点は意外な決定といえる。

デザイン面では、第10世代iPadと同様の11インチLiquid Retinaディスプレイを採用し、横向き配置のフロントカメラも継承。さらに、Magic Keyboard Folioとの相性も良好で、快適なタイピング環境を提供する。一方で、Apple Pencilの充電方式には制約があり、利便性に課題が残る。

A16チップ搭載でパフォーマンス向上 それでも控えめな進化?

新型iPad(A16)は、前モデルからA14 BionicからA16チップへと進化した。Appleによれば、この変更により最大50%のパフォーマンス向上が期待できるという。実際に、アプリの起動速度やゲームの処理性能、マルチタスク時のレスポンス向上など、日常的な使用においては確かな違いを感じられるはずだ。また、内部ストレージは64GBから128GBへと倍増し、動画や写真、アプリの保存容量に余裕が生まれている。

一方で、今回のアップグレードは控えめな印象もある。デザインは前モデルの第10世代iPadとほぼ同じで、ディスプレイも11インチLiquid Retinaを採用し、目立った変更点はない。カメラやオーディオ機能についても大きな進化は見られず、基本的なタブレットとしての使いやすさを重視したモデルといえる。

AppleがこのiPadをどのようなユーザー層に向けているのかを考えると、クリエイティブな作業を求める人よりも、日常使いに適した安定したデバイスを求める人向けという位置づけが明確になる。Apple Intelligence非対応という点も、シンプルなタブレットを求める層にとっては影響が少ないかもしれない。

Apple Intelligence非対応 その意図とは?

今回のiPad(A16)はAppleの新しいAI機能「Apple Intelligence」に対応していない。これは意外な決定だが、AppleがすべてのデバイスにAIを搭載するわけではないという方針を示している可能性がある。Mシリーズチップを搭載したiPad ProやiPad Airに比べ、A16チップはAI処理向けの設計が優先されていないのかもしれない。

また、エントリーモデルのiPadは長年、価格と性能のバランスを重視してきた。Apple Intelligenceの機能をフル活用するには、高性能なチップと広範なクラウド連携が求められるため、このiPadのターゲット層には不要と判断された可能性もある。実際、動画視聴や電子書籍、Webブラウジングなどの用途ではAI機能がなくても問題はない。

とはいえ、Appleが今後のiPadシリーズにどのようにAIを取り入れるかは注目に値する。将来的にはエントリーモデルでもAIを活用できるよう、チップのアップグレードやソフトウェアの最適化が進められる可能性がある。現時点では、Apple Intelligenceを必要としないユーザーに向けた、シンプルで扱いやすいタブレットという立ち位置が明確になったといえる。

Magic Keyboard FolioとApple Pencilの微妙な関係

iPad(A16)はMagic Keyboard Folioに対応しており、これを装着することでノートPCのように使うことができる。トラックパッド付きのキーボードは打鍵感がよく、ファンクションキーも搭載されているため、文章作成や表計算などの作業にも適している。キーボード部分が取り外せる2ピース構造も便利で、シーンに応じて使い分けられる仕様になっている。

しかし、Apple Pencilの充電方式には課題が残る。このiPadはUSB-Cポートを搭載しているが、純正スタイラスの互換性が複雑だ。第1世代のApple Pencilを使用する場合は変換アダプタが必要となり、充電時に手間がかかる。また、USB-C対応のApple Pencilは使用できるものの、ワイヤレス充電には対応しておらず、キャップを外して直接充電する必要がある。

これらの仕様を見ると、AppleはMagic Keyboard Folioとの組み合わせを前提にしながらも、Apple Pencilの使い勝手には優先度を置いていないように思える。イラストや手書きメモを多用するユーザーにとっては、iPad AirやiPad Proのほうが適しているだろう。それでも、Apple Pencil自体の書き心地は変わらず優れており、簡単なメモや注釈を加える用途なら十分に活用できるはずだ。

Source:TechRadar