Appleが新たに開発したiPhone 16eは、iPhone SE 3の後継として登場した。従来のSEシリーズが低価格路線を維持していたのに対し、16eはスペック向上と引き換えに価格が上昇。約40%の値上げが批判を招く一方で、AppleはSE 3の販売不振を受け、戦略を大きく変更したとみられる。
市場調査によると、SE 3は2023年のスマートフォン売上ランキングにすら入らず、2024年にはAppleの総売上の5%にとどまった。この結果を受け、Appleは廉価モデルの在り方を見直し、16eを新たなエントリーモデルとして展開。アナリストの間では「eシリーズ」の今後の継続にも注目が集まっている。
iPhone SE 3が売れなかった理由とは
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AppleのiPhone SE 3は低価格モデルとして登場したが、市場での反応は芳しくなかった。Counterpoint Researchのデータによると、2023年第3四半期に最も売れたのは標準的なiPhone 15で、SE 3はランキングにすら入らなかった。さらに、Consumer Intelligence Research Partners(CIRP)の調査では、2024年のAppleの売上に占めるSE 3の割合はわずか5%にとどまり、発売直後の2022年でも7%に過ぎなかった。
最大の要因は、ターゲット層が極端に狭かったことだ。SE 3はA15 Bionicを搭載しながらも、デザインは旧型のiPhone 8を踏襲し、Touch IDを継続。これが「懐かしさ」として歓迎される一方で、時代遅れと感じるユーザーも多かった。ディスプレイは小さく、ベゼルが目立つデザインは、主流のオールスクリーンモデルと比較すると古臭さが際立った。
また、価格設定も微妙だった。SE 3は約430ドル(日本では約6万円)という手頃な価格ではあったが、少し上乗せすればより高性能なiPhone 12やiPhone 13を購入できる状況だった。さらに、Androidのミッドレンジ機と比べると、カメラ性能やディスプレイの見劣りも指摘された。結果として、コストパフォーマンスを求める層には刺さらず、高機能を求める層には物足りないモデルとなり、販売不振につながった。
iPhone 16eの狙いとシリーズ化の可能性
iPhone 16eは、SEシリーズの後継とみられているが、従来のSEシリーズとは異なる戦略を採用している。SE 3が過去のモデルを活用したアップデート版だったのに対し、16eは最新のiPhoneの要素を取り入れながら、一部の機能を制限することで価格を抑える手法を取った。これにより、最新モデルに近い使用感を求めるユーザーのニーズに対応しつつ、価格を抑えることが可能になった。
ただし、価格の上昇は避けられなかった。16eの価格は599ドルと、SE 3よりも40%以上高くなっている。Appleはこの価格設定について明確なコメントを出していないが、業界の分析では、製造コストの増加やプレミアムモデルの需要の高まりが背景にあるとされている。実際、Counterpointの調査によると、iPhoneの平均販売価格は過去4年間で25%上昇しており、スマートフォン市場全体でも600ドル以上のモデルの割合が2015年の15%から2024年には25%に増えている。
さらに、CIRPのアナリストは、16eが単発のモデルではなく、新たな「eシリーズ」として今後も展開される可能性を指摘している。彼らの予測では、2025年にはiPhone 17eが登場し、2026年以降も継続的に新モデルが発表されるかもしれない。もし「eシリーズ」が定着すれば、従来のSEシリーズに代わる新しいエントリーモデルとして、Appleのラインナップにおける重要なポジションを確立することになるだろう。
スマートフォン市場の変化とAppleの戦略
Appleが廉価モデルのiPhoneを出しても売れない背景には、スマートフォン市場の変化がある。近年、ユーザーの関心は単に安いデバイスではなく、高品質で長く使える端末へとシフトしている。Appleの販売データでも、最も売れているのは最新の標準モデルであり、さらに高価なPro Maxも人気が高い。
一方で、Android陣営ではミッドレンジモデルが豊富に展開されており、価格帯が重なるiPhone SEシリーズは競争力を失いつつあった。特に中国メーカーの端末は、ハイエンドに匹敵するスペックを低価格で提供するケースが増え、SEシリーズの存在意義が問われるようになった。
Appleはこの状況に対応するため、低価格モデルの単純な継続ではなく、プレミアムモデルに近い機能を持たせたiPhone 16eを導入したと考えられる。今後、ユーザーが「低価格の古いモデル」ではなく、「適度にコストを抑えつつ最新機能を備えたモデル」を求める傾向が続けば、Appleの「eシリーズ」戦略は正当化されるかもしれない。iPhone 16eは単なるSEシリーズの後継ではなく、新しい市場トレンドへの適応策とも言えるだろう。
Source:Cult of Mac