Appleは、複合現実ヘッドセット「Vision Pro」に向けた次期アップデート「visionOS 2.4」で大幅な機能強化を図る。特に「Apple Intelligence」の導入が注目されており、執筆支援ツールや生成AIによる絵文字、画像編集ツールなどが追加される予定だ。
加えて、3D画像やパノラマ写真の視聴に特化した新しい空間コンテンツアプリが登場し、没入感を高めるコンテンツが提供される。さらに、ゲストモードの改善により家族や友人との共有が容易になり、より多くの人がVision Proを体験できる環境が整う。
これらの新機能の一部は今週から開発者向けベータ版として提供され、正式リリースは4月を予定している。Appleがこのタイミングで強化を図る背景には、Android XRやGoogleのGemini AIツール統合といった競争環境の変化が影響している可能性もある。
Apple IntelligenceがVision Proにもたらす新たな可能性
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Appleは、visionOS 2.4のアップデートを通じて、Vision Proに「Apple Intelligence」と呼ばれる一連のAI機能を導入する予定だ。これにより、執筆支援ツール「Writing Tools」やAI生成による絵文字「Genmojis」、画像編集ツール「Image Playground」などが利用可能になる。特に、M2チップと16GBのRAMを搭載するVision Proでは、これらの機能をデバイス上で処理できるため、クラウド依存を減らしながらスムーズな動作が期待される。
Apple Intelligenceの搭載は、他のApple製品と同様に、ユーザーの利便性を向上させることが目的と考えられる。例えば、執筆支援ツールはメモや日記、メール作成などの場面で活用でき、ハンズフリーでの文章生成やリライトを支援する。さらに、Genmojisを活用すれば、ユニークな表現を簡単に作成でき、ビジュアルコミュニケーションの幅が広がる。画像編集ツールも直感的な操作が可能となることで、手軽に空間コンテンツをカスタマイズする手段として注目されるだろう。
また、Android XRをはじめとする競合の動向がAppleの決定に影響を与えた可能性もある。GoogleはGemini AIツールをヘッドセットに統合する計画を進めており、Samsungの「Project Moohan」も年内に登場予定だ。Appleがこれらに対抗する形で、Vision ProのAI機能を早期に実装することで、他社との差別化を図ろうとしている可能性がある。
空間コンテンツアプリがもたらす没入体験の進化
visionOS 2.4のアップデートでは、Vision Pro向けに新たな空間コンテンツアプリが追加される。このアプリでは、3D画像やパノラマ写真を利用した没入型コンテンツの視聴が可能となり、Appleが推進する「空間コンピューティング」の体験がさらに向上する。Appleはこれまでにも空間コンテンツの開発に力を入れており、今回のアップデートでその取り組みがさらに強化される形となる。
特に注目されるのが、Appleの「TV」アプリで提供予定の没入型動画だ。例えば、北極のサーフィン映像が公開される予定であり、現実では体験しにくい環境をVR映像で疑似体験できる仕組みになっている。これにより、エンターテインメントだけでなく、教育や観光など幅広い用途での活用が期待される。
Appleが空間コンテンツに力を入れる背景には、ヘッドセット市場の拡大とともに、ユーザーの関心を引き続ける狙いがあると考えられる。現状では、Vision Proの価格が高いため、一般ユーザーの手に届きにくいが、コンテンツの充実によって購入意欲を刺激し、将来的な普及につなげようとしている可能性がある。
ゲストモードの改善でVision Proの活用範囲が広がる
Appleは、visionOS 2.4のアップデートでゲストモードの改善も行う。これにより、Vision Proを家族や友人と共有しやすくなり、より多くの人がこのデバイスを体験する機会を得ることになる。従来のゲストモードでは、ヘッドセットを貸し出す際に設定の変更が煩雑だったが、新バージョンではiPhoneを使った操作が可能になり、管理の利便性が向上する。
Appleがゲストモードの強化を行う理由として、口コミによるデバイスの普及促進が考えられる。Vision Proは価格が高いため、実際に体験してみないと購入に踏み切りにくい。ゲストモードの改善によって、購入者が身近な人にデバイスを試させやすくなれば、潜在的な購買層が増える可能性がある。また、家族間での共有がしやすくなることで、1台のVision Proを複数人で利用するニーズにも対応できる。
AppleはすでにiPhoneやiPadで「ファミリー共有」機能を提供しており、Vision Proのゲストモードも同様の利便性を目指していると考えられる。今後、さらに柔軟な共有機能が追加されれば、ヘッドセットの用途が広がり、より多くのユーザーがMR体験を楽しめる環境が整うだろう。
Source:Tom’s Guide