AMDの次世代モバイルプロセッサ「Strix Halo」は、ダイ設計の詳細から3D V-Cache技術を活用できる可能性が浮上している。この新たなキャッシュ構造により、従来のAPUと比較して大幅なパフォーマンス向上が期待される。
ASUS ChinaのゼネラルマネージャーであるTony氏が指摘するように、Strix HaloにはTSV(シリコン貫通ビア)が搭載されていることが明らかになった。これにより、AMDはL3キャッシュの上に3D V-Cacheを追加することが可能となる。この技術はすでにデスクトップ向けRyzen X3Dシリーズで成功を収めており、モバイル向けにも同様の進化が見込まれる。
さらに、Strix Haloは新しいインターコネクト技術「Sea of Wires」を採用し、従来のチップレット設計と比べて42.3%のフットプリント縮小を実現。これにより、CPUのコンパクト化とともに、レイテンシの低減や消費電力の向上が期待される。
また、内蔵GPU「Radeon 8060S」は、ノートPC向けGeForce RTX 4070と肩を並べる性能を誇り、外部GPUなしでも高い描画能力を発揮できる。AMDの3D V-Cache搭載モバイルチップが実現すれば、ゲーミングやクリエイティブ用途のノートPCに大きな影響を与える可能性がある。正式な発表はまだないものの、今後の展開に注目したい。
Strix Haloの3D V-Cache採用が示唆する次世代モバイルチップの進化
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Strix Halo APUのダイ設計には、AMDの3D V-Cache技術を活用できる要素が確認されている。この技術はすでにデスクトップ向けRyzen X3Dシリーズで大きな成功を収めており、モバイル環境においても同様の飛躍が期待される。
通常、モバイル向けのAPUでは、電力効率を考慮してL3キャッシュの搭載量に制限がある。しかし、Strix HaloではTSV(Through-Silicon Vias)が導入されていることが確認されており、3D V-Cacheを追加する土台が整っている。この構造により、従来の2Dダイ設計よりもキャッシュ容量を増やすことが可能になり、CPUのメモリアクセス速度が向上する。
特に、キャッシュヒット率が向上することで、ゲームやクリエイティブ作業におけるパフォーマンスの底上げが期待される。また、AMDはこれまで3D V-Cacheを採用したチップをゲーミング向けに最適化してきたが、モバイル分野でも同様のアプローチを取る可能性がある。
特に、ノートPC向けの高性能APUとして、エンスージアスト向けの製品ラインナップに投入される可能性は十分に考えられる。もし実現すれば、Strix Halo X3Dとして登場し、既存のモバイルチップを大きく上回るパフォーマンスを提供することになるだろう。
新設計のインターコネクトがもたらす省電力化と高効率化
Strix Halo APUには、TSVに加えて新しいインターコネクト設計が採用されている。この技術は、デスクトップ向けZen 5 Ryzen 9000シリーズで使用される従来のチップレット間通信とは異なり、よりコンパクトで高効率なデータ転送を実現する。
従来のSERDES(Serializer/Deserializer)技術を活用したインターコネクトでは、チップレット間の通信遅延や電力消費が問題となっていた。しかし、Strix Haloでは「Sea of Wires」と呼ばれる新しい設計が適用され、全体的なフットプリントが42.3%縮小。結果として、ダイサイズが小型化されるだけでなく、通信レイテンシの低減と消費電力の最適化が進んでいる。
特にモバイル向けのAPUでは、電力効率の向上が非常に重要な要素となる。バッテリー駆動時間の延長や発熱の抑制は、モバイルデバイスのパフォーマンス維持に直結する。Strix Haloが採用する新設計のインターコネクトは、これまでのチップレットアーキテクチャの制約を克服し、次世代モバイルプロセッサとしての完成度を高める要素となるだろう。
iGPU性能がノートPC市場に与える影響
Strix Haloは、CPU性能だけでなく統合型GPU(iGPU)においても他を圧倒する可能性がある。特に、内蔵GPUであるRadeon 8060Sは、ノートPC向けのGeForce RTX 4070に匹敵する性能を持つとされ、従来のAPUとは一線を画す実力を備えている。
ノートPC市場では、長らく外部GPUが必須とされてきた。しかし、Strix Haloの強力なiGPUを活かせば、専用のdGPUを搭載しなくても、高解像度でのゲームプレイやクリエイティブ作業が快適に行える可能性がある。特に、消費電力と発熱の面でメリットが大きく、ゲーミングノートやクリエイティブ向けノートPCの設計に大きな影響を与えることが考えられる。
加えて、AMDのAPUはこれまでもハイエンド向けノートPCに採用されてきたが、Strix Haloの登場によって市場のトレンドが変わるかもしれない。仮に、X3D技術と強力なiGPUが組み合わさったモバイルチップが登場すれば、IntelのMeteor LakeやLunar Lakeといった競合製品との差がより明確になるだろう。今後のAMDの正式発表が待たれる。
Source:Wccftech