AI技術の進化に不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)の市場において、Nvidiaが圧倒的な支配力を維持している。Samsungの内部ロードマップによると、Nvidiaは2026年までに1,100万ユニットのHBMを購入予定であり、業界内での優位性をさらに強固なものにする見込みだ。一方、GoogleはTPUの強化を進めており、HBMの購入量で2位に浮上する可能性が高い。
しかし、AMD、Microsoft、Amazonは限られた市場シェアを争い、特にIntelはHBM市場からの影響力を急速に失いつつある。これらの企業が求めるメモリ需要はNvidiaに比べて大きく劣り、AI分野での競争力を維持するのが困難になりつつある。HBM供給の中心はSK hynixとSamsungが担っており、Micronも市場参入を目指しているが、その影響力は限定的だ。
HBM市場における圧倒的なシェアを握るNvidiaが、今後どのようにAI業界の勢力図を塗り替えていくのか、引き続き注目が集まる。
NvidiaがHBM市場を独占する背景と競合企業の課題
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HBM(高帯域幅メモリ)は、AIモデルの処理速度向上に不可欠な技術であり、Nvidiaの成功を支える重要な要素となっている。Samsungの内部ロードマップによると、Nvidiaは2026年までに1,100万ユニットものHBMを購入する見込みで、AI市場における圧倒的な立場を確立している。一方で、AMDやMicrosoftなどの競合企業は市場でのシェア確保に苦戦しており、特にIntelの存在感は薄れつつある。
NvidiaのHBM独占の背景には、同社のAIアクセラレータへの投資がある。特に、B200やGB200などの最新GPUは、大量のHBMを必要とする設計になっており、供給を確保するためにSamsungやSK hynixとの関係を強化している。これに対し、AMDのMI400やMicrosoftのMaia AIチップは、Nvidiaと比較して導入規模が小さく、十分な供給を確保するのが難しくなっている。
また、IntelはHBM市場での競争力を失いつつあり、Gaudi3アクセラレータのHBM需要が2026年にはゼロになるとの予測もある。これは、IntelのAIチップが市場のニーズに適応できていない可能性を示唆している。競争が激化するHBM市場で、Nvidiaの独占を崩すことができる企業は現れるのか、その動向が注目される。
GoogleのTPUがHBM市場で影響力を拡大する理由
NvidiaがHBM市場を独占する中で、Googleは独自のAIプロセッサであるTensor Processing Unit(TPU)を強化し、HBM需要を急速に伸ばしている。Samsungのロードマップによれば、GoogleのHBM購入量は2026年に280万ユニットに達し、Nvidiaに次ぐ規模となる見込みだ。特にTPU v7pの投入により、AI処理の効率を高めるための高性能メモリの必要性がさらに高まっている。
GoogleがTPUの強化を進める理由の一つは、AI市場での競争力を高めることにある。従来、Googleはクラウドサービスや検索エンジンで圧倒的なシェアを持っていたが、近年はOpenAIやAnthropicなどのAIスタートアップが台頭し、独自の計算インフラを強化する必要に迫られている。そのため、Googleは自社のAIチップを開発し、HBMを大量に確保することで、AIトレーニングと推論の効率を高めようとしている。
また、Googleの親会社であるAlphabetは2024年に750億ドルの資本支出を計画しており、その一部がHBMの確保やAIインフラの拡充に充てられる可能性がある。これにより、GoogleはNvidiaに次ぐHBM市場の主要プレイヤーとなり、将来的にはさらなるシェア拡大を狙うことが考えられる。
HBM市場の競争構造と今後の展望
HBM市場は、SK hynixとSamsungが圧倒的なシェアを持ち、Micronが市場参入を目指す形で推移している。これにより、主要なHBM供給元が限られているため、Nvidiaのような大手企業が優先的に供給を受ける一方で、AMDやMicrosoftのような後発企業は供給量の確保が難しくなっている。この状況は、HBMを必要とする企業間の競争をさらに激化させる要因となる。
HBM市場の今後の展望としては、次世代メモリ技術の進化が鍵を握る。特にSamsungは、HBM4「Snowbolt」の開発を進めており、これが市場に投入されることで、高性能AIアクセラレータのさらなる進化が期待される。また、SK hynixも新たなHBM技術を開発しており、今後の供給状況に変化をもたらす可能性がある。
一方、Micronの市場参入がどこまで成功するかも注目されるポイントだ。現在の市場シェアは小さいものの、独自の技術開発と価格競争によって、NvidiaやGoogleといった大手企業にとっての新たな選択肢となる可能性がある。HBM市場の競争構造が今後どのように変化するか、引き続き目が離せない状況だ。
Source:TechRadar