Appleは、最も安価なiPadの新モデルをまもなく発表する予定とされている。前回のアップグレードは2022年10月に行われ、第10世代モデルとして大きな進化を遂げた。しかし、今回の第11世代はそこまでの変化は期待できない。主な変更点はチップセットの強化にとどまるとみられている。
A17 Pro搭載の意義とは?従来モデルとの違いを徹底比較
![](https://tech-gadget.reinforz.co.jp/wp-content/uploads/2024/05/748227_m-1024x683.jpg)
第11世代iPadに搭載されると噂されているA17 Proは、従来のA14 Bionicと比較して大幅な性能向上が見込まれている。特にGPUの進化は顕著で、レイトレーシングのハードウェアアクセラレーションが可能になり、より高品質なグラフィック処理が期待される。この技術はiPhone 15 Proシリーズで初めて導入され、モバイルゲームやクリエイティブアプリの描画性能を飛躍的に向上させた。iPadでは、より広い画面を活かして没入感のあるゲーム体験が可能になるかもしれない。
さらに、A17 Proは3nmプロセスで製造されており、電力効率の向上も特徴の一つだ。これにより、バッテリー持続時間の改善が期待される。ただし、エントリーモデルのiPadはバッテリーサイズが限られており、高性能チップを搭載しても劇的な駆動時間の延長にはならない可能性がある。
一方、CPUの進化も見逃せない。A14 Bionicと比べて約40%のパフォーマンス向上が見込まれており、アプリの起動速度やマルチタスク処理の快適さが向上すると考えられる。特に、近年のiPadOSの進化に伴い、アプリの同時使用やスプリットビュー機能の需要が高まっているため、この点は重要な改善ポイントとなるだろう。
iPadにおける「Apple Intelligence」の活用範囲とは?
新たに追加される可能性が高い「Apple Intelligence」は、Appleが推進するAI技術の総称であり、ジェネレーティブAIを活用した機能が数多く含まれる。具体的には、Siriの大幅強化、Genmoji(ジェネレーティブ絵文字)、Image Playground、ChatGPTとの統合などが挙げられる。特に、AIを活用した画像生成機能は、クリエイティブな用途でiPadを活用するユーザーにとって魅力的な追加要素となるだろう。
また、新型iPadでは、音声認識を活用したSiriのアップグレードが期待される。Appleは過去数年にわたり、音声アシスタントの改善に注力しており、より自然な対話が可能になると考えられる。さらに、オフライン環境でも一部のAI機能が動作する可能性があり、クラウドを介さずに個人データをローカルで処理できる点も注目される。
ただし、エントリーモデルのiPadがApple Intelligenceのすべての機能に対応するかどうかは不透明だ。AI処理には高度なハードウェアが求められるため、一部の機能が上位モデル限定になる可能性もある。特に、iPad ProシリーズにはMシリーズチップが搭載されており、高度なAI処理が可能なため、A17 Pro搭載のiPadでは一部の機能に制限がかかる可能性がある。
第11世代iPadのポジションはどう変わるのか?シリーズ全体のバランスを考察
AppleのiPadシリーズは、エントリーモデルからProシリーズまで幅広いラインナップが展開されている。今回の第11世代iPadは、基本的に「価格を抑えながらも最低限の性能を維持するモデル」としての立ち位置を継続すると考えられる。しかし、A17 Proチップやメモリ8GBの搭載によって、従来の「廉価モデル」という枠組みを超える可能性もある。
現在のiPadラインナップを見渡すと、第10世代iPadとiPad Airの間の差別化が曖昧になってきている。特に、iPad AirはM1チップを搭載しており、価格差を考慮すると、ユーザーにとってはどちらを選ぶか迷う状況が生じるだろう。もし新型iPadのストレージが64GBから128GBに引き上げられれば、よりコストパフォーマンスの高い選択肢として魅力が増すことになる。
一方で、デザイン面での変更がほぼないとすれば、新型モデルがどれだけ市場にインパクトを与えるかは疑問が残る。現在のトレンドを踏まえると、エントリーモデルのiPadにも有機ELディスプレイの採用や、Apple Pencil Proの対応など、より実用的なアップグレードが求められている。しかし、これらの機能が導入される可能性は低く、結果的に「スペックアップだけでは物足りない」と感じるユーザーも多いかもしれない。
新型iPadは、シリーズ全体のバランスを崩さない範囲で進化する可能性が高い。そのため、すでに第10世代を持っているユーザーにとっては、買い替えの決定打にはならないかもしれないが、初めてiPadを購入する人にとっては十分魅力的な選択肢となるだろう。
Source:9to5Mac