AMDは、次世代GPU「Radeon RX 9000」シリーズの発売を当初予定していた1月から3月に延期すると発表した。この決定により、NVIDIAの「GeForce RTX 50」シリーズとの同時期発売の機会を逃す形となった。NVIDIAは1月30日に「GeForce RTX 5090」および「RTX 5080」を発売したが、供給不足により多くの店舗で在庫切れが発生し、転売価格の高騰が問題となっている。
この状況下で、AMDが同時期に新製品を投入していれば、市場シェアの拡大が期待できた。さらに、AMDの新しいアップスケーリング技術「FSR4」は、RX 9000シリーズ専用となり、従来の汎用性が失われた。 一方、NVIDIAの最新技術「DLSS 4」は、すべてのRTX GPUで利用可能となっており、両社の戦略に違いが見られる。
リーク情報によれば、RX 9070 XTはラスタライズ性能でRTX 4080 Superを上回り、価格も479ドルと競争力があるとされる。 しかし、AMDの発表が不十分であったため、これらの情報が十分に注目を集めていない。結果として、AMDは今回の発表で市場の注目を逃したが、3月の発売に向けて詳細情報の公開が待たれる。
AMDの発表が生んだ混乱と市場の反応
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AMDがCES 2025でRX 9000シリーズの詳細を明かさなかったことは、多くのユーザーにとって大きな驚きだった。特に、NVIDIAのRTX 50シリーズが発表された直後というタイミングで、AMDが明確なスペックや価格を示さなかったことが、期待していた層の不満を招いた。
一方で、リーク情報によると、RX 9070 XTはRTX 4080 Superを上回る性能を持ちながらも、価格は479ドルと競争力があるとされている。この情報が正しければ、AMDは価格性能比で有利な状況にあるにもかかわらず、発表のインパクトを欠いたことがもったいない。
さらに、NVIDIAのRTX 5090および5080は供給不足により転売価格が高騰しており、市場では混乱が生じている。こうした状況が続けば、AMDが正式にRX 9000シリーズを投入する3月には、より多くのユーザーが現実的な選択肢としてAMD製品に注目する可能性がある。
また、新たな技術としてFSR4が発表されたが、これがRX 9000シリーズ専用となったことで、一部のユーザーからは不満の声も上がっている。これまでのFSRは幅広いGPUで利用できることが強みだったため、AMDがこの方針を変えた背景には何かしらの戦略があると考えられる。
しかし、NVIDIAがDLSS 4をすべてのRTX GPUで提供する姿勢を示したことで、両社のアプローチの違いが際立っている。
FSR4の独占化は吉と出るか凶と出るか
AMDの最新アップスケーリング技術であるFSR4は、RX 9000シリーズ専用となり、旧世代のGPUでは利用できなくなった。これにより、RX 6000シリーズやRX 7000シリーズのユーザーはFSR3を使い続けるしかなく、最新技術の恩恵を受けることができない。この決定が、既存ユーザーの離反を招く可能性がある。
一方で、AMDがFSR4を新世代GPU専用とすることで、RX 9000シリーズの販売を促進しようとしているのは明らかだ。特に、RTX 50シリーズの登場によって競争が激化する中で、新たな差別化要素が求められていたのかもしれない。
しかし、NVIDIAはDLSS 4をすべてのRTX GPUに対応させることで、従来のユーザーを大切にする姿勢を示している。この違いが、今後の市場でどのような影響を及ぼすのかが注目される。加えて、FSR4の性能自体がどれほどの向上をもたらすのかも、まだはっきりしていない。
FSR3は、特に低フレームレート環境での効果が高く評価されていたが、FSR4がどのようなシナリオで最適化されているのかは、まだ詳細が明かされていない。もしFSR4が単なる進化版ではなく、従来の技術とは異なる新たなアプローチを採用しているのであれば、独占化の意義も見えてくるだろう。
しかし、もし実際の性能向上が限定的であるならば、旧世代GPUのユーザーを切り捨てたことは、AMDにとって逆効果となるかもしれない。
AMDが取り得たもう一つの選択肢
AMDは、RX 9000シリーズの発表をRTX 50シリーズと同時に行うことができたが、あえて詳細を伏せる選択をした。この戦略にはいくつかの可能性が考えられる。
第一に、製造上の問題があった可能性がある。最新のGPUは高度な半導体製造プロセスを必要とするため、供給が追いつかなかったのかもしれない。特に、TSMCやSamsungなどの製造パートナーとの調整がうまくいっていなければ、十分な数量を確保できないことも考えられる。もしこれが事実であれば、3月の発売時点でも品薄が続く可能性がある。
第二に、AMDは意図的に市場の動向を見極めている可能性もある。NVIDIAのRTX 5090および5080が供給不足に陥ったことは、AMDにとってチャンスだった。しかし、AMDがここで焦って中途半端な発表をするよりも、3月まで待って確実に在庫を用意し、より効果的なプロモーションを行う方が有利だと判断した可能性がある。
もしこれが正しい戦略なら、3月の発表は単なるスペック紹介ではなく、強いインパクトを持つものになるはずだ。第三に、AMDがFSR4の完成度をさらに高めるために時間を稼いでいる可能性もある。もしRX 9000シリーズの発売時にFSR4のパフォーマンスが十分に向上していれば、それは競争力のある武器となる。
一方で、もしFSR4がまだ十分な性能を発揮できない状態で発表してしまえば、ユーザーの信頼を損ねるリスクがあったかもしれない。そのため、AMDは時間をかけて調整を行い、万全の状態で市場に投入しようとしている可能性もある。
いずれにせよ、AMDが3月の正式発表でどれほどのインパクトを与えられるかが鍵となる。NVIDIAがすでにRTX 50シリーズで先行している中で、AMDがどのような形で巻き返しを図るのか、今後の展開が注目される。
Source:Tech4Gamers