サムスン電子は、最新のXRヘッドセット「Project Moohan」を正式に公開した。このデバイスは、Googleの新OS「Android XR」を搭載し、AI技術「Gemini AI」や直感的なジェスチャー操作を採用している。8つの前面カメラや眼球トラッキング機能を備え、外部バッテリーパックで動作する設計となっている。

ユーザーは手や指を使った操作でアプリや機能に簡単にアクセス可能で、Google Playストアに対応しており、数百万のAndroidアプリが利用できる。発売時期は2025年内と予測されており、価格は約2,000ドルと噂されているが、公式な発表はまだない。

サムスンのProject Moohanがもたらす新たなXR体験とは

サムスンが発表したXRヘッドセット「Project Moohan」は、従来のVR/ARデバイスとは一線を画す技術を多数搭載している。その中心にあるのが、Googleの「Android XR」OSと、AI技術「Gemini AI」の統合である。これにより、これまで以上に直感的でスムーズな操作が可能になり、ユーザーの動きや環境に適応するデバイスへと進化している。

このヘッドセットには、前面に8つのカメラを搭載し、眼球トラッキング機能を備えている。これにより、視線の動きを読み取ってコンテンツを操作できるほか、手のジェスチャーだけでアプリを起動したり、仮想空間内での操作を実現したりすることが可能だ。さらに、外部バッテリーパックを採用しているため、ヘッドセット本体の重量を軽減し、長時間の装着時にも快適さを維持できる。

特筆すべきは、Google Playストアへの対応だ。これにより、既存のAndroidアプリを活用できるため、専用コンテンツの開発を待つ必要がなく、発売当初から多彩なアプリを利用できる。MetaやAppleのXRデバイスが独自のエコシステムを築いているのに対し、Project MoohanはAndroidの広範なアプリ基盤を活かすことで、よりスムーズなユーザー体験を提供すると考えられる。

加えて、価格設定も興味深いポイントだ。現時点では約2,000ドルと予測されているが、競合のApple Vision Proが約3,500ドルで販売されることを考えると、比較的手の届きやすい価格帯といえる。今後、詳細な仕様が明らかになれば、その価値がさらに評価されるだろう。

AIとジェスチャー操作が変える次世代インターフェース

Project Moohanの最大の革新は、AI技術「Gemini AI」とジェスチャー操作の組み合わせによる新しいインターフェースだ。これにより、ユーザーは物理的なコントローラーを使わずに、手の動きだけで直感的に操作できるようになる。これは、MetaのQuestシリーズが採用しているハンドトラッキング技術をさらに進化させたものといえる。

ジェスチャー操作の鍵を握るのが、8つのカメラと眼球トラッキングの組み合わせだ。例えば、特定のアイコンを見つめるだけで選択が可能になり、指をはじくような動作でクリックやスクロールができる。これにより、まるで映画『マイノリティ・リポート』のような未来的な操作が実現する。

特に、VR空間内でのWeb閲覧やドキュメント作成など、より細かい作業をスムーズに行える点が魅力だ。さらに、Gemini AIは、ユーザーの使用傾向を学習し、最適な操作方法を提案する機能を持つとされている。

例えば、日常的に特定のアプリを使用している場合、AIが自動で最適な配置に変更したり、使用頻度の高いアクションを簡単に呼び出せるようにしたりする可能性がある。これにより、従来のVRヘッドセットのように「物理コントローラーに頼る必要がある」という制約から解放される。

一方で、ジェスチャー操作が一般的なインターフェースとして定着するかどうかは未知数だ。既存のタッチ操作や音声アシスタントと比較して、どの程度の精度や快適さが実現されるのかが重要なポイントとなる。特に、ジェスチャー認識の精度が低ければ、ストレスを感じる要因になりかねない。今後の実機レビューやユーザーフィードバックによって、その実用性が明らかになるだろう。

Project Moohanが示すXR市場の未来

サムスンのProject Moohanは、XR市場における新たな潮流を示唆している。これまでXR市場をリードしてきたのはMetaやAppleだったが、Android XRを採用したサムスンの参入によって、新たな競争の幕が開けた。特に、Googleとの提携により、Androidエコシステムと統合されたXR体験を提供できる点が、他社との差別化要因となる。

また、ハードウェアとソフトウェアの両面での進化も注目すべきポイントだ。従来のXRデバイスは、ヘッドセット単体での利用に限られることが多かったが、Project Moohanは外部デバイスとの連携を前提として設計されている可能性が高い。例えば、スマートフォンやPCとのシームレスな接続により、より多様な用途で活用できると考えられる。

さらに、AIとの融合がXR市場の成長を加速させる可能性もある。Gemini AIの導入により、コンテンツのパーソナライズや作業の自動化が進み、XRデバイスが単なる「視覚的な拡張ツール」から「インテリジェントなアシスタント」へと進化することが期待される。特に、教育やリモートワーク、医療分野などでの活用が広がれば、XR技術の普及が加速するかもしれない。

とはいえ、サムスンがどのようなコンテンツ戦略を打ち出すかも重要なポイントだ。競合のAppleはVision Pro向けに独自のアプリやコンテンツを強化しており、MetaもHorizon Worldsのような独自プラットフォームを展開している。

これに対し、Project MoohanはAndroidアプリの活用を武器にするが、XR特化型のコンテンツがどの程度提供されるかによって、成功の度合いが決まるだろう。サムスンのProject Moohanは、XR市場に新たな活気をもたらす可能性が高い。今後、どのようなアップデートや追加機能が発表されるのか、さらなる進展に注目が集まる。

Source:XR Today