中国の新興AI企業DeepSeekが開発した「R1-Distill」モデルは、従来の言語モデルと比較して低スペックのハードウェアでも動作可能であり、自宅のPC上でインターネット接続なしに実行できる点が注目されている。特に、最新のRadeon GPUやRyzen AIプロセッサを使用しているユーザーにとって、そのセットアップは驚くほど簡単である。

まず、AMDの最新グラフィックドライバー「25.1.1 Optional」をAMDの公式サイトから手動でダウンロードし、インストールする必要がある。次に、LM StudioのRyzen AIバージョンをダウンロードし、DeepSeekのモデルデータをインポートすることで、AIチャットを開始できる。

例えば、Radeon RX 7800 XTのような強力なGPUを使用している場合、1秒あたり40トークン以上の生成が可能であり、モデルの応答生成プロセスを確認することもできる。AMDは、最新のNVIDIA製品と競争できる大規模言語モデル(LLM)性能を持っていると主張している。

DeepSeek AIが実現するローカル推論の新時代

DeepSeek AIの「R1-Distill」モデルは、ローカル環境でのAI実行に最適化されている。この技術の最大の特徴は、クラウド接続なしで動作する点にある。通常、大規模言語モデル(LLM)はサーバー上で実行されるが、このモデルはPCに直接インストールできるため、プライバシーの確保や通信遅延の問題を解決する。

特に、AMDのRadeon GPUやRyzen AIプロセッサとの相性が良く、最適化されたパフォーマンスを発揮する。しかし、完全なオフライン環境でAIを動作させるには、それなりのハードウェア要件がある。AMDの最新ドライバー「25.1.1 Optional」が必要となり、適切に設定しなければパフォーマンスを最大限に引き出すことは難しい。

実際のセットアップにおいては、LM Studioを利用し、Hugging FaceからGGUF形式のモデルデータをダウンロードする必要がある。こうした手順が求められる点で、初心者にはやや敷居が高いと感じるかもしれない。

ただし、ローカル推論のメリットは非常に大きい。クラウドベースのAIと異なり、通信環境に依存せずに安定した応答を得られるほか、データの外部送信を伴わないため機密性の高い作業にも適している。また、計算リソースをローカルで管理できるため、クラウド課金を気にする必要もない。これらの利点から、今後は個人向けAIの標準的な運用形態として定着する可能性がある。


Ryzen AIとRadeon GPUで得られる最適なパフォーマンス

AMDの最新ハードウェアを活用すれば、DeepSeek AIを効率的に運用できる。Ryzen AIプロセッサは、AIワークロード向けに設計されており、低消費電力で推論を実行可能だ。一方、Radeon GPUの中でも特にRX 7000シリーズは、LLMの処理に適したアーキテクチャを備えている。

たとえば、Radeon RX 7800 XTを使用すれば、1秒あたり40トークン以上の生成速度が得られ、実用的なAIチャットを体験できる。しかし、CPUのみでAIを動作させる場合、GPUと比較して処理速度が大幅に低下する。このため、DeepSeek AIを最大限活用するには、GPUアクセラレーションを利用するのが望ましい。

特に、VRAM容量が十分に確保されているRadeon 6000シリーズ以上のGPUを選択すれば、高速な推論処理が可能となる。また、AMDはLM StudioのRyzen AIバージョンを推奨しているが、これはAMD専用というわけではない。

通常版のLM Studioでも動作する可能性があるため、AMD以外のハードウェアを使用する場合でも試す価値はある。とはいえ、AMD向けに最適化されたバージョンを選択すれば、より安定した動作を期待できるだろう。AMDの強みは、オープンなソフトウェア環境を活用しつつ、ハードウェアのパフォーマンスを最大限に引き出せる点にある。


AMDはNVIDIAに対抗できるのか AI市場でのポジションとは

AMDは、自社の最新ハードウェアがNVIDIAのAI技術に匹敵する性能を持っていると強調している。特に、NVIDIAのCUDAに対抗する形で、オープンソースのAIフレームワークとの互換性を強く推進している。DeepSeek AIの動作もその一環であり、AMDのGPUと組み合わせることで、クラウドベースのAIに頼らずにローカル環境で高度な処理を実行できる。

しかし、現状ではAI向けのエコシステムにおいてNVIDIAが依然として優勢であることは否めない。特に、CUDA環境の広がりによって、多くの開発者がNVIDIA製品を選択する傾向にある。そのため、AMDがAI分野で本格的にシェアを拡大するには、より多くの開発者を惹きつけるためのツールやサポートの充実が求められる。

それでも、AMDの戦略には一定の強みがある。Radeon GPUとRyzen AIを活用すれば、比較的手頃なコストで高性能なAI環境を構築できるため、特に個人利用者や小規模な開発者にとって魅力的な選択肢となる。今後、AI市場においてAMDがどこまで影響力を持つかは、こうしたオープンな技術展開がどれほどの支持を集められるかにかかっている。

Source:HotHardware