AMDは、同社のフラッグシップGPU「RX 7900 XTX」が、AIベンチマークにおいてNvidiaの「RTX 4090」および「RTX 4080 Super」を上回る性能を示したと発表した。テストはDeepSeek R1を用いたもので、RX 7900 XTXは特定のAIワークロードで最大13%の優位性を確保したという。
特に「DeepSeek R1 Distill Qwen 7B」のテストではRTX 4090を13%上回り、他のAIモデルでも一定のリードを見せた。一方で、Nvidiaの最適化設定が不明であることや、特定のAIワークロードでの結果である点には注意が必要だ。
AMDはRDNA 3アーキテクチャの「AI Accelerator」機能を強調し、RX 7900 XTXがAI処理にも適したGPUであることをアピールしている。今後のAI活用の進展とともに、GPU市場の競争はさらに激化しそうだ。
RX 7900 XTXのAI性能は本当にRTX 4090を超えたのか?テスト結果の詳細
AMDが発表したDeepSeek R1を用いたAIベンチマーク結果では、RX 7900 XTXがRTX 4090を最大13%、RTX 4080 Superを最大34%上回るという興味深い数値が示された。特に「DeepSeek R1 Distill Qwen 7B」では、RX 7900 XTXがRTX 4090を13%上回る結果を記録している。
さらに、「Distill Llama 8B」や「Distill Qwen 14B」でも、それぞれ11%と2%のリードを確保した。逆に、「Distill Qwen 32B」ではRTX 4090がRX 7900 XTXを4%上回った。AMDの公表データを見ると、RX 7900 XTXのAI性能が強調されているが、これは特定のベンチマーク結果に基づくものである点に留意が必要だ。GPUの性能評価は用途や最適化設定によって大きく異なる。
例えば、RTX 4090はNvidia独自のTensorコアを活用したAI最適化が可能であり、通常のゲーム用途では圧倒的な性能を誇る。しかし、今回のテストではその最適化が十分に反映されていたかは不透明だ。加えて、DeepSeek R1は新しいAIモデルであり、AMD GPU向けに最適化されている可能性も考えられる。
そのため、これらの結果だけをもって「RX 7900 XTXがRTX 4090より優れている」と結論づけるのは早計かもしれない。今後、独立系のベンチマークテストが公開されることで、より公正な比較が可能になるだろう。
RDNA 3のAIアクセラレータは実用的なのか?RX 7900 XTXのAI性能の実態
AMDはRDNA 3アーキテクチャに「AI Accelerator」と呼ばれる新機能を搭載し、AI関連の処理性能を強化したとアピールしている。RX 7900 XTXには192基のAIアクセラレータが組み込まれており、行列演算やBF16・INT8といったAI向け計算をサポートする。これにより、ディープラーニングや推論処理のパフォーマンス向上が期待される。
ただし、AMDのGPUはこれまでAI用途よりもゲーム性能を重視して設計されてきた。一方、Nvidiaは長年にわたりAI向けの最適化技術を積み重ねてきており、CUDAやTensorRTなどのソフトウェアエコシステムが確立されている。AMDのAIアクセラレータは確かにAI計算を高速化できるが、現時点ではソフトウェアの最適化がNvidiaに比べて遅れているのが実情だ。
特に、機械学習分野ではPyTorchやTensorFlowといったフレームワークがNvidia製GPU向けに最適化されていることが多く、AMD製GPUでの動作は制限されることがある。AMDは最近、AI向けのソフトウェアスタックを強化しており、Radeon GPUでも高性能なAIワークロードを実行可能にする取り組みを進めているが、その効果が十分に発揮されるかはまだ未知数だ。
今後、AMDがAI市場での競争力を高めるには、ハードウェアの性能向上だけでなく、ソフトウェアの最適化と開発者向けのエコシステム整備が不可欠となるだろう。
DeepSeek R1の最適化が示す新たなGPU活用の可能性
AMDは今回のテストに用いたDeepSeek R1について、「欧米の最先端AIモデルと同等の性能を持ちながら、計算コストを大幅に削減できる」と説明している。このAIモデルは、ハードウェアベースの最適化によって、競合製品と比較して最大11倍の高速処理を実現するとされる。その一環として、Nvidiaのアセンブリ言語「PTX」も活用されている点が注目に値する。
興味深いのは、DeepSeek R1がAMDのGPU上で非常に効率的に動作している点だ。これまでAIの学習や推論にはNvidiaのGPUが主流とされてきたが、今回のテスト結果はAMD製GPUがAI処理にも十分対応できる可能性を示唆している。特にコストパフォーマンスを重視するユーザーにとって、AMDのGPUが新たな選択肢として浮上する可能性がある。
とはいえ、DeepSeek R1はまだ新しい技術であり、広範なワークロードでのパフォーマンス評価が必要だ。今回のベンチマークではRX 7900 XTXが有利な結果を示したが、AI処理の種類によってはNvidiaのGPUが依然として優位に立つ場面も多いだろう。特に、CUDAやTensorコアを活用したAI最適化が求められるケースでは、Nvidiaの強みが発揮される可能性が高い。
今後、AI分野におけるGPUの選択肢が広がることで、用途に応じた最適なハードウェアの選定がより重要になってくるだろう。AMDがこの分野でどこまでシェアを拡大できるのか、引き続き注目したい。
Source:Tom’s Hardware