NVIDIAの最新GPU、RTX 5080のレビューが公開され、その性能が注目を集めている。しかし、これらのベンチマーク結果は、AMDの次世代GPUであるRDNA 4アーキテクチャにとって有利な状況を示唆している。特に、AMDの現行モデルであるRadeon RX 7900 XTXが、RTX 5080に肉薄する性能を示しており、次世代モデルへの期待が高まっている。
Windows Centralのレビューによれば、RTX 5080は前世代のRTX 4080と比較して性能向上を果たしているものの、その差は予想よりも小さい。具体的には、1440pや4K解像度でのパフォーマンス向上は数%にとどまり、消費電力の増加を考慮すると、劇的な進化とは言い難い。
一方、TechSpotのテストでは、Radeon RX 7900 XTXがRTX 5080に非常に近い性能を示している。17のゲームでのベンチマーク結果では、1440p解像度でRX 7900 XTXが平均139 FPS、RTX 5080が146 FPS、4K解像度ではそれぞれ84 FPSと91 FPSとなっている。この結果は、AMDの次世代GPUがさらなる性能向上を果たす可能性を示唆している。
AMDは、次世代RDNA 4アーキテクチャの発表を一時的に延期しているが、これはソフトウェアの最適化と新技術であるFidelityFX Super Resolution 4(FSR 4)の対応強化のためとされている。FSR 4は、従来の空間アップスケーリングアルゴリズムから機械学習を活用した手法に進化しており、NVIDIAのDLSSに対抗する技術として注目されている。
これらの状況を考慮すると、AMDのRDNA 4 GPUが市場に投入される際、NVIDIAのRTX 5080に対して強力な競争力を持つ可能性が高い。特に、価格設定や性能面でのバランスが取れれば、多くのユーザーがAMDの新GPUに注目するだろう。
RTX 5080の消費電力と発熱がもたらす影響
RTX 5080はRTX 4080と比較して消費電力が約40W増加している。具体的には、TGP(Total Graphics Power)がRTX 4080の320WからRTX 5080では360Wに引き上げられた。この変更により、GPUのパフォーマンスは向上したものの、発熱と電力効率のバランスが問題視されている。
特に、小型ケースやエアフローが限られる環境では、より強力な冷却システムが必要になる可能性がある。TechSpotのレビューでは、RTX 5080の最大動作温度がRTX 4080よりも数度高いことが指摘されており、特に長時間の高負荷動作時には温度管理が重要になる。
実際に、RTX 5080搭載PCを使用したストレステストでは、4K解像度での高負荷状態が続くと90度近くまで温度が上昇するケースも報告されている。一方で、RTX 5090に比べれば冷却設計はまだ優れており、標準的なケースでの運用は可能な範囲に収まる。
この消費電力の増加は、電源ユニットの要件にも影響を与える。RTX 4080では最低750Wの電源が推奨されていたが、RTX 5080では850W以上の電源が求められることが多く、特にカスタムOCモデルでは1000W以上の電源が必要になる場合もある。
高性能なGPUほど電力を消費するのは当然のことだが、次世代のRDNA 4がどの程度のTGPを維持するかによって、消費者の選択肢も変わるだろう。
RDNA 4の機械学習技術はDLSS 4とどう戦うのか
AMDは次世代RDNA 4において、FidelityFX Super Resolution 4(FSR 4)を導入するとされている。この技術は従来のFSR 3とは異なり、機械学習を活用したアップスケーリングを採用している点が大きな特徴である。NVIDIAのDLSS(Deep Learning Super Sampling)と異なり、FSRは専用のAIコアを必要としないため、ハードウェアに依存せずに広範なGPUで使用できるメリットがある。
Hardware Unboxedの動画では、FSR 4がFSR 3.1と比較してシャープネスと細部の表現が大幅に向上していることが示されている。特に、背景のディテールや動きのあるシーンにおいて、アーティファクトが減少し、より自然な画質が得られると評価されている。
一方で、DLSS 4は「Multi Frame Generation(MFG)」を採用し、フレーム間の補完技術を進化させている。このMFG技術は、AIが複数のフレームを解析し、新しいフレームを生成することで、ゲームのフレームレートを大幅に向上させるものだ。
これに対し、AMDのFSR 4がどの程度のフレーム生成能力を持つのかは未確定である。ただし、FSR 3の時点ですでにフレーム生成技術を導入しており、RDNA 4世代ではより洗練されたAIアップスケーリングが期待される。
DLSS 4のMFGがフレームレート向上に特化しているのに対し、FSR 4はより自然な映像表現を重視する可能性がある。どちらが優位に立つかは、実際のゲーム対応状況や最適化の度合いに左右されるだろう。
価格設定次第でRDNA 4が巻き返す可能性
NVIDIAはRTX 5070とRTX 5070 Tiの価格をそれぞれ549ドルと749ドルと設定するとみられている。これに対し、AMDがRDNA 4シリーズのRX 9070 XTやRX 9070をどの価格帯に投入するかが大きな焦点となる。歴史的にAMDは競争力のある価格設定を武器にしており、RDNA 4でも同じ戦略を取る可能性が高い。
特に、RTX 5080が予想よりもRTX 4080 Superに近い性能だったことを考慮すると、AMDがRX 9070 XTを599ドル以下に設定すれば、多くのユーザーにとって魅力的な選択肢となるだろう。また、RTX 5070 Tiの性能がまだ明らかになっていないが、RTX 4080に近いとされる場合、RX 9070 XTがこれを上回る性能を持てば、価格面でのアドバンテージを生かせる。
さらに、FSR 4がRDNA 4シリーズの発売と同時に広範囲のゲームに対応すれば、NVIDIAのDLSS 4と競争できる環境が整う。DLSS 4がフレームレート向上に強みを持つのに対し、FSR 4はハードウェア制約が少なく、より幅広いタイトルで利用できる点が強みとなる。AMDがこの特性をアピールできれば、市場での競争力を高める要因となるだろう。
このように、RDNA 4の成功は単なる性能比較ではなく、価格設定と技術最適化のバランスが鍵を握る。NVIDIAのRTX 5000シリーズが全体的に高価になっているため、AMDが適切な価格戦略を取れば、ユーザーの選択肢が大きく変わる可能性がある。
Source:Windows Central