米国の市場調査会社CIRPが発表した最新レポートによれば、AppleユーザーのiPhone利用頻度がiPadを大きく上回ることが明らかとなった。調査対象者の約90%が毎日iPhoneでメッセージ送信やインターネット利用を行っており、動画視聴やゲームといった用途でもiPhoneが主流となっている。
この背景には、iPhoneが常に携帯できる利便性が大きく寄与しているとされる。一方、iPadは大画面を活かした読書や資料閲覧に適しているとされるが、日常的に読書を行う所有者は37%にとどまる。メール送信や動画視聴などの用途では、iPad使用者の割合は約3分の2とiPhoneに劣勢である。
これらのデータは、Apple製品におけるモバイル体験の「中心」が依然としてiPhoneであることを示唆している。
iPhoneが日常使用の中心にある理由
CIRPのレポートによれば、iPhone所有者の約90%が毎日メッセージ送信やインターネット利用を行っている。これにより、iPhoneはメール送信から動画視聴、音楽再生、ゲームに至るまで、日常生活の多くの場面で使用されていることがわかる。最大の理由は、iPhoneがポータブル性に優れ、常に携帯できる利便性を持つ点にある。さらに、iPhoneは新世代のモデルでカメラ機能やアプリ操作が高度に進化し、利便性の幅を広げている。
一方で、Appleが提供する「エコシステム」の一貫性も、iPhoneを生活の中心に据える要因とされる。iPhoneはApple WatchやAirPods、iPadなどとの連携がスムーズであり、メッセージの同期や音声コントロール、健康管理アプリの連携機能などがユーザー体験を統一している。このような一体型サービスが、iPhone以外の選択肢を考慮しない「粘着性」を生んでいる。
これらの要素は、ティム・クック氏がかつて「体外体験」と形容したように、ユーザーが日常生活の中でiPhoneを手放せない存在として認識する要因を浮き彫りにしている。
iPadの強みと用途の限界
iPadは、大画面ディスプレイと高性能なプロセッサを持つ点で動画視聴やゲーム用途に向いている。しかし、CIRPの調査結果では、iPad所有者のうちこれらの用途を毎日行う人は約3分の2にとどまり、iPhoneに劣勢であることが示されている。特に読書や資料閲覧といった静的な用途は、iPadの得意分野であるはずだが、これを日常的に行う利用者は全体の37%に過ぎない。
この背景には、iPadの物理的な携帯性の問題があると考えられる。iPadは画面サイズが大きい分、カバンに入れる必要があり、手軽に持ち歩くには不向きである。さらに、スマートフォン用アプリと比較すると、iPad用アプリは更新頻度が少なく、一部の機能はスマートフォン版に比べて最適化が進んでいないケースも見受けられる。
しかし、ビジネスや教育現場では、iPadのマルチタスク機能やApple Pencilによる手書き入力機能が重宝されており、この点ではiPhoneと用途が明確に分かれている。iPadが完全にiPhoneの影に隠れているわけではなく、特定の需要に対して依然として有効な選択肢である。
iPhoneのカメラ機能とユーザー行動のギャップ
最新のiPhoneは、高度なカメラハードウェアを搭載し、タッチセンサー付きのカメラ制御ボタンなど、撮影機能が強化されている。これにより、プロフェッショナルな写真撮影から短い動画コンテンツの作成まで、多岐にわたる用途を実現している。しかし、CIRPのレポートでは、iPhone所有者の約3分の2のみが毎日写真を撮影していることが示されている。この数字は、iPhoneのカメラ機能がフルに活用されていない可能性を示唆している。
その理由として、カメラ性能が向上する一方で、ユーザーの関心は日常の簡易撮影やSNS投稿程度にとどまるケースが多いことが考えられる。これは、iPhoneが便利な撮影デバイスでありながら、写真編集の高度な機能や撮影技術を要する場面では一部ユーザーがPCやタブレットといった他のデバイスに依存することも影響しているとみられる。
Appleはカメラ機能をアピールし続けているが、ユーザー層によってはそこまでの高性能を必要としない層も存在する。そのため、今後はユーザーごとに異なるニーズに応じた新機能の実装や、直感的な使い勝手のさらなる改善が必要となるだろう。