ゴールドマン・サックスのCEOデイビッド・ソロモン氏は、同社がAppleとのパートナーシップを2030年より前に終了する可能性を示唆した。現行契約は2030年まで有効であるが、米金融業界では提携解消がより早期に実現するとの観測が強まっている。ウォールストリート・ジャーナルは2023年11月、今後12〜15か月内に提携が終了する可能性を報じた。
特にApple CardやApple貯蓄口座の運営は、新たな提携先を探す必要性を生むことから、代替金融機関との協議が課題となっている。ゴールドマン・サックスはアメリカン・エクスプレスに引き継ぎを打診したが、現時点で交渉は停滞中だ。また、JPMorgan Chaseも候補として取り沙汰されるが、正式な発表はない。
一方、ゴールドマン・サックスは顧客サービスに関する問題で批判を受けており、Apple CardとApple貯蓄口座は消費者金融保護局の調査対象となっている。この動向は、金融業界に新たな競争と市場再編の可能性を示唆している。
ゴールドマン・サックスが直面する課題と背景
ゴールドマン・サックスは、消費者向け金融事業の成長を目指してApple Card事業に参入したが、期待通りの成果を得られなかった。同社は高額な顧客獲得コストや技術運用に関連する負担に苦しみ、収益性の向上が課題となっている。
また、Apple Cardに関する不満の声は、特に取引の異議申し立て対応や貯蓄口座の資金移動の遅延が原因とされている。これらの問題は米国消費者金融保護局の調査対象となっており、企業としての信頼性にも影響を及ぼしている。
同様に、ウォールストリート・ジャーナルなどの報道によれば、Apple側もパートナーシップ見直しを模索している可能性がある。特に、よりスムーズなサービス提供を重視するAppleは、柔軟な対応が可能な新たな金融パートナーを検討しているとされる。
次期パートナー候補として浮上する企業
Apple Cardの後任パートナー候補として複数の企業名が取り沙汰されている。中でもアメリカン・エクスプレスは、すでにゴールドマン・サックス側から打診を受けたとされているが、MasterCardネットワークを使用する既存契約の影響で、短期的な移行は難航している状況だ。
一方、過去にAppleはSynchrony FinancialやCapital Oneとも協議を行ったが、具体的な進展は見られなかった。また、JPMorgan Chaseも候補として浮上しているが、こちらも交渉の行方は不透明である。
これらの状況から、Appleは顧客基盤の維持とサービス品質の向上を目指し、慎重に選択肢を精査していると考えられる。ただし、金融市場では各企業の提携競争が激化しており、新たな競争構図が生まれる可能性もある。
提携終了がもたらす金融市場への影響
もしAppleとゴールドマン・サックスの提携が早期に終了すれば、両社にとって重要な転機となる。Appleは独自のエコシステムを強化する一方、迅速かつ安全な決済機能を維持する必要がある。
特にApple Savings Accountは、Apple製品のユーザーを中心に高い人気を誇っており、これを支える新たな金融機関の選定は企業戦略上の重要なポイントとなる。また、金融業界全体でも、これほど大規模な提携解消が生じた場合、同様の事例が他の企業間で増加する可能性がある。
一方、ゴールドマン・サックスにとっては、コンシューマー事業における方向転換が求められる局面だ。同社はこれまでも法人向け投資銀行業務で圧倒的な地位を築いてきたが、一般消費者向け事業の撤退や縮小は、投資家や市場に複雑なメッセージを送ることになる。
これにより、今後の市場動向はAppleの次の一手に大きく左右される展開となるだろう。市場再編の引き金となり得るこの動きは、引き続き注目を集めている。