LGは、iPad向けのOLEDディスプレイ生産から撤退し、iPhone向けのディスプレイ供給に注力する方針を決定した。背景には、LGが製造した二重層OLEDディスプレイを搭載する高価格帯のiPad Proモデルが期待以下の販売に留まっている現状がある。
13インチiPad Proの価格は約19万円に達し、Macシリーズよりも高価な設定が購買意欲を削ぐ一因とされている。この戦略転換により、LGは既存の生産ラインにタッチレイヤー追加装置を導入し、2025年にはiPhoneディスプレイ供給を7,000万枚以上に拡大する計画だ。Appleが多様な供給元を確保することも視野に入れる中、両社の連携は重要な局面を迎えている。
iPad市場の壁と高価格のリスク
Appleは長寿命かつ高輝度な二重層OLEDディスプレイを搭載したiPad Proで新たな市場を切り開こうとしたが、価格が市場受容の壁となったことは否めない。特に13インチiPad Proは約19万円という高価格に設定されており、多くの消費者にとってはMacシリーズの高性能モデルと比較する対象となってしまう。
結果として、「高級タブレット」という市場区分自体が限られた顧客層に依存する構図となった。この背景には、タブレット市場における製品の用途多様化と性能向上が進んでいる現状も影響している。ノートパソコンに近い機能を持つ製品が登場する中、価格対性能比の重視が進み、高価格モデルの魅力は相対的に低下している。
The Elecが報じた通り、こうした市場動向の変化はLGがOLEDディスプレイの供給方針を見直すきっかけとなり、23億ドルを投じた生産ラインの投資回収計画を前倒しで進める必要に迫られたといえる。
iPhoneディスプレイ市場拡大を狙うLGの戦略
LGは生産効率を重視し、iPhone向けディスプレイの供給枚数を2025年には7,000万枚以上に増やす計画を立てている。生産ラインへの改修としてタッチレイヤー追加装置を導入することで対応可能とされており、大規模な設備投資を回避しつつ供給能力を拡充する戦略を採用している。
この計画が成功すれば、2025年以降に登場予定のiPhone 17 SlimやiPhone SE 3といった新型モデルの供給面で、LGはサムスンに次ぐ重要な供給元として存在感を強めることとなる。ただし、ディスプレイ供給ラインの用途変更にはAppleの承認が必要であり、2025年2月までに同意を得る必要がある。
このタイムラインが示す通り、Appleの製品計画と供給元の多様化は慎重な意思決定を要する事項である。競合するサプライヤー間のシェア争いも激化しており、LGがどれだけAppleの信頼を確保できるかが鍵となるだろう。
サプライチェーン多様化の必要性と市場の見通し
Appleは長年にわたり、主要なディスプレイ供給元としてサムスンに依存してきたが、依存先を複数化することはリスク管理の観点から重要である。LGがiPhoneディスプレイ供給の拡大に乗り出す背景には、Appleが同社を重要なパートナーとして見なしつつある兆候も見て取れる。
iPad用OLEDラインをiPhoneスクリーン生産に兼用する動きは、サプライチェーン全体の効率化と柔軟性向上を狙ったものだ。とはいえ、ディスプレイ製造技術は高度化しており、信頼性の高い生産体制を構築するには巨額の費用と時間が必要となる。
その中で、LGは新型モデルの供給体制を整えることで2025年以降の市場競争を有利に進める狙いがある。Appleの2025年新型ラインアップの成否次第で、ディスプレイ市場全体の勢力図にも変化が生じるだろう。