Appleは2025年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)に出展していないにもかかわらず、その影響力を強く印象づけた。過去に出展した時代もあったが、現在は自社イベントでの発表を重視し、CESには直接関与しない方針を続けている。
それでも会場にはApple関連製品や競合製品が多く並び、Appleの存在感が際立つ状況が続く。特にVR・AR技術やスマートリングといった分野では、Apple未発表の製品への警戒感さえ漂っている。技術面ではThunderbolt 5の普及におけるAppleの役割が注目を集めており、同社の影響力がCES全体を支配していることが浮き彫りとなった。
AppleがCES参加を控える理由と過去の出展歴
AppleはCESには出展せず、自社主導のイベントで発表を行う戦略を取っている。その背景には、1992年のCESで発表された「Newton MessagePad」の失敗がある。この製品は当時、技術革新の象徴と期待されたが、発表時期の早さや市場準備不足が原因で商業的成功を収められなかった。
この経験からAppleは、他イベントのスケジュールに縛られず、自らのタイミングで新製品を発表する方針を固めた。特に2009年にMacworld Expoへの参加を終了して以降、この独自路線は一貫している。CESは依然として業界最大級の展示会であり、多くの企業が新製品を発表する場として活用している。
しかし、Appleはブランド力を武器に別路線を進み、競合を寄せ付けない戦略を続けている。そのため、Appleの動向はCES参加の有無に関わらず常に注目を集め、各企業の製品開発や市場戦略にも影響を与え続けている。
VR・AR市場で高まるAppleへの対抗意識
2024年のCESで展示された製品群からは、Apple Vision Proを意識したVR・ARヘッドセットの増加が顕著であった。CES 2025でもその流れは継続し、多数の企業がVR・AR関連の新製品を発表した。こうした動向は、AppleがCESに不参加であっても、同社の技術やデザインに影響を受けている企業が多いことを示唆している。
特にヘルス機能を強化したスマートデバイスとして発表された「Circular Ring」には、Appleが今後同様のデバイスを発表する可能性への警戒感が見られる。Appleが正式にスマートリングを発表していないにもかかわらず、競合企業は市場でのシェア確保に向け先手を打とうとしているのだ。
Appleは「未発表」の状態で市場に影響を与える稀有な存在であり、その情報網の厳格さも、競合他社に新たな不安材料をもたらしているといえる。
Thunderbolt 5が象徴する技術トレンドとAppleの立ち位置
CES 2025で技術面での注目を集めたのは「Thunderbolt 5」対応製品である。この新規格はIntelが主導する技術ではあるが、AppleのMacBook ProやMac miniが対応することで一気に市場に普及した。イベントではTargusやUgreenなどがThunderbolt 5対応の新型ドッキングステーションを発表し、利便性を追求した製品が増えている。
Appleは新規格の早期対応で市場の流れを牽引し、サードパーティー製品の充実も相まってエコシステムを拡大している。特に高帯域幅のデータ転送が求められるクリエイターやプロフェッショナル層にとって、MacBook ProとThunderbolt 5対応製品の組み合わせは重要な選択肢となっている。
このように、Appleは直接出展せずとも技術規格の推進役として業界を先導しており、CESにおいてもその影響力は絶大であるといえる。