インテルが78億ドル超のCHIPS法支援を獲得 半導体産業再建の切り札となるか

バイデン政権は、国内の半導体生産強化を目的としたCHIPS法に基づき、インテルに対し78億6500万ドルの資金を割り当てることを発表した。この助成金は過去最大規模であり、アリゾナ州やオハイオ州などの施設拡張を通じて最大3万人の雇用を創出する見込みだ。

しかし、インテルは最近、計画縮小や大規模な財務損失、人員削減といった課題に直面しており、政府の支援がこの危機を乗り越える鍵となる可能性がある。

CHIPS法による最大の助成金が持つ戦略的意義とは

バイデン政権がインテルに78億6500万ドルを割り当てたことは、単なる資金提供以上の意味を持つ。この助成金は、アリゾナ州やオハイオ州を含む主要な半導体製造施設の拡張に充てられる予定であり、製造業を国内回帰させるというアメリカ政府の明確なメッセージを含んでいる。

ホワイトハウスのナタリー・キリアン副首席補佐官は、この計画が数千の高給雇用を生み出すことを期待すると述べている。

だが、国家戦略の側面も見逃せない。半導体は現代の経済と技術を支える基盤であり、国家安全保障に直結する資源である。世界的な供給網が不安定化する中で、国内生産能力を強化することは、他国への依存度を下げると同時に、技術的な優位性を維持する鍵となる。特に、人工知能（AI）や量子コンピューティングといった先端分野での競争において、半導体の供給安定性は欠かせない。

こうした動きは、単なる国内の雇用創出に留まらず、米国が次世代技術の主導権を握り続けるための布石と考えられる。ただし、資金提供が長期的にどのような成果をもたらすのかは未知数であり、民間と政府のさらなる協力が求められる。

インテルが直面する課題とCHIPS法支援の限界

インテルはCHIPS法の支援を受ける一方で、重大な課題に直面している。例えば、オハイオ州の施設拡張計画では、当初予定されていた雇用創出数が10,000から6,500に減少する見通しであり、投資計画全体も900億ドル規模に縮小されている。この背景には、次世代18A製造プロセスにおける技術的課題や市場競争の激化がある。

さらに、インテルの財務状況も不安定である。1968年の設立以来最大となる166億ドルの損失を直近の四半期で記録した。同時に、15,000人以上の人員削減を余儀なくされるなど、経営再建に向けた苦しい舵取りが続いている。これらの状況は、インテルが国家の期待に応えるために克服すべきハードルの高さを示している。

CHIPS法の助成金は、こうした課題を短期的に緩和する可能性があるが、根本的な解決にはならない。インテル自身が技術革新と効率的な運営を進める必要がある。また、競合他社である台湾のTSMCや韓国のサムスンとの激しい国際競争において、どのように優位性を確保するかが問われるだろう。

半導体業界の未来を決める政府と企業の役割

CHIPS法による巨額の助成金は、米国が半導体産業での競争力を取り戻すための重要な一歩であるが、その効果を最大化するには政府と民間企業の連携が欠かせない。インテルのような企業が国内での製造能力を強化する一方で、政府はサプライチェーンの強化や市場環境の整備を支援する必要がある。

例えば、他国からの輸入依存を減らすための技術開発投資や、研究機関との協力が鍵となる。また、教育や訓練を通じた技術者の育成も重要である。これにより、次世代技術の発展を支える人材基盤を築ける可能性がある。さらに、業界全体の競争力を高めるために、中小企業やスタートアップへの支援策も検討されるべきであろう。

ただし、この取り組みが進む中で、他国との技術競争はますます熾烈になると考えられる。例えば、欧州連合やアジア諸国も同様の産業支援策を講じており、米国がどれほど迅速かつ効率的に行動できるかが試されている。長期的な視点での戦略的投資が、米国の半導体業界に新たな道を切り開く可能性を秘めている。