AMDが最新ゲーミングCPU「Ryzen 7 9800X3D」の成功にもかかわらず、全従業員の約4%に相当する1,000人規模のレイオフを発表した。このCPUは発売直後から高評価を受け、複数の小売店で即売り切れとなる人気ぶりを見せたが、同社のゲーミング部門は収益減少に直面している。
2024年第3四半期の業績では、同部門の収益が前年比69%減と深刻な打撃を受けており、これが決断の背景にあるとみられる。一方で、データセンター部門は過去最高の収益を達成しており、同社はリソースの再分配を進めるとしている。
しかし、このタイミングでの解雇発表に対しては、従業員や業界関係者から驚きと不満の声が上がっており、一部では事前通知が不足していたとの批判もある。株価も先月から14%以上下落しており、AMDの経営判断が今後市場でどう評価されるかが注目される。
AMDのゲーミング部門が抱える収益構造の課題
Ryzen 7 9800X3Dは「地球上で最高のゲーミングCPU」と評され、発売直後から市場を席巻している。しかし、AMDの業績を見ると、ゲーミング部門の収益は大幅な減少を記録している。具体的には、2024年第3四半期における収益は前年同期比で69%減少しており、主にセミカスタム製品の売り上げ減少が原因とされる。
この部門はコンソール向けチップの供給に依存している部分が大きく、需要の変動に敏感であることが浮き彫りになった。この問題は新製品の成功だけでは解消されない可能性がある。9800X3Dはハイエンド製品であり、市場全体の需要をカバーできるものではない。
加えて、消費者の購買力が低下している経済環境では、ゲーミング市場全体の縮小リスクがあると指摘されている。AMDは収益多様化の必要性を認識し、データセンター分野やAI関連の開発に注力する方針を示しているが、ゲーミング市場での安定した収益基盤の構築にはまだ課題が残る。
レイオフ決定の背景にあるリソース配分の再検討
AMDはレイオフについて「資源を最大の成長機会に合わせるため」と説明している。このコメントは、収益性の低い分野から高成長分野へのシフトを意図していると読み取れる。同社のデータセンター事業は35億ドルという記録的な収益を達成しており、収益の柱としてその地位を強めている。しかし、この方向転換が長期的に正しい戦略であるかどうかは議論の余地がある。
ゲーミング市場は収益の変動が大きいものの、消費者のブランドロイヤルティを醸成する重要な場でもある。特に、ハイエンド製品がもたらす技術的な優位性は、AMDの他部門にも波及効果を与える可能性が高い。それゆえ、短期的なコスト削減にとどまらず、製品ラインアップの幅を広げるなど、慎重なリソース配分が求められる。
今回のレイオフは、特にRadeon部門に影響が大きいとされており、これがハイエンドGPU市場での競争力低下につながるリスクもある。NVIDIAとの競争が激化する中で、AMDが市場シェアを守りつつ新たな収益モデルを築けるかが問われている。
株価の動向と市場の反応が示す経営戦略への評価
AMDの株価は、ここ数カ月で約14%下落している。9800X3Dの発売時には一時的に回復したものの、その後再び下落に転じている。この動きは、レイオフ発表やゲーミング部門の収益悪化が市場に懸念を広げた結果と見られる。加えて、次世代Radeonカードの投入が計画されていないとの情報も、投資家の期待感を損ねる一因となった。
しかしながら、データセンターや埋め込みセグメントの収益改善が一定の安心材料として評価されている面もある。AMDが短期的な株価回復よりも長期的な成長戦略を優先していることは明らかであり、市場もそれを理解しつつあるようだ。ただし、現時点ではその成果を確信するには至っておらず、リスク要因として解釈されている。
独自の視点として、AMDが市場の信頼を回復するためには、具体的な成長戦略の実行とその成果を迅速に示す必要がある。特に、競争の激しい分野での市場シェア維持や技術革新がその鍵となるだろう。現行の経営判断が功を奏するかどうかは、今後の数四半期で明らかになるだろう。