AMDの最新CPU「Ryzen 7 9800X3D」が大いに注目を集める一方、技術レビューサイトのUserBenchmarkがこれに「無意味」との厳しい評価を下した。このレビューは「ゲーム性能はGPUに依存する」との見解から、同価格帯のIntel「i5-13600K」との比較に意味がないと主張する。
だが、PC Guideの独自テスト結果では、9800X3Dは他のCPUと比較してもゲーム性能で突出した結果を示し、特に1%低フレームレートでの安定性が評価された。UserBenchmarkの評価は、AMD製品のクロック依存設計に対する過去からの偏見も絡んでおり、今回も独自の基準でレビューされている。
これにより、同サイトの信頼性が問われる一方、Ryzen 7 9800X3Dの性能を改めて証明する機会となった。
UserBenchmarkの独自評価基準とRyzen 7 9800X3Dに対する偏見の背景
UserBenchmarkは今回、AMDのRyzen 7 9800X3Dに対して「無意味」と評したが、同サイトがAMD製品に対して一貫して厳しい評価を下している背景には、独自の評価基準がある。同サイトは、クロックスピードを主な指標としてCPUの性能を判断し、それに基づき低価格帯のIntel製品を高く評価する傾向がある。
過去には、性能が異なるi3-8100をi9-9980XEよりも上位にランク付けした事例もあり、その基準が業界の一般的な評価と乖離しているとの指摘もある。これにより、AMD製品のスタッキングデザインやキャッシュ構造を重視した最新技術が評価されにくい傾向にある。
今回のRyzen 7 9800X3Dの評価についても、ブーストクロックへの影響に焦点を当て、GPUによる性能制限がCPUの性能に影響するため高性能CPUは不要との見解を示しているが、これはゲームを主とした評価基準には当てはまらないと考えられる。
PC Guideの検証でも、特にゲーム向けには高いパフォーマンスを発揮する結果が示されており、UserBenchmarkの基準だけでは全体の評価が適切に判断されない可能性がある。AMDの新技術を一面的に評価することの問題点を浮き彫りにした形である。
9800X3Dの市場評価と「マーケティング効果」批判の矛盾点
UserBenchmarkは9800X3Dの人気を「実力ではなくマーケティングによるもの」と指摘したが、この評価は市場の反応を軽視した見解ともいえる。9800X3Dは発売と同時にオンライン市場での在庫が即時に完売し、業界内でのテスト結果やレビューでも好評を博している。
このような動向を受け、PC Guideでは9800X3Dに5つ星の評価を与え、投資に値する製品とした。特に1080pでのゲームパフォーマンスが高く評価され、1%低フレームレートにおいても滑らかな操作感を実現している点は、競合製品との差別化を図る一因となっている。
UserBenchmarkが示した「高度なマーケティングによる人気」の指摘は、ある意味で製品の消費者への影響力を認める形になっているが、製品が市場で高い需要を獲得している理由を考慮していない点において矛盾が生じている。
性能面と市場の評価は必ずしも一致しないが、消費者が選択する際にはユーザーの体感やレビューが影響するため、実際の使用感や満足度は市場での評価において大きな役割を果たすといえる。
IntelとAMDのマーケティング戦略の対比と今後の市場展望
UserBenchmarkはIntelに対して「市場での訴求力が弱い」と指摘し、「破産のリスクがある」とまで述べているが、これには疑問が残る。Intelの市場シェアは調査会社Mercury Researchによると77%と圧倒的な支持を維持しており、特にデスクトップ市場ではその優位性が顕著である。
一方、AMDは革新的な技術を駆使し、消費者に強い印象を与えることに成功しているが、Intelに比べて市場での浸透度に差があるのは事実である。
だが、Intelが積極的なマーケティングを行わない状況は、ユーザーからの関心を失うリスクも孕んでいる。特にRyzen 7 9800X3Dのような高性能製品が話題となるなか、Intelも新たな戦略が求められる時期に来ているといえるだろう。今後、Core Ultraシリーズがどのような方向で展開されるか、またAMDが引き続き市場での話題性を維持できるかが、両者の市場競争における注目点となる。