AMDの新型プロセッサー「Ryzen 7 9800X3D」が、液体窒素(LN2)冷却によるオーバークロックにより驚異的な性能を発揮した。テストでは、Zen 5アーキテクチャの8コア・16スレッド構成のこのCPUが、6.9 GHzのクロック速度に達し、ゲーム「Counter-Strike 2」において1,200 FPSという驚異的なフレームレートを記録した。

この性能向上により、AMDはゲーム分野でインテルに対してさらなるリードを確保。特に、これまでクロックスピードで劣勢だったRyzen X3Dチップが、今回の改良によりその差を縮小しつつある。さらに、Cinebench R23のマルチコアテストでは31%ものスコア増加が見られたが、この成果はTony Yu氏のチューニングによるもので、一般ユーザー向けの仕様とは異なる点に注意が必要だ。

しかし、この結果が示す通り、Ryzen 7 9800X3Dは従来の非X3Dチップに対する弱点を克服し、極めて高いゲーミング性能を持つプロセッサーとしての可能性を感じさせるものである。

Ryzen 7 9800X3Dが実現した6.9 GHzオーバークロックの衝撃

Ryzen 7 9800X3Dは、液体窒素(LN2)冷却を用いたオーバークロックにより、6.9 GHzのクロック速度を記録した。この驚異的な結果は、「Counter-Strike 2」において1,200 FPSを達成するなど、ゲーム体験に革命をもたらすものとなっている。

LN2冷却という特殊な方法によって達成されたこの速度は、日常使用には適さないものの、CPUの性能限界を引き上げる可能性を示唆している。NotebookCheckによると、このオーバークロックはAsus ChinaのTony Yu氏が手掛けたものであり、彼の技術が高いクロックを実現したとされる。

特に注目すべきは、Zen 5アーキテクチャの進化と8コア・16スレッド構成の相乗効果である。これにより、Ryzen X3Dシリーズがこれまでの非X3Dチップに対して劣勢だったクロック速度のハンデを克服しつつある点が顕著だ。

こうした大幅な性能向上は、ゲームを中心に多くのシーンで重要な役割を果たし、AMDが新たな時代のCPU設計においてリードを握りつつあることを裏付けるものである。インテルのCore Ultra Arrow Lakeと比較しても、このクロック速度とフレームレートは他に例を見ない高い水準にある。

Ryzen X3Dシリーズが辿ったクロック速度の進化と課題

これまでのRyzen X3Dシリーズは、特にクロックスピードに関しては非X3Dチップに一歩遅れを取る傾向があった。例えば、最初の3D V-Cache搭載のRyzen 7 5800X3Dは、非X3D版であるRyzen 7 5800Xと比較してベースとブーストクロックがそれぞれ400 MHzと200 MHz低く設定されていた。

また、Ryzen 5 7600X3Dも同様に、非X3DのRyzen 5 7600Xより600 MHz低いクロック速度でリリースされている。この傾向は、他のZen 4世代のX3D CPUでも共通して見られ、Ryzen 9 7900X3DやRyzen 9 7950X3D、Ryzen 7 7800X3Dでも同じ課題が存在していた。

しかし、最新のRyzen 7 9800X3Dではベースクロックが900 MHz引き上げられ、ブーストクロックも以前のX3Dチップと比較して改善されている。この進化は、クロックスピードで競合と対等に戦うための重要なステップといえる。

AMDは新たなアーキテクチャの改善を通じて、従来のX3Dシリーズの制約を克服し、さらに性能向上を果たした。将来的には、クロック速度の差が縮小し、X3Dシリーズが非X3Dチップと同等のパフォーマンスを発揮できる可能性が見込まれる。

Ryzen 7 9800X3Dの成功が示すゲーム向けCPUの新たな方向性

Ryzen 7 9800X3Dの高性能なゲーミング性能は、特に競技シーンやハイパフォーマンスを求めるゲーマーにとって革新をもたらす可能性がある。Cinebench R23のマルチコアスコアでは、オーバークロックにより31%の向上が見られ、30,513ポイントという驚異的な結果を記録した。

このスコアは一般ユーザーの環境とは異なるものの、AMDがゲーム分野での支配的地位をさらに強化していることを示す指標となる。さらに、従来のX3Dチップは消費電力と温度管理に優れていたが、今回のRyzen 7 9800X3Dはそれに加えてブーストクロックも改善されている点で特筆すべきだ。

動作温度の低下により、発熱管理が必要とされるゲーミングPCにとっても魅力的な選択肢となる可能性がある。AMDは、消費電力を抑えながらも圧倒的なパフォーマンスを提供することで、これからもゲーミングCPU市場での競争力をさらに強化するだろう。