Palo Alto Networksの最新レポートが示すところによると、ヨーロッパとラテンアメリカ地域におけるCIOは、ビジネスリスク管理、運用のレジリエンス強化、リアルタイム対応能力の強化という3つの主要なサイバーセキュリティ課題に直面している。
特に、C-suite内の役割として、従来のIT管理からビジネス戦略と密接に連携する方向へ進化しており、ガバナンスとコンプライアンス対応がますます重視される傾向にある。これはデータ保護の強化規制が背景にあり、例えばヨーロッパで施行されるNIS2規制により、役員レベルでのサイバーセキュリティ責任が一層厳格に求められている。
CIOに求められる「ビジネスリスク管理」への対応強化
Palo Alto Networksが最新レポートで示したように、CIOにとってビジネスリスクの管理は、サイバーセキュリティ戦略における優先課題の一つである。特に、ヨーロッパとラテンアメリカのC-suiteリーダーは、地政学的な緊張が高まる中で、このリスクへの対応がますます重要となっている。
調査では、回答者の25%以上がこの課題に強い関心を寄せていると報告されており、CIOにはリスクマネジメントと技術導入の両面で高度な判断が求められる。
また、AIをはじめとする新技術がリスク管理において重要な役割を果たし始めている。AIは単に脅威を予測するだけでなく、リアルタイムでのリスク対応や意思決定を支援するツールとしても活用されつつある。しかし、この技術を導入するには、既存のリソースやスキルの再編が不可欠であり、単なる技術導入にとどまらない柔軟な対応力が要求されるだろう。
このような現状は、サイバーセキュリティがもはや独立した問題ではなく、企業全体のリスクマネジメントの一環として捉えられていることを意味している。今後も、サイバーリスクに対するCIOのアプローチが、企業の成長と存続に直接的な影響を及ぼす可能性は十分にある。
リアルタイムでの脅威対応力が組織のレジリエンスを左右する
頻発するサイバー攻撃に対し、即応能力を持つことが組織の持続的な成長と安定に欠かせない要素となっている。レポートによれば、20%以上のC-suiteリーダーが、運用のレジリエンス維持と迅速な脅威対応の重要性を指摘している。この背景には、サイバー攻撃の手法が高度化している現状がある。攻撃が事前に察知されることは稀であり、むしろ攻撃の発生と同時にいかに迅速に対応するかが勝負となる。
とりわけAI技術を活用したリアルタイムモニタリングや分析技術が注目されている。これにより、サイバー攻撃を早期に特定し、被害の拡大を最小限に食い止めることが可能となる。こうしたシステムの導入は、多大なコストと技術的な専門知識を伴うが、現代のCIOにとって欠かせない資産といえるだろう。企業全体のデジタル基盤を守るためのレジリエンス向上は、今後さらに重要性を増すだろう。
加えて、即応体制の強化はサイバーセキュリティ部門だけでなく、企業の全レベルでの意識改革を伴う。各部門が連携してインシデント対応にあたることで、組織全体の防御力が強化されると考えられている。これにより、迅速かつ確実な対応が実現し、事業継続への影響を最小限に抑えることが可能になる。
厳格化するガバナンスとコンプライアンスがCIOの役割を拡大させる
現在、CIOにはガバナンスとコンプライアンスの徹底が求められている。特に、10月24日にヨーロッパで施行されたNIS2規制は、サイバーセキュリティにおける組織の義務を大幅に強化し、CIOや取締役会の責任を明確に規定している。
NIS2規制のもとでは、サイバーセキュリティ管理の不備により罰金だけでなく、業務停止といった制裁が科される可能性もあり、従来のコンプライアンス以上の慎重な管理が要求される。
さらに、DORAやAI法案、サイバーレジリエンス法といった新たな規制も控えており、特に金融業や製造業など、多岐にわたる業界で法規制の遵守が厳格化している。これに伴い、CIOの役割はITの枠を超え、ビジネスと法規制を統合的に管理する責任が増している。データ保護やリスク管理を円滑に進めるには、法務部門や他のC-suiteメンバーとの緊密な連携が不可欠である。
こうした流れは、CIOが従来の「情報管理者」から「ビジネスリーダー」としての立場に変わりつつあることを示唆している。企業全体でのサイバーセキュリティの重要性が増す中、今後のCIOは技術と法務の両側面から組織を守る重要な役割を担い、サイバーセキュリティを基盤とした経営戦略の策定が求められるだろう。