AMDが次世代プロセッサThreadripperおよび新しいAPUにおいて、3D V-Cache技術を採用するとの情報が浮上した。ASUSのWRX90マザーボードのマニュアルに記載されているキャッシュ制御オプションにより、3D V-Cache対応が暗示されているが、公式にはまだ対応製品が発表されていない。

しかし、リーカー「zhangzhonghao」によると、サプライチェーンからの情報としてAMDがThreadripper向けに3D V-Cache搭載モデルの開発を進めていると報告されている。Ryzenで1つのCCDに限定されていた3D V-Cacheが、Threadripperでは全CCDに適用されるという。

さらに、次世代APUにも3D V-Cacheが採用される予定で、これは特に高性能ノート向けに提供されると予測される。この技術は高いゲーム性能を実現するが、製造コストも増大するため、一般的には高価格帯モデルへの採用が見込まれる。

3D V-Cache技術の背景とAMDの戦略的意図

AMDがThreadripperと次世代APUに3D V-Cache技術を導入する動きには、近年のCPU市場での競争激化が影響している。3D V-Cacheは従来のキャッシュ構造に比べ、キャッシュメモリを垂直に積層することで、データ転送効率を大幅に向上させる技術である。

この技術を搭載したRyzenプロセッサはゲームやデータ処理の性能において優れた結果を見せ、特にゲーミングCPUとして高く評価された。AMDはこれをThreadripperやAPUにも拡大し、パフォーマンス重視のプロ市場およびハイエンドコンシューマ市場での競争力強化を図っていると考えられる。

出典のVideoCardzやリーカーの情報によれば、3D V-Cacheは現在EPYCに搭載されているものの、Threadripperにも適用される可能性が高い。これは、3D V-CacheがEPYCの強みとなった背景から考えると、プロ向けハイエンドのThreadripperにとっても価値が高いことを意味する。

AMDがこの技術をより多くの製品に展開することは、製造コストやエネルギー消費量を抑えつつ高いパフォーマンスを維持するための戦略的な決定と見られる。

ゲーミング市場へのインパクトとユーザー層の変化

3D V-Cache技術の拡張によって、ゲーミング市場は大きな影響を受ける可能性がある。3D V-Cacheを活用したCPUは、キャッシュ容量と転送速度の向上により、特にゲームなどの高負荷な演算処理に適している。このため、AMDは高性能ノートPCやゲーミングPC市場で優位に立つ意図があると考えられる。

また、APUにおいても3D V-Cacheの採用が進めば、GPUとCPUの両方が内蔵された一体型の高性能製品が増えるため、ゲーミングユーザー層が一層広がるだろう。特に、次世代のAPUで「Halo」シリーズのような高級モデルに限定されるという報道は、AMDがプレミアム市場をターゲットにしていることを示唆している。

高性能なキャッシュ技術は製造コストが高いため、主にゲーミングにおけるフラッグシップモデルに限定される可能性が高いが、これは結果的にユーザー層に明確な選択肢を提供することになる。こうした動向が進展する中で、プレミアムなゲーム体験を求める層にとってAMDの3D V-Cache搭載製品は魅力的な選択肢となり得るだろう。

モバイル向けプロセッサ市場の展望と技術的課題

モバイル向けに3D V-Cacheを搭載するRyzenシリーズの登場は、AMDにとって新たな挑戦となる。モバイルプロセッサはデスクトップ向けに比べ、省電力性や熱設計が重要視される分野である。VideoCardzの情報によると、次世代APUにも3D V-Cacheが搭載される見込みであるが、この技術は特に高級ノートPC向けに限られるとされる。

この点からも、AMDはゲーミング市場に加えて、ハイエンドモバイル市場での影響力拡大を目指していると考えられる。3D V-Cacheは性能向上に寄与する反面、積層技術ゆえに冷却技術や電力管理に高い要求が生じる。

特にモバイルプロセッサへの適用は、バッテリー性能への影響を考慮しなければならない課題を抱える。AMDがこれらの技術的ハードルをどのようにクリアするかによって、モバイル向け3D V-Cache搭載製品の実用性と普及度が決まるだろう。