インテルは、次世代ノートPC向けCPUに従来のRAMスティックを再び採用する方針を発表した。同社は2024年第3四半期の収支報告会において、この方針転換の背景を説明している。次期アーキテクチャ「Panther Lake」や「Nova Lake」では、メモリをチップセットに直接組み込む設計を避け、従来のメモリモジュールに戻る予定だ。
現行の「Lunar Lake」シリーズでは、LPDDR5XメモリがCPUタイルに組み込まれており、これによりノートPCの消費電力は最大40%削減される。しかし、この設計はユーザーにRAM容量を固定させる制約があり、ニッチな市場向けに特化した「一度限り」のプロジェクトとされている。
今後、インテルはモジュール型メモリに戻すことで、ユーザーの柔軟性を確保するとともに、成長するAI市場やノートPC市場の多様なニーズに応える方針である。
次世代CPUにおける「Lunar Lake」の役割とその限界
「Lunar Lake」シリーズは、インテルがノートPC向けに提案した新たな方向性を示す重要なプロジェクトであった。同シリーズの特徴として、LPDDR5X SODIMM RAMをCPUタイルに直接組み込む設計が採用されているが、これにより消費電力を最大40%削減する効果が得られている。
しかし、この設計は一度チップが出荷されると、ユーザーはRAM容量の増設や変更ができないという制約がある。インテルのCEOであるパット・ゲルシンガー氏は、Lunar Lakeを「一度限り」のプロジェクトと表現しており、特定のニッチ市場向けに設計された背景があることを明かしている。
Lunar Lakeは、AI市場の成長に合わせてその役割が急速に変化したとされるが、実際にはエンドユーザーが自由にRAMを拡張できないことが課題として浮上している。現在のAI技術の進化に伴い、大容量メモリが求められるケースが増えており、将来に向けた拡張性も必要とされている。
Lunar Lakeの設計は、ノートPCの省電力化に貢献する一方で、こうした拡張性を欠くことで、一般ユーザーにとっての利便性には限界があるといえる。
インテルが従来のRAMスティックへ回帰する背景とは
インテルが次世代の「Panther Lake」や「Nova Lake」アーキテクチャにおいて従来のRAMスティックの採用に回帰することは、同社のノートPC戦略における大きな転換点といえる。現行のLunar Lakeシリーズのような組み込み型メモリ設計は、省電力化に効果があったものの、固定されたRAM容量がユーザーに柔軟性の制限を与えていた。
この課題を受け、インテルはユーザーが簡単にメモリを交換・増設できる従来のRAMスティックに戻ることで、エンドユーザーのニーズに応えようとしている。また、PC市場におけるメモリの互換性と拡張性は依然として重要視されている。
Lunar Lakeのような省電力設計は一定の効果を発揮するが、柔軟性が損なわれることは事実である。このため、従来のRAMスティックに回帰する決定は、ノートPCの進化とユーザーの利便性向上を考慮したものであり、特にクリエイティブやビジネス用途において、多様なメモリ容量を求める需要にも適応しやすくなる。
パット・ゲルシンガー氏によると、これにより次世代CPUはより多様な市場に対応できる設計が可能になるとされる。
今後のインテルの開発方針と市場への影響
インテルは、次世代CPUにおけるメモリ設計の転換と並行して、ARCデスクトップGPUの開発に関しても再評価を行う方針を示している。この見直しは、現在進行中のAI市場やPC市場の需要動向に基づいたものであり、今後数年間にわたって継続される予定である。
この方針は、インテルがノートPC市場にとどまらず、GPUや他の分野での競争力を向上させる戦略の一環であると考えられる。特に、GPU市場における競争は激化しており、AMDやNVIDIAなどの競合と対抗するためには、性能や消費電力効率に加えて価格面での競争力も欠かせない。
ARCデスクトップGPUの見直しが進められることで、インテルはデスクトップユーザーにとっても魅力的な選択肢を提供する可能性がある。Lowyat.NETによれば、インテルのこれらの決定は、特にハイエンド市場だけでなく、幅広いユーザー層にとっての選択肢の拡充を目指すものであるとされており、今後のPC業界において注目すべき動向といえる。