スマートフォンやタブレット向けのSoC(System on Chip)は、性能と省電力性が重要視される。今回、Rockchip RK3168とHiSilicon Kirin 9000Wという2つのSoCを比較し、その違いを検証する。RK3168は低価格帯スマートフォン向けに設計され、一方でKirin 9000Wは高性能を誇る最新のSoCである。それぞれの強みとベンチマーク結果を基に、どちらが優れた選択肢となるかを考察する。

Rockchip RK3168の概要と特徴

Rockchip RK3168は、主に低価格帯のスマートフォン向けに設計された低性能ARM SoCである。このプロセッサは、NEON拡張を持つ2つのCortex-A9 CPUコアを搭載し、400MHzで動作するPowerVR SGX 540グラフィックスカードを統合している。また、低消費電力仕様のDDR2やDDR3メモリをサポートするメモリコントローラも搭載されている。

RK3168の最大の特徴は、その28nmプロセス技術により、比較的低い消費電力を実現している点にある。このため、スマートフォンのバッテリー寿命を延ばすことが期待できる。また、Cortex-A9ベースの他のSoC、例えばSamsung Exynos 4210と同等のパフォーマンスを発揮する可能性がある。

低価格帯のスマートフォン向けという位置付けから、高性能を要求される用途には不向きであるものの、日常的な操作においては十分なパフォーマンスを発揮する設計となっている。特に、低コストと省エネルギー性能を両立させた製品として、エントリーレベルの市場で一定の需要を見込んでいる。

HiSilicon Kirin 9000Wの詳細スペック

HiSilicon Kirin 9000Wは、HuaweiのMatePad Pro 13.2などで採用されている高性能SoCである。このプロセッサは、12コアを備えた3つのクラスター構造を持ち、異なるコアの組み合わせにより省電力性と高性能を両立している。最も省エネルギーなクラスターには、4つのARM Cortex-A510コアが含まれ、それぞれ最大1,530MHzで動作する。

他のクラスターには、HiSiliconのオリジナルコアが搭載され、最大2,150MHzおよび2,487MHzで動作する6つのコアと2つの高性能コアが含まれている。これにより、単一コアの性能は控えめである一方、多コア性能は2022年のハイエンドSoCに匹敵するレベルとなっている。グラフィックスユニットには、HiSiliconのMaleoon 910が統合されており、9000Sと同様に750MHzで動作する。

このSoCの製造プロセスやアーキテクチャについてはほとんど公開されていないが、推測では7nmプロセスで製造されている可能性が高い。このため、性能だけでなく省電力性にも優れていると考えられている。

ベンチマークによる両者の性能評価

Rockchip RK3168とHiSilicon Kirin 9000Wは、異なる市場セグメントに向けて設計されたため、性能に大きな差が見られる。特に、ベンチマークテストでは、Kirin 9000Wが大幅に優れていることが確認されている。たとえば、Geekbench 6.3のマルチコアテストでは、Kirin 9000Wが平均4039ポイントを記録し、RK3168の性能を大きく凌駕している。

RK3168は、低価格帯向けに最適化されたSoCであるため、パフォーマンスは抑えられているが、その分消費電力が少ない。一方で、Kirin 9000Wは、特にグラフィックス処理やマルチタスクに強く、2022年のハイエンドSoCと比較しても遜色のない性能を発揮する。また、Kirin 9000Wの3DMark Sling Shot Extreme Physicsテストでは、平均5211ポイントという高いスコアを記録しており、これはRK3168のターゲット市場とは大きく異なる層に向けた性能を示している。

このように、両者のベンチマーク結果からも明らかな通り、Kirin 9000Wは高性能を要求される場面で優れた選択肢となり、RK3168はエントリーレベルのデバイスに最適なSoCであることがわかる。

スマートフォン向けSoC市場における今後の展望

スマートフォン市場におけるSoCの進化は、年々著しいものがある。特に、Kirin 9000Wのような高性能SoCは、5Gの普及やAI技術の進化に伴い、さらなる需要が見込まれている。一方で、Rockchip RK3168のような低価格帯向けSoCも、市場の一部では依然として重要な役割を果たしている。

今後の展望として、高性能SoCは、より高度なグラフィックス処理やAI演算機能を持ち、スマートフォンの機能性を飛躍的に向上させる方向に進化していくだろう。一方、低価格帯市場では、消費電力の低さとコスト効率の高さが引き続き重視されると予想される。

特に、エントリーレベルのスマートフォン向けSoCは、新興市場や価格に敏感な消費者にとって欠かせない存在であり続けるだろう。市場全体としては、これらの異なるセグメントが共存しながら、さらなるイノベーションが進むと考えられる。