長年データセンター向けCPU市場をリードしてきたインテルのXeonプロセッサが、初めてAMDのEPYCプロセッサに売上で追い抜かれた。インテルの市場シェアはかつて盤石だったが、EPYCの競争力向上により収益の優位を失いつつある。

AMDのデータセンター部門は第3四半期で35.49億ドルの売上を記録し、インテルのデータセンターおよびAI事業グループの収益33億ドルを上回った。EPYCが高性能サーバー市場で優位に立つ中、インテルは収益回復を目指し、128コアのXeon 6980Pプロセッサ「Granite Rapids」を17,800ドルで提供している。

需要の回復と生産体制の拡大が課題だが、実現すればデータセンター収益が再び向上する可能性がある。しかし、AI向けGPUで市場を席巻するNvidiaが圧倒的な収益を上げており、AMDとインテルのデータセンター戦略がどこまで通用するかが注目される。

データセンター向けCPU市場の変革とAMDの戦略

AMDがデータセンター市場でインテルを超える転機を迎えた背景には、同社が投入するEPYCプロセッサの競争力がある。AMDのEPYCはその多くが高性能かつコスト効率に優れ、インテルのXeonプロセッサと比較して同等かそれ以上の性能を示す点で評価されている。

EPYCの特徴は、より少ない電力消費で多くのコアを提供できる点であり、これによりコスト意識が強いデータセンター運営者の間で広く採用されることとなった。SemiAnalysisによる調査も示しているように、AMDのデータセンター部門の売上がインテルの同部門を上回ったことは、企業の選択が確実に変化している証拠であるといえよう。

また、EPYCが多様なワークロードを効率的に処理できるため、データセンターの運用効率が改善され、コストパフォーマンスが高いシステム構築が可能になった。加えて、インテルのXeonプロセッサは価格が高騰している一方、EPYCは価格と性能のバランスが取れた製品展開をしているため、予算の限られた企業にも採用が拡大している。

これらの戦略により、AMDは一過性の成功ではなく、安定した市場シェアを確保しつつあると考えられる。

インテルが直面する課題と価格戦略の変化

インテルは長らくデータセンター市場で圧倒的なシェアを誇ってきたが、近年の競争激化により収益の確保が難しくなっている。同社のXeon 6980P「Granite Rapids」は17,800ドルと、インテルのラインナップ中でも最高価格帯に設定されているが、これが高性能を求める一部の企業に採用されるにとどまるため、広範囲な採用が難しい状況にある。

また、インテルは売上の低下に対抗するため、サーバーチップの価格を大幅に引き下げるという措置を取っており、これにより利益率が圧迫されるというジレンマに直面している。さらに、インテルは「Granite Rapids」の供給を円滑に進めるため、製造規模を拡大する必要がある。

しかし、これには高い生産コストと多大なリソースが必要であるため、同社の収益改善の即効策となるかは未知数である。これに対し、AMDはEPYCプロセッサを市場に合わせた価格で提供することで、コスト意識の高い企業の支持を集めている。

このような状況が続く限り、インテルのシェアはさらに厳しいものとなる可能性があり、価格競争が続くことも予想される。

データセンター市場におけるNvidiaの存在感とAIの台頭

AMDとインテルが互いに競争を繰り広げる一方、Nvidiaがデータセンター市場での地位を確立しつつある。特にAIおよび高性能計算(HPC)向けのGPUを軸に急速な成長を遂げており、2025会計年度第2四半期には計算用GPUの売上だけで226.04億ドルを記録している。

このようなNvidiaの収益は、インテルやAMDのデータセンター機器の売上を大きく上回っている。Nvidiaの成功の背景には、AIプロセッサの需要増加がある。データセンター内でのAI処理に対応するため、強力なGPUが求められており、Nvidiaの製品はその要求を満たすとともに、ネットワーキングチップも含めた包括的なソリューションを提供している。

このようなトレンドが続けば、データセンター市場におけるNvidiaの優位性は今後さらに拡大するだろう。これに対し、AMDとインテルがどのようにAI市場にアプローチしていくのかが、今後のデータセンター市場の方向性を左右する鍵となる。