Samsungが新たに発表したGalaxy Tab S10+は、ハイエンドAndroidタブレットとして注目を集めている。12.4インチの大画面OLEDディスプレイと高性能MediaTek Dimensity 9300+チップを搭載し、ハードウェア面では一級品と言えるだろう。しかし、iPad Proや他の競合機種と比べ、価格がネックとなり、その価値に疑問符がつく製品である。Samsungの最新フラッグシップタブレットが本当にその高価格に見合うものなのか、詳細に見ていこう。

12.4インチの美麗なOLEDディスプレイ

Galaxy Tab S10+の最大の魅力は、その12.4インチのDynamic AMOLED 2Xディスプレイである。解像度は2800 x 1752ピクセルと非常に高く、120Hzのリフレッシュレートにも対応しているため、映像やゲームを滑らかに楽しむことができる。このサイズ感と画質の高さは、動画視聴やゲームプレイに最適であり、特に映画やドラマのようなコンテンツをフルスクリーンで楽しむには申し分ない。

16:10の画面比率は、従来のタブレットやスマートフォンのような4:3に比べて横長であり、ノートパソコンに近い使用感を提供する。縦型表示やウェブブラウジングには少し制約があるものの、横型での動画視聴には適している。ただし、iPad Proのように4:3のアスペクト比が好まれるユーザーにとっては、好みが分かれるポイントかもしれない。

一方で、この美しいディスプレイには強化ガラスが採用されており、反射防止コーティングも施されている。外光の強い場所でも視認性が高い点は評価に値するが、やはり若干の光の反射は避けられない。iPad Proが提供するマット仕上げのディスプレイと比較すると、その差は顕著である。

高性能MediaTekチップ搭載も、価格に見合わない価値

Galaxy Tab S10+には、MediaTek Dimensity 9300+チップが搭載されている。このプロセッサは、従来のQualcomm製チップに匹敵するパフォーマンスを発揮し、特にマルチコア処理やグラフィックス処理で優れた結果を示す。軽い作業から負荷の高いゲームまで、快適に動作するため、パフォーマンス面での不満は少ない。

しかし、問題となるのはその価格だ。Galaxy Tab S10+は、エントリーモデルでも1,000ドル以上という価格設定となっており、この価格帯ではiPad Proや他の高性能タブレットと直接競合する。実際に、Geekbench 6のスコアを比較すると、iPad ProのM4チップに大きく劣る結果となっており、性能面での差は顕著である。特にプロフェッショナル用途での高負荷作業やクリエイティブな作業には、対応が難しい場面が多い。

そのため、軽いウェブブラウジングや動画視聴、ゲームといった用途に限られるユーザーにとっては、Galaxy Tab S10+の価格は割高に感じられるだろう。価格に見合うだけの性能や機能があるのかという点で、ユーザーは慎重に判断する必要がある。

Androidタブレットとしての限界とソフトウェアの問題

Galaxy Tab S10+は、Android 14をベースとしたOne UI 6.1.1を搭載しているが、タブレット向けのAndroid環境には依然として多くの課題が残る。特に、プロフェッショナルなアプリケーションやソフトウェアの対応が弱く、iPadOSと比較するとその差は歴然としている。LumaFusionのような動画編集アプリがプリインストールされているが、追加料金が必要になることや、Photoshopなどのフルバージョンアプリが使えない点は大きなデメリットである。

また、ウェブブラウジングの体験も最適化されていない。Chromeを利用している場合でも、サイトによってはデスクトップ表示に切り替える必要があり、そのたびに作業効率が落ちる。iPadのSafariがデスクトップクライアントとして動作するのに対し、Androidではそのレベルに達していないのが現状だ。

さらに、プリインストールされているアプリの多くが広告や試用版である点も問題視されている。高価格帯のデバイスであるにもかかわらず、ユーザーが不要なアプリに悩まされるのは不満要素の一つだ。これらの要素は、Androidタブレットの限界を如実に示しており、プロフェッショナル用途には不向きなデバイスであると言える。

競争力に欠ける価格設定と他の選択肢

Galaxy Tab S10+は、1,000ドルという価格設定で販売されているが、その価格に見合った価値を提供できているかは疑問が残る。実際、同価格帯にはiPad Proや中堅クラスの2-in-1ラップトップが存在し、これらの製品はより多機能で、かつプロフェッショナル用途にも対応できる。

特にiPad Proは、同じ価格でより高性能なM4チップを搭載しており、GeekbenchスコアでもGalaxy Tab S10+を大きく上回る結果を出している。さらに、iPadOSはタブレット向けのアプリケーションやソフトウェアが豊富であり、プロフェッショナルユーザーにとっては明らかに優れた選択肢となる。一方、Androidタブレット市場においても、OnePlus PadやPixel Tabletなど、より安価で同様の体験を提供するデバイスが存在する。

また、Galaxy Tab S9シリーズを既に所有しているユーザーにとって、S10+へのアップグレードのメリットは少ない。S9シリーズでも十分に高性能であり、日常的な使用には全く問題がない。これらの要素を考慮すると、Galaxy Tab S10+は魅力的なデバイスであるものの、その高価格設定は非常に挑戦的であり、他の選択肢を検討する価値が高い。