Appleは、AirPods Pro 2向けに新しいベータファームウェアをリリースした。今回のバージョン7B5013dは、iOS 18のデベロッパー向けに提供され、複数の革新的な機能を搭載している。特に、頭の動きでSiriを操作できる「ヘッドジェスチャー」や、騒がしい環境でも通話をクリアに保つ「ボイスアイソレーション」など、ユーザー体験を飛躍的に向上させる新機能が注目されている。

また、ゲーム体験を深化させるパーソナライズド・スペーシャルオーディオ機能や、聴覚保護機能の追加など、ヘルスケア分野でも大きな進化を遂げている。

頭の動きで操作する新機能「ヘッドジェスチャー」

新たに導入された「ヘッドジェスチャー」機能は、AirPods Pro 2のユーザー体験を大きく変える画期的な機能である。Siriを呼び出す際、従来の音声コマンドやタッチ操作に加え、頭の動きによって操作が可能になった。例えば、電話がかかってきた場合、簡単な「うなずき」で応答し、「首を振る」ことで拒否できる。これにより、ハンズフリーでの操作がより直感的に行えるようになった。

この機能は、AirPods Pro 2に搭載されている高度なセンサーを活用し、ユーザーの頭の動きを正確に検知する。ジェスチャーの感度やアクションのカスタマイズも可能であり、個々のユーザーに合った設定を行うことで、さらに快適な使用感を提供する。この機能は公共の場でも違和感なく使用できるよう、微細な動作でも正確に反応する設計が施されている。

また、この「ヘッドジェスチャー」機能は、操作が困難なユーザーにとっても有用であり、アクセシビリティの向上に貢献している。タッチ操作や声での指示が難しい状況でも、この新しい操作方法が代替手段となることで、多様なニーズに対応できる柔軟性を持つ。

ノイズの多い環境でもクリアな音声通話を実現する「ボイスアイソレーション」

AirPods Pro 2の新しい「ボイスアイソレーション」機能は、騒がしい環境でもクリアな通話体験を提供する技術である。背景ノイズを効果的に排除し、通話中の相手の声を明瞭に聞き取れるようにするため、人工知能と高度なアルゴリズムを組み合わせて動作する。この機能は、特に公共交通機関やオープンオフィスのような騒がしい環境での使用を念頭に置いて設計されている。

ボイスアイソレーションは、周囲の雑音とユーザーの声をリアルタイムで分析し、重要な音声だけを強調することで動作する。風の強い屋外や交通量の多い道路でも、声が相手に明瞭に届くようになるため、通話の品質が劇的に向上する。この技術は、背景音の種類や音量に応じて動的に調整されるため、あらゆるシチュエーションで安定した通話が可能だ。

特に聴覚に困難を抱えるユーザーや、雑音の中での会話が苦手な人にとって、この機能は大きな利便性を提供する。通話がクリアになることで、聞き返しの回数が減り、通話相手とのコミュニケーションがスムーズになる点が大きなメリットである。

パーソナライズされた空間オーディオでゲーム体験を向上

AirPods Pro 2の新しいベータファームウェアでは、パーソナライズされた空間オーディオ機能が強化されており、これによりゲーム体験がさらに進化した。ユーザーの耳の形に合わせて音響環境をカスタマイズし、より臨場感のある音場を作り出すことで、ゲームの世界に没入する感覚を大幅に向上させる。

この機能は、iPhoneのTrueDepthカメラを使用してユーザーの耳の形をスキャンし、個別のオーディオプロファイルを作成する。これにより、従来の空間オーディオよりも正確なサウンドポジショニングが実現し、例えば銃声や足音など、ゲーム内での重要な音がどの方向から聞こえるのかを直感的に把握できるようになる。この技術は、特にマルチプレイヤーゲームにおいて戦術的な優位性を提供する。

さらに、動的ヘッドトラッキングもサポートされており、ユーザーが頭を動かすと音の位置もリアルタイムで変化する。これにより、固定された音源からの音が常に正しい位置から聞こえてくるため、現実世界に近い音の体験が可能になる。この機能はゲーム以外にも映画鑑賞や音楽鑑賞に応用できる汎用性を持ち、エンターテイメント体験全般を向上させる。

ヘルスケア機能の追加 – 聴覚保護と検査機能

AirPods Pro 2のベータファームウェアでは、単なる音楽再生デバイスにとどまらない、聴覚ヘルスケア機能が追加された。この新機能により、ユーザーは自身の聴覚を保護し、聴覚に関する検査を手軽に行うことが可能になる。例えば、AirPodsを使った簡単な聴力テストが導入され、ユーザーは自分の聴覚プロフィールを作成できる。

この聴力テストは、ユーザーが自分のiPhoneとAirPodsを使用して行い、約5分で終了する。テスト結果に基づき、個々のユーザーに最適化されたオーディオ設定が自動的に適用されるため、音楽や通話の際に最も適切な音響体験が提供される。また、特定の音をリアルタイムで強調することで、軽度から中等度の聴覚障害を持つユーザーが日常的な会話や環境音をより明瞭に聞き取れるようになる。

さらに、「聴覚保護」機能は、ユーザーが騒音の多い場所にいる際、周囲の音量を自動的に下げることで聴力を保護する。この機能は、ライブコンサートや騒音の激しい通勤時などで特に有効であり、長時間の騒音暴露による聴力低下を防ぐ役割を果たす。これにより、AirPods Pro 2は、音楽や通話を楽しむデバイスであるだけでなく、聴覚ケアのツールとしても活用できる。