iOS 18で導入されたApple Cashの「Tap to Cash」機能により、iPhoneやApple Watchを使って簡単に現金の送受信が可能になった。
この新機能は、他のアプリを使わずに、直接端末同士でのやり取りを可能にする点が特徴だ。
個人情報を守りながら最大2,000ドルまでの取引が行えるTap to Cashは、今後のキャッシュレス社会をさらに加速させるだろう。
Apple Cashの新機能「Tap to Cash」とは？
iOS 18で登場した「Tap to Cash」は、Apple Cashを使って端末同士で現金の送受信ができる革新的な機能である。iPhoneやApple Watchを通じて、ユーザー同士が対面でお金をやり取りできるこの機能は、従来のApple Payとは異なり、電話番号やメールアドレスといった個人情報を共有せずに取引が完了する点が特徴だ。
Tap to Cashを使うには、Apple Cashアカウントがすでに設定されている必要があるが、一度アカウントが有効化されれば簡単に利用できる。この機能は、Apple Payが提供するキャッシュレス決済の枠をさらに広げ、現金のやり取りをより便利にしている。
アメリカ国内に限定されている点は注意すべきだが、Tap to Cashは対面での小額取引に最適な手段となる。1ドルから最大2,000ドルまでの送受信が可能で、7日間での送金限度額が設定されている点も特徴的だ。現金のやり取りにおいては、迅速かつ安全な取引が重要であり、この機能はそのニーズをしっかりと満たしている。
iPhoneとApple Watchでの利用方法
Tap to CashはiPhoneとApple Watchのどちらでも利用できるが、それぞれ操作手順が少し異なる。iPhoneの場合、まずウォレットアプリを開き、Apple Cashカードを選択する必要がある。続いて「送信またはリクエスト」を選び、「Tap to Cash」をタップすることで金額を入力し、送金相手の端末と近接させて取引を完了させる。
Apple Watchでは、ウォレットアプリ内のApple Cashカードから同じように「Tap to Cash」を選び、金額を入力後、送信ボタンをダブルクリックして送金を確定させる。
どちらの場合も、最終的に端末同士を近づけることで支払いが完了し、その場で送金相手に確認してもらうことができる。取引が完了した後は、ウォレットアプリ内で最近の取引履歴を確認できるため、万が一のトラブルが発生した場合でも安心だ。このシンプルな操作性は、iPhoneとApple Watchの両方で一貫しており、初めて使うユーザーでも迷わずに利用できるだろう。
利用時の注意点と制限
Tap to Cashの利用にはいくつかの制限が存在する。まず、利用できる金額の範囲は1ドルから2,000ドルまでとなっており、7日間で2,000ドルの取引制限がある。これは一度に大きな金額の送金を必要とする場合には、他の支払い方法を検討する必要があることを意味する。また、Tap to Cashは現在、アメリカ国内のみで利用可能であり、他国での利用はサポートされていない。
さらに、Tap to Cashを使うためには、iOS 18以上のバージョンを搭載したiPhoneか、watchOS 11以上のApple Watchが必要となる。また、インターネット接続が必須であるため、Wi-Fi環境がない場合でも携帯データ通信で取引を行える点は利便性が高いが、通信状況によっては遅延が発生する可能性もある。
プライバシー保護の観点では、相手に自分の電話番号やメールアドレスを共有する必要がない点が大きな強みとなるが、最大限のセキュリティを確保するために、Apple Cashアカウントの設定や本人確認が事前に完了していることが求められる。
今後の展望とAppleの狙い
AppleがiOS 18でTap to Cashを導入した背景には、キャッシュレス社会のさらなる推進がある。従来のApple Payに加え、個人間での簡便な現金のやり取りを可能にすることで、ユーザーは他のアプリに頼らずに日常的な送金を完結できる。Appleはこうした機能強化によって、ユーザーの利便性向上を図りつつ、より多くの消費者をApple Cashのエコシステムに取り込もうとしている。
Tap to Cashがアメリカ国内に限られている点は現時点では制約であるが、今後のアップデートや他国展開に期待がかかる。また、Appleが他の金融サービスと提携する可能性も考えられ、グローバル展開が進めば、さらに多くのユーザーがこの利便性を享受できるようになるだろう。Appleの狙いは、単に決済機能を提供するだけでなく、より広範な金融サービス分野への足がかりを築くことにある。