サムスンのフラッグシップOLEDテレビが、「クイックメディアスイッチング(QMS)」に対応したことで、映像体験が大幅に向上した。
この機能は、異なるリフレッシュレート間での切り替えをシームレスに行い、これまでのような黒画面(HDMIボンク)を回避するものだ。
現在、QMSに対応しているのはサムスンのS95DとS95Cモデルで、対応メディアプレイヤーはApple TV 4Kのみとなっている。
クイックメディアスイッチングとは何か
クイックメディアスイッチング(QMS)は、異なるリフレッシュレート間の切り替えをシームレスに行う機能である。従来、リフレッシュレートが異なるコンテンツに切り替える際には、一時的に黒画面(「HDMIボンク」と呼ばれる)が表示されることがあった。QMSはこの問題を解消し、切り替え時の映像体験を中断させない。
QMSの基本的な仕組みは、HDMI 2.1a規格に基づいており、可変リフレッシュレート(VRR)技術を活用している。これにより、60fpsのテレビ番組から24fpsの映画に切り替える際も、遅延やカクつきが発生しない。視聴者にとっては目立たない変化だが、コンテンツの切り替えがスムーズに行われ、視覚的な違和感がほとんどなくなる点で大きな進化といえる。
ただし、この技術はリフレッシュレート間の切り替えにのみ適用されるため、HDRコンテンツと標準コンテンツの間での切り替えには適用されない。現時点では限られた条件下でのみ使用可能だが、QMSは今後の映像技術の標準機能になる可能性を秘めている。
サムスンとLGの最新モデルが対応
サムスンとLGの最新のOLEDテレビが、このQMS機能に対応している。特に、サムスンのS95DおよびS95Cモデルは、QMSを搭載した数少ないテレビとして注目を集めている。また、LGの2023年および2024年モデルでもこの機能が導入され、同様の体験が提供される。
QMSは、VRRとHDMI 2.1aに対応した機器でのみ動作するため、互換性のある機器が必要となる。この点で、Apple TV 4Kが重要な役割を果たしている。2022年に登場したこのストリーミングデバイスは、現時点で唯一、QMSに対応したメディアプレイヤーとなっており、これに接続することで、サムスンやLGの最新テレビでシームレスな映像切り替えが可能になる。
ただし、全てのメーカーがQMSに対応しているわけではなく、例えばソニーは現在この技術に対応する計画を持っていない。このため、サムスンやLGの最新モデルが、現時点では他社をリードする形となっている。
Apple TV 4Kとの相性
QMSを利用するためには、Apple TV 4Kが不可欠である。これは、HDMI 2.1a規格に対応している現在唯一のメディアプレイヤーであり、サムスンやLGの最新OLEDテレビでQMSを機能させるための重要なパートナーとなっている。Apple TV 4Kを使用することで、異なるリフレッシュレート間のシームレスな切り替えが可能となり、視聴者はストレスなく複数のコンテンツを楽しむことができる。
Apple TV 4Kは、2022年モデルでQMSをサポートしており、その機能はHDMI 2.1aに基づいている。このプレイヤーをテレビに接続すると、リフレッシュレートの異なるコンテンツを切り替える際に、黒画面が発生することなくスムーズに再生される。このQMS機能は、特にスポーツ番組や映画など、異なるフレームレートを持つコンテンツを頻繁に切り替える場合に大きな利便性を発揮する。
QMSは、Apple TV 4Kを活用することで最大限に効果を発揮するが、今後、他のストリーミングデバイスがこの技術に対応するかは未定である。現時点では、QMSを活用したい場合、Apple TV 4Kが最適な選択肢である。
今後の展望と他のメーカーの対応
QMSは、現時点ではサムスンとLGの最新モデルでのみ利用可能だが、今後他のメーカーもこの技術を導入するかが注目される。現時点で、ソニーはQMSに対応する計画がないと発表しており、他のメーカーもこの技術の採用については慎重な姿勢を見せている。
一方で、QMSのような技術は、映像体験の向上に貢献するため、今後さらに広まる可能性がある。特に、ストリーミングサービスが普及し、異なるフレームレートのコンテンツが混在する状況では、この機能の需要が高まると考えられる。ユーザーにとっても、黒画面がなくスムーズにコンテンツを切り替えられることは、大きなメリットである。
今後、HDMI 2.1aに対応した機器やメディアプレイヤーが増加すれば、QMSが標準機能となる可能性がある。特に、高品質な映像体験を重視するユーザー層には、これらの技術が魅力的に映るだろう。現在は限定的な技術だが、そのポテンシャルは非常に高い。