「バッテリー交換が1万円以下でできます」と言われたら、正直ちょっと魅力的に感じませんか。
スマートフォンの価格が20万円近くまで高騰する中、数千円で延命できるなら…と考えるのは自然なことです。しかし今、互換バッテリー市場の拡大とともに、発火や建物全焼といった深刻な事故も報告されています。
実際に、リチウムイオン電池関連の火災は過去最多ペースで増加し、非純正バッテリーによる事故の多くが火災に発展しています。さらに最近は「BMS移植」という高度な加工が行われ、見た目では分からないリスクも生まれています。
この記事では、事故統計、技術的リスク、OSによる制御、そして日本や海外の最新法規制までをわかりやすく整理します。安さと安全性のどちらを優先すべきか、自分に合った判断ができるよう、ライトユーザーの方にもかみ砕いて解説します。
- なぜ今「互換バッテリー」が急増しているのか?価格高騰と修理市場の拡大
- 過去最多ペースのリチウムイオン電池火災――事故統計が示す現実
- 建物全焼も発生…非純正バッテリー事故の深刻な実例
- 夏に急増する発火リスクと“遅れて燃える”バッテリーの怖さ
- 「BMS移植」とは何か?警告を消すために行われる高度で危険な加工
- スポット溶接とニッケルテープの落とし穴――修理現場で起きている技術的リスク
- Android 16・iOS 18はどう変わった?OSによるバッテリー管理の最新事情
- 日本と海外の法規制はどこまで進んだ?修理する権利とパーツペアリング問題
- PSEマークだけでは不十分?粗悪品を見抜くチェックポイント
- 修理前に必ず確認したい3つの質問と、安全を優先する選択肢
- 参考文献
なぜ今「互換バッテリー」が急増しているのか?価格高騰と修理市場の拡大
ここ数年、スマートフォンやタブレットの「互換バッテリー」が一気に増えています。その背景にあるのは、端末価格の高騰と修理市場の急拡大という大きな流れです。
いまやハイエンドスマートフォンは20万円を超えるモデルも珍しくありません。買い替えのハードルが上がる中で、「電池さえ交換できればまだ使える」という選択をする人が増えています。
実際、MM総研の予測では、メーカーやキャリアを通さない独立系修理店でのスマホ修理台数は2025年度に400万台規模に達するとされています。修理という選択肢が、特別なものではなくなっているのです。
| 背景要因 | 具体的な動き |
|---|---|
| 端末価格の上昇 | 買い替えより修理を選ぶ人が増加 |
| 修理市場の拡大 | 独立系修理店の利用が拡大 |
| 法規制の変化 | 「修理する権利」への注目が高まる |
さらに追い風となっているのが、「修理する権利(Right to Repair)」の広がりです。米国オレゴン州では2024年、メーカーによる部品のペアリング制限を禁じる法律が成立しました。日本でも2024年にスマホソフトウェア競争促進法が成立し、公正な競争環境づくりが進められています。
こうした流れの中で、「純正でなくても使えるなら安く済ませたい」というニーズが顕在化しました。正規修理より数千円から1万円以上安いケースもあり、価格差はライトユーザーにとって大きな魅力です。
一方で、消費者庁やNITEが注意喚起を行うように、非純正バッテリーによる事故も報告されています。2014年から2023年までの10年間で、非純正バッテリー関連の事故は235件、その約96%が火災に至ったと分析されています。
つまり市場は拡大していますが、それは単純に「安全になったから」ではありません。価格と利便性を優先する動きが加速した結果、供給も一気に増えたというのが実態です。
特にECサイトでは「純正同等」「大容量」とうたう製品が数多く流通しています。見た目だけでは品質の差が分かりにくく、価格競争が激しい分、玉石混交の状態になっています。
今、互換バッテリーが急増しているのは偶然ではありません。高くなったスマホを長く使いたいという合理的な判断と、修理を後押しする社会的な流れが重なった結果です。その拡大スピードの裏側に何があるのかを理解することが、これからの選択に直結します。
過去最多ペースのリチウムイオン電池火災――事故統計が示す現実

リチウムイオン電池の火災は、いまや「珍しい事故」ではありません。
むしろ、統計を見ると過去最多ペースで増加しているという現実が浮かび上がっています。
私たちが毎日持ち歩くスマートフォンやモバイルバッテリーが、その中心にあります。
東京消防庁の公表データによれば、2024年9月末時点でのリチウムイオン電池関連火災は228件。
前年同期より52件増え、過去最多ペースで推移しました。
そのうち約3割、77件がモバイルバッテリーによるものです。
| 項目 | 件数・割合 |
|---|---|
| 2024年9月末時点の火災件数(東京消防庁管内) | 228件 |
| 前年同期比 | +52件 |
| うちモバイルバッテリー関連 | 77件(約3割) |
さらに、消費者庁やNITEの集計では、2020年度から2024年度の5年間で、ウェアラブル端末や携帯用機器など人体に密着して使う製品の発火・発煙事故が162件報告されています。
その84%にあたる136件がリチウムイオン電池に起因していました。
つまり「製品の問題」というより、「電池そのもののリスク」が主因になっているケースが多いのです。
注目すべきは、事故件数だけでなく被害の深刻化です。
NITEが公表した2014年から2023年までの分析では、非純正バッテリーによる事故235件のうち、227件、約96%が火災に発展しています。
一部では建物が全焼する事例も報告され、行政が異例の強い注意喚起を出す事態となりました。
なぜここまで増えているのでしょうか。
背景には、モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンなどの爆発的な普及があります。
所有台数が増えれば、比例して事故母数も増えるのは避けられません。
加えて、夏場の高温環境も大きな要因です。
NITEによれば、6月から8月に事故が増加する傾向が確認されています。
車内温度は短時間で50度を超え、ダッシュボード付近では70度以上になることもあり、一般的なリチウムイオン電池の許容温度(45〜60度)を簡単に上回ってしまいます。
さらに厄介なのが「遅発性発火」です。
落下や圧迫で内部が損傷しても、その場では何も起きません。
数日後、あるいは数週間後の充電中に突然発火するケースもあり、原因特定が難しいのが特徴です。
スマートフォンは生活インフラです。
だからこそ、その心臓部であるバッテリーの事故統計を「他人事」として片付けないことが重要です。
数字が示しているのは、便利さと引き換えに抱えている現実のリスクなのです。
建物全焼も発生…非純正バッテリー事故の深刻な実例
非純正バッテリーの事故は「煙が出た」で終わらないケースが増えています。実際に、発火が建物全焼にまで発展した事例が報告され、行政が異例の強い注意喚起を行いました。
消費者庁・経済産業省・NITEは2024年6月、「低価格・高リスク」の非純正バッテリーに注意するよう合同で呼びかけています。その背景には、スマートフォン用の互換バッテリーが出火し、住宅が全焼した火災事例の発生がありました。
数字で見ると、その深刻さがよりはっきりします。
| 期間 | 非純正バッテリー事故件数 | うち火災発生件数 |
|---|---|---|
| 2014〜2023年 | 235件 | 227件(約96%) |
NITEの公表データによれば、非純正充電式バッテリーによる事故235件のうち、約96%が火災に至っています。つまり、いったん異常が起きた場合、「発煙で止まる」のではなく「燃え広がる」リスクが極めて高いということです。
なぜここまで被害が大きくなるのでしょうか。主な原因として指摘されているのは、内部構造の品質不良です。正極と負極を隔てるセパレータが不均一だったり、微細な金属粉が混入していたりすると、内部短絡が発生しやすくなります。
さらに、ガス排出弁(ベント)が適切に機能しない製品では、内圧が限界まで上昇し、一気に破裂・爆発的燃焼に至ることがあります。本来であれば圧力を逃がして被害を抑える設計が、コスト削減によって省略・簡略化されているケースもあると分析されています。
東京消防庁の統計でも、リチウムイオン電池関連火災は増加傾向にあり、モバイル機器が日常インフラとなった現代では、事故が起きる場所も「自宅の寝室」「充電中のリビング」など生活空間の中心です。
就寝中の充電や外出中の充電放置が、火災拡大の引き金になる点も見逃せません。初期消火ができなければ、数分で家具やカーテンに燃え移る可能性があります。
「安かったから」「純正は高いから」という理由で選んだバッテリーが、住まいそのものを失うリスクにつながる。建物全焼という現実は、決して大げさな脅しではありません。
スマートフォンは毎日使う身近な存在ですが、その中にあるバッテリーは高密度のエネルギーの塊です。価格差だけで判断せず、事故が起きたときの被害規模まで想像することが、安全への第一歩になります。
夏に急増する発火リスクと“遅れて燃える”バッテリーの怖さ

リチウムイオンバッテリーの事故は、実は一年中均等に起きているわけではありません。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)によれば、気温が上昇する6月から8月にかけて事故が増加する傾向が明確に見られます。
特にスマートフォンやモバイルバッテリーは、持ち歩きが前提のガジェットです。炎天下の車内や屋外での使用など、夏特有の環境が重なることで、リスクは一気に高まります。
見落とされがちなのが「その場で燃えないケース」の怖さです。実は、事故の中には数日から数週間後に突然発火する“遅発性発火”も報告されています。
| 夏に多い状況 | 内部で起きていること | 結果としてのリスク |
|---|---|---|
| 車内に放置(50〜70℃) | セパレータの熱収縮・内部短絡 | 充電中に突然発火 |
| 落下・圧迫 | 電極の微細な損傷 | 数日後に熱暴走 |
| 高温下での急速充電 | 内部温度の急上昇 | 発煙・発火 |
例えば夏の車内は、短時間で50度を超え、ダッシュボード付近では70度以上に達することがあります。一般的なリチウムイオン電池の許容温度上限(45〜60度程度)を簡単に超えてしまいます。
この高温にさらされると、電池内部で正極と負極を隔てている「セパレータ」が熱で収縮し、目に見えないレベルの内部短絡が起きることがあります。その場では何も起きなくても、後日の充電中に一気に熱暴走へ進むのです。
さらに厄介なのが、夏のレジャーや移動中の落下・圧迫です。カバンの中で押しつぶされたり、アスファルトに落としたりしても、外装に傷がなければ「問題なし」と思いがちです。
しかし内部では電極がわずかに変形し、金属粉が移動するなどの損傷が進んでいる可能性があります。消費者庁が注意喚起している事例の中にも、使用から時間が経ってから発火に至ったケースが含まれています。
「今は普通に使えている」ことは、安全の証明にはなりません。高温や衝撃を受けた後のバッテリーは、時限的なリスクを抱えている可能性があります。
とくに互換バッテリーや過去に修理歴がある端末では、内部構造の余裕が小さい場合もあります。わずかな熱ダメージや接合部の劣化が、夏場の高温環境で一気に表面化することもあります。
夏は「その瞬間の使い方」だけでなく、「数日前の扱い方」まで事故につながります。高温環境を避ける、強い衝撃を与えた端末は注意深く観察する――それだけでも、遅れて燃えるリスクは大きく下げられます。
小さな違和感を見逃さないことが、真夏の発火事故を防ぐ最も現実的な対策です。
「BMS移植」とは何か?警告を消すために行われる高度で危険な加工
「BMS移植」とは、劣化した純正バッテリーから制御基板だけを取り外し、新しい互換セルに付け替える加工のことです。
目的はシンプルで、端末に表示される「不明な部品」という警告を消すためです。見た目上は純正のままに見せる“裏ワザ”のような手法ですが、実際には高度で危険な分解・再接合を伴います。
BMSはBattery Management Systemの略で、充電制御や温度監視、過電流保護などを担うバッテリーの頭脳です。この基板にはシリアル情報も記録されており、本体と紐付けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| BMSの役割 | 充放電管理、温度監視、過電流保護 |
| 移植の目的 | 警告表示の回避、最大容量表示の維持 |
| 主な作業 | 旧セル切断、基板取り外し、新セルへ溶接 |
| 潜在リスク | 内部短絡、発熱、長期的な発火 |
作業工程では、まず劣化した純正バッテリーを分解し、帯電したセルの端子を切断します。この時点でショートすれば発火する可能性があります。NITEや消費者庁が注意喚起している通り、リチウムイオン電池は内部短絡が起きると急激に燃焼が進みます。
次に、新しい互換セルへBMSをスポット溶接で接合します。ハンダ付けではなく大電流を瞬間的に流す溶接方式で、設定を誤ると内部のセパレータを損傷させる恐れがあります。NASAの技術報告でも、バッテリータブの溶接品質は安全性に直結すると指摘されています。
さらに、専用機器で充電回数や最大容量のデータを書き換え、見かけ上「新品・純正」の状態に整えます。ここまで行って初めて、端末側は元のバッテリーだと認識します。
問題は、完成直後に異常が出ないことです。接合部のわずかな抵抗増加や絶縁不良が、数か月後の充電中に発熱トラブルとして表面化するケースも報告されています。長期性能を検証した修理事業者の報告でも、移植品は個体差が大きいとされています。
「警告が出ない=安全」というわけではありません。むしろ、警告を消すために物理的リスクを上乗せしている可能性があります。ライトユーザーほど、この構造を知っておくことが重要です。
見た目の完璧さと、内部の安全性は別問題です。BMS移植は高度な技術で成り立っていますが、その難易度の高さこそが最大のリスク要因でもあるのです。
スポット溶接とニッケルテープの落とし穴――修理現場で起きている技術的リスク
バッテリー交換の現場で見落とされがちなのが、スポット溶接とニッケルテープの品質です。見た目はきれいに仕上がっていても、接合部のわずかなミスが数か月後の発火リスクにつながることがあります。
リチウムイオン電池は高密度エネルギー体です。わずかな抵抗増加や熱損傷が、内部短絡や熱暴走の引き金になる可能性があります。
とくにBMS移植を伴う修理では、この接合工程が安全性の分かれ目になります。
| 不具合の種類 | 原因 | 想定されるリスク |
|---|---|---|
| 過剰入熱 | 電流設定が高すぎる | セパレータ溶融→内部短絡 |
| 溶接不足 | 熱量不足 | 接触抵抗増大→局所発熱 |
| 材料不適合 | 薄い・メッキ鋼板使用 | 発熱・腐食・破断 |
スポット溶接は一瞬で大電流を流し、ジュール熱で金属同士を接合します。問題は、その熱が電池内部にまで伝わる点です。リチウムイオン電池のセパレータはポリエチレンやポリプロピレン製で、融点はおよそ130〜160℃とされています。
設定を誤れば内部構造が部分的に溶け、外からは見えない損傷が残ります。NASAの技術報告でも、バッテリータブ溶接は熱暴走リスクの重要因子と指摘されています。
一方で熱が足りない「見かけ上の成功」も危険です。接触抵抗が高い状態で急速充電や高負荷動作を行うと、接合部そのものが発熱源になります。
さらに見逃せないのがニッケルテープの選定です。例えば厚さ0.1mm×幅5mmの純ニッケルでは最適電流は約2.1A未満とされます。現代のスマートフォンでは急速充電時にこれを超える電流が流れる場合があります。
厚さ0.15mm×幅7mmであれば約4.7Aまで許容できるとする技術ガイドもありますが、コスト削減のために薄いテープが使われる例も報告されています。
問題は、これらの工程が工場の品質管理環境ではなく、小規模な修理現場で行われるケースがあることです。工場ではX線検査や断面解析で溶接品質を確認しますが、一般的な修理店でそこまでの検査体制を持つ例は多くありません。
つまり、交換直後は正常に動いていても、振動や経年劣化によって溶接部が疲労破断し、ある日突然ショートする可能性があります。
「警告が出ない」ことと「物理的に安全」であることは別問題です。スポット溶接とニッケルテープという目に見えない部分こそ、修理の質を左右する最大の落とし穴なのです。
Android 16・iOS 18はどう変わった?OSによるバッテリー管理の最新事情
スマホの安全性はハードだけでなく、OSによるバッテリー管理にも大きく左右されます。2025年以降に普及が進んだAndroid 16とiOS 18は、どちらも「安全」と「修理の自由」のバランスを意識したアップデートが行われました。
ライトユーザーにとって重要なのは、見えないところで何が制御されているのかを知ることです。ここでは両OSの違いを整理します。
| 項目 | Android 16 | iOS 18 |
|---|---|---|
| 修理時の配慮 | リペアモードを標準搭載 | 一部制限を緩和 |
| バッテリー情報表示 | API制限を強化 | 最大容量表示は継続 |
| 非純正部品への対応 | 機種ごとに性能制御あり | 警告表示は残存 |
Android 16では、Google公式サポートが案内している通り「リペアモード」が標準機能として実装されました。端末を初期化せずに修理に出せるため、データ保護の面では前進です。
一方で、Android 14以降強化されてきたバッテリー情報APIの制限は、16でも継続しています。MakeUseOfなどの検証記事が指摘するように、サードパーティ製アプリが取得できる劣化データは限定的になりました。
これはセキュリティ向上というメリットがある反面、互換バッテリーの品質をユーザー自身が検証しにくいという側面もあります。
さらにGoogleは、Pixel 6aなど一部機種に対して、充電サイクルが進んだ端末の充電速度や容量をソフトウェアで制御するアップデートを実施しました。公式ヘルプでも案内されている通り、安全対策が目的です。
しかし利用者から見ると「急に持ちが悪くなった」と感じることもあり、バッテリー交換の判断を難しくしています。
対するiOS 18.1では、非純正バッテリー使用時でも最大容量表示が利用できるよう仕様が緩和されました。従来は完全に無効化されていたため、これは実質的な改善です。
ただし設定画面には「純正部品であると確認できない」という警告が表示され続けます。この表示は中古価格にも影響するため、BMS移植のような高度な加工を選ぶ動機が残る構造です。
Androidは情報アクセスを制限して安全性を担保する方向、iOSは表示を残しつつ機能を一部開放する方向と整理できます。
どちらも安全対策を強めていますが、その影響はユーザー体験や修理市場にも波及します。OSのアップデート後にバッテリー挙動が変わる場合、単なる劣化だけでなくソフトウェア制御の可能性も視野に入れることが、2026年の新常識と言えます。
日本と海外の法規制はどこまで進んだ?修理する権利とパーツペアリング問題
スマートフォンの修理をめぐる法規制は、ここ数年で大きく動きました。キーワードは「修理する権利」と「パーツペアリング」です。
メーカーが部品と本体をデジタル的にひも付け、非純正部品を使うと警告を出す仕組みが広がる中、各国の規制当局が本格的に介入を始めています。
象徴的なのが、2024年に米国オレゴン州で成立した改正「修理する権利」法です。報道によれば、この法律はメーカーによるパーツペアリングを明確に禁止し、非純正部品の使用を理由に機能制限や誤解を招く警告表示を行うことを認めない内容になっています。
州法ではありますが、グローバル企業が地域ごとに仕様を変えるのは現実的ではありません。そのため、事実上、世界全体の製品設計やOS仕様に影響を与えると見られています。
実際、iOS 18.1では、非純正バッテリー装着時でも最大容量表示など一部機能が使えるように変更されました。警告表示自体は残るものの、機能の全面停止は緩和されています。
| 地域 | 主な動き | パーツペアリングへの姿勢 |
|---|---|---|
| 米国(オレゴン州) | 修理する権利法を改正 | 機能制限や警告による実質的排除を禁止 |
| 日本 | スマホソフトウェア競争促進法が成立 | OS事業者の不当な制限行為を監視対象に |
日本でも2024年に「スマートフォンソフトウェア競争促進法」が成立しました。公正取引委員会の資料によれば、OS事業者による市場支配的な行為を是正することが目的とされています。
この法律は主にアプリストアや決済を想定していますが、セキュリティを理由にハードウェア機能を不当に制限する行為も、独占禁止法上の問題になり得ると議論されています。
つまり、非純正バッテリーだからという理由だけで著しく性能を落とす、あるいは過度な警告で利用を妨げる行為は、今後より厳しく見られる可能性があるということです。
ただし注意したいのは、法規制が進んだからといって、すぐに安全性の問題が解決するわけではない点です。消費者庁やNITEが注意喚起している通り、非純正バッテリーによる火災事故は現実に発生しています。
メーカー側は「安全確保」を理由にペアリングを主張し、規制当局は「競争と選択肢の確保」を求める。この綱引きの中で、仕様変更や表示緩和が段階的に進んでいるのが2026年現在の姿です。
ガジェットのライトユーザーにとって大切なのは、法改正=何を使っても安全、ではないという理解です。修理の選択肢は広がりつつありますが、最終的にリスクを負うのは端末を使う自分自身です。
これから数年は、技術と法規制のバランスが再設計される過渡期が続きます。表示の有無だけで判断せず、安全性・保証・価格を総合的に見て選ぶ視点が、これまで以上に重要になっています。
PSEマークだけでは不十分?粗悪品を見抜くチェックポイント
PSEマークが付いていれば安心、と思っていませんか。確かに日本国内で販売されるリチウムイオンバッテリーは電気用品安全法の対象で、PSE表示は必須です。
しかしPSEマークは「最低限の法的要件を満たしている」ことを示すものであり、品質の優劣まで保証するものではありません。とくに互換バッテリー市場が拡大する中で、見た目だけでは判断できない製品も増えています。
消費者庁やNITEが「低価格・高リスク」の非純正品に注意喚起している背景には、マークの有無だけでは防げない事故が実際に起きている現実があります。
| チェック項目 | 見るポイント | 注意サイン |
|---|---|---|
| PSE表示 | マーク近くに輸入事業者名の記載 | 事業者名・連絡先の記載がない |
| 価格 | 相場とかけ離れていないか | 「大容量」で極端に安い |
| 外観 | 印字の鮮明さ・パッケージ品質 | フォントのズレ・誤字 |
| 販売元 | 国内拠点・保証の明示 | 販売者情報が曖昧 |
まず確認したいのは、PSEマークの近くに輸入事業者名や会社情報が明記されているかです。エレコムの解説でも触れられている通り、事業者名の表示は義務です。ここが曖昧な製品は、万一事故が起きても追跡や補償が困難になります。
次に価格です。「純正同等」「容量アップ」とうたいながら、相場より極端に安い製品には注意が必要です。NITEの事故分析では、非純正バッテリー235件のうち約96%が火災に発展しています。安さの裏で、セパレータや安全弁といった内部部品の品質が削られている可能性があります。
さらに、外観も重要なヒントになります。印字のフォントが不自然、スペルミスがある、パッケージが簡素すぎるといった点は、製造管理の甘さを示唆します。
レビュー評価だけで判断するのも危険です。短期間に集中した高評価や、日本語が不自然なコメントは要注意です。販売元の所在地や問い合わせ先が実在するかも確認しておきたいポイントです。
ライトユーザーこそ、難しい技術よりも「表示の整合性」「価格の妥当性」「販売元の透明性」という3点に絞って見るのが効果的です。
PSEマークはスタートラインにすぎません。その先を見抜けるかどうかが、粗悪品を避ける最大の分かれ道になります。
修理前に必ず確認したい3つの質問と、安全を優先する選択肢
バッテリー交換や修理を考えたとき、価格やスピードだけで決めていませんか。
実はその前に、自分自身に投げかけてほしい「3つの質問」があります。
安全を最優先にするためのチェックポイントとして、ぜひ確認してください。
修理前に確認したい3つの質問
| 質問 | 考えるべきポイント |
|---|---|
| ① なぜ交換するのか? | 本当に劣化か、ソフト制御の影響か |
| ② どんな部品を使うのか? | PSE・BMS移植の有無 |
| ③ 警告表示をどう考えるか? | 見た目か安全性か |
①「本当に今、交換が必要ですか?」
Googleが一部Pixelで行ったように、バッテリーの劣化対策としてソフトウェアで性能を抑えるケースもあります。
動作が遅く感じても、必ずしも即交換が必要とは限りません。
②「どんな方法で交換しますか?」
消費者庁とNITEは、非純正バッテリーによる火災事故が多数発生していると注意喚起しています。
特にBMS移植の有無は重要です。警告を消すために基板を移植する作業は、高度な溶接技術を伴い、施工品質に強く依存します。
NASAの技術報告でも、バッテリー端子のスポット溶接品質は熱暴走リスクに直結すると指摘されています。
工場レベルではX線検査まで行う領域を、簡易設備で再現している点は理解しておくべきです。
見た目が「純正表示」でも、中身の安全性とは別問題です。
③「警告が出ることを許容できますか?」
iOS 18以降は、警告表示が出ても基本的なバッテリー情報は表示されます。
警告が出る=危険、ではありません。 むしろ無理な加工を避けられる場合もあります。
さらに忘れてはいけないのがPSE表示です。経済産業省の制度上、日本で販売されるリチウムイオンバッテリーはPSE対象です。
マークだけでなく、輸入事業者名の記載があるか確認してください。
事故時の補償や責任の所在が明確かどうかは大きな違いになります。
東京消防庁のデータでは、リチウムイオン電池関連火災は増加傾向にあり、モバイル機器由来の事故も少なくありません。
安さやリセール価値よりも、発火リスクを下げる選択が長期的には最も合理的です。
「いくら安いか」ではなく「どこまで安全か」を基準に、冷静に判断してください。
参考文献
- 消費者庁:リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう
- 消費者庁:「低価格・高リスク」の非純正バッテリーに注意~建物が全焼に~
- Google Pixel Phone Help:Pixel 6a Battery Performance Program
- 公正取引委員会:スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律の概要
- GIGAZINE:メーカーによる部品のペアリングを禁止して「修理する権利」を補強する法律にオレゴン州知事が署名
- NASA Technical Reports Server (NTRS):Metallography of Battery Resistance Spot Welds
- エレコム:モバイルバッテリーのPSEとは?安全マーク・安全基準をわかりやすく解説
