IntelはMWC 2025で、ビジネス向けノートPCに最適化された「Arrow Lake」プラットフォームを正式に発表した。これにより、HP ZBook、Lenovo ThinkPad Pシリーズ、Dell Precisionといったモバイルワークステーション市場に大きな変化が訪れる見込みだ。
新プラットフォームには「Arrow Lake HX」チップが含まれ、従来のRaptor Lake Refreshから刷新されたアーキテクチャを採用。AI処理を強化する統合NPUや、高速データ転送を可能にする「Thunderbolt 5」など最新技術を搭載する。また、法人向けには「vPro」バージョンが提供され、管理性とセキュリティ機能も強化される。
一方で、ワークステーション向けNvidia RTX GPUの発表が遅れており、新型ノートPCの市場投入時期には不確定要素が残る。ただし、最新のプロフェッショナル向けGPUは初夏までには登場する可能性が高く、それと同時期に新世代のモバイルワークステーションも続々と投入されると予想される。
Intel Arrow Lakeがもたらすパフォーマンス向上と新技術

Intelの新プラットフォーム「Arrow Lake」は、Raptor Lake Refreshに代わる新たなモバイルワークステーション向けCPUとして登場した。特に「Arrow Lake HX」は、従来モデルよりも高い処理能力を持つだけでなく、新技術の採用によって利便性も向上している。
このプラットフォームの大きな特徴の一つが、統合NPU(ニューラルプロセッシングユニット)の搭載だ。これにより、AIを活用した処理がCPUレベルで強化され、画像認識や動画編集、3Dレンダリングといった作業の最適化が期待される。また、高速データ転送を可能にする「Thunderbolt 5」にも対応しており、大容量ファイルのやり取りがよりスムーズになる。
一方、Intelの「vPro」バージョンも引き続き提供されるため、企業向けのセキュリティと管理機能も強化されることになる。これらの改良によって、クリエイティブ業務やエンジニアリング用途での作業効率が大幅に向上すると考えられるが、GPUとの組み合わせによっては、さらなる性能の飛躍が期待される。
Nvidia RTX GPUの登場遅れが影響する市場の動向
「Arrow Lake」の登場でCPU性能の進化は明らかになったが、モバイルワークステーション全体のアップグレードには、Nvidia RTX GPUの刷新も不可欠だ。現時点でNvidiaはゲーミング向け「Blackwell」アーキテクチャのRTX GPUを発表しているが、ワークステーション向けのプロフェッショナル版はまだ発表されていない。
この影響を最も受けるのは、CAD(コンピュータ支援設計)や3Dモデリング、動画制作といったGPU依存度の高いユーザー層だ。新世代のGPUが登場しない限り、ハードウェア全体の最適化が進まず、CPU性能の向上が十分に活かされない可能性がある。また、RTXシリーズの新モデルが発表されたとしても、その供給状況や市場価格がユーザーの購入判断に影響を及ぼす点も見逃せない。
ただし、Nvidiaの新型GPUは遅くとも初夏までには発表されると予測されており、それと同時期に新しいモバイルワークステーションが続々と市場に投入される可能性が高い。Arrow Lakeと最新のRTX GPUの組み合わせが実現すれば、パフォーマンスの大幅な向上が期待されるだけでなく、プロフェッショナル向けノートPC市場全体の競争がより活発になるだろう。
モバイルワークステーション市場はどこへ向かうのか
Intelの「Arrow Lake」と今後発表が予想されるNvidiaの新GPUは、モバイルワークステーション市場の方向性を大きく変える可能性がある。近年、ノートPCのハードウェアはAI活用を強く意識した設計が進んでおり、特にNPUの搭載はその象徴的な進化といえる。AIを利用した自動最適化や高速演算が普及すれば、従来の作業効率が劇的に向上することになる。
また、「Thunderbolt 5」のような新技術の採用が進めば、大容量データを扱うプロフェッショナルにとって、外部デバイスとの連携やクラウドとのデータ転送が一層快適になるだろう。これにより、リモートワーク環境での業務効率も向上し、モバイルワークステーションの役割がさらに拡大すると考えられる。
とはいえ、最新技術の導入はコスト面の課題も生む。特に企業向けモデルでは、新技術の搭載が価格にどのように反映されるかが重要なポイントとなる。ユーザーにとっては、性能向上とコストのバランスがどのように取られるのか、今後の各メーカーの戦略に注目が集まるところだ。
Source:NotebookCheck