Appleが独自のC1モデムを発表した直後、QualcommはMWC 2025で新型X85 5Gモデムを発表した。X85は、最大12.5Gbpsのダウンロード速度と3.7Gbpsのアップロード速度を実現し、前世代のX80から性能を向上させた。

このモデムは、AI駆動型5G接続プラットフォームの第4世代として、AI推論速度を30%向上させ、通信の遅延を減少させる。さらに、「3CC + 1CC Turbo DSDA」により、2つのネットワークに同時接続できるため、個人用と仕事用の通信を分けることが可能だ。

Qualcomm X85モデムが実現する通信性能の進化

Qualcommが発表したX85 5Gモデムは、前世代のX80と比較してさらなる高速化を遂げている。ダウンロード速度は最大12.5Gbps、アップロード速度は3.7Gbpsに達し、モバイルネットワーク環境でのデータ通信のスムーズさが格段に向上する。この速度は、特に高画質な動画ストリーミングやクラウドゲームの利用において恩恵をもたらす。

X85は、Qualcommが8世代目の統合型5GモデムRFとして開発したものであり、4世代目となるAI駆動型5G接続プラットフォームを採用している。専用のテンソルアクセラレーターを備えたAIプロセッサにより、AI推論速度が30%向上し、レイテンシーの低減、より広範なカバレッジ、電力効率の最適化が実現している。

さらに、X85は5Gミリ波（mmWave）とサブ6GHzの両方に対応し、ネットワーク環境に応じて最適な通信を可能にする。特に、サブ6GHz帯域で400MHzの帯域幅を統合し、1024 QAM技術を活用することで、混雑したネットワーク環境でも安定した通信が可能となる。これにより、都市部や大規模イベントなどでの通信品質の向上が期待される。

2つのネットワークを同時利用可能な「3CC + 1CC Turbo DSDA」の実力

X85モデムには、「3CC + 1CC Turbo DSDA」というデュアルSIM・デュアルアクティブ技術が搭載されている。これにより、ユーザーは2つの異なるネットワークに同時接続し、個人用と仕事用の通信をスムーズに使い分けることが可能となる。これまでのデュアルSIM機能では、1つの回線がアクティブになるともう一方は待機状態になることが多かったが、X85では両方の回線が常にアクティブな状態を維持できる。

この機能は、特にビジネス用途や海外渡航時において大きなメリットをもたらす。例えば、海外旅行時に現地のSIMを使用しつつ、日本のSIMもそのまま維持できるため、通話やメッセージの受信を途切れさせることなく利用できる。また、異なる通信キャリアの回線を組み合わせることで、エリアごとの電波状況に応じた最適な接続を選択することも可能となる。

さらに、この技術はゲームやストリーミングサービスを利用する際にも有効だ。片方の回線でゲームの通信を維持しつつ、もう片方で通話を行うといった使い方が可能になり、従来のデュアルSIM環境よりもストレスのない通信体験を提供する。X85の高度なネットワーク管理機能は、今後の5G時代において新たな標準となる可能性がある。

Android向けのX85 だがAppleが採用する可能性も

今回のX85モデムは、Android端末向けに設計されているが、Appleが将来的に採用する可能性もある。現在、Appleは独自のC1モデムを開発し、iPhone 16eなどに搭載する予定だが、その性能はQualcommのモデムには及ばないとされている。特に通信速度の面では、X85の方が優位に立っており、Appleがハイエンドモデル向けにQualcomm製モデムを継続使用する選択肢を排除していない。

Appleは現在もQualcommのモデムを使用しており、完全な自社開発モデムへの移行には時間がかかると見られている。特に、C1モデムは標準モデルや低価格モデル向けに限定される可能性があり、ハイエンドiPhoneには今後もQualcomm製のモデムが採用される可能性が高い。

また、X85モデムはスマートフォンだけでなく、PCやミックスドリアリティ（MR）デバイス、自動車向けにも展開される予定だ。Appleのエコシステムとの互換性を考えれば、今後Appleが独自モデムと並行してQualcomm製チップを活用する可能性も十分にあり得る。X85の普及が進めば、Appleの選択肢にも影響を与えることになりそうだ。

Source：Wccftech