サムスンが最新の第10世代V-NANDフラッシュメモリを発表した。この新技術は400層以上のアクティブレイヤーを備え、5.6 GT/sという高速インターフェースを実現している。従来の設計から大きく進化し、周辺回路を別のウェハに製造してハイブリッドボンディングで結合する新たなアーキテクチャを採用。
この革新的な設計により、単なる密度向上ではなく、転送速度の大幅な向上が期待される。次世代SSDのパフォーマンス向上やストレージの大容量化に貢献する可能性が高いが、市場投入時期は未定。今後の展開が注目される。
400層超えのV-NANDがもたらす性能向上とその技術的革新

サムスンの第10世代V-NANDは、400層以上のアクティブレイヤーを持ち、従来のNANDフラッシュ技術を大幅に進化させた。5.6 GT/sの高速インターフェースを採用し、1つのNANDデバイスあたり最大700MB/sの転送速度を実現する。この進化は、次世代SSDにおいて大幅なスピードアップをもたらし、特にPCIe 5.0やPCIe 6.0対応のストレージの実用化を加速させる可能性がある。
また、新たなアーキテクチャとして、セル・オン・ペリフェラル(CoP)構造とハイブリッドボンディング技術を導入。この技術により、周辺回路を別のウェハに配置し、3D NANDメモリアレイと直接結合する方式を採用した。
この方式は、KioxiaやYMTCなどのメーカーも開発を進めているが、サムスンがV-NANDに適用するのは初めてとなる。これにより、密度の向上だけでなく、消費電力や信号遅延の削減といったメリットも期待される。
この第10世代V-NANDの登場は、NANDフラッシュ技術の限界を押し広げる重要な一歩となる。今後、サムスンがこの技術をどのように量産化し、どのタイミングで市場に投入するのかが注目されるポイントとなる。
次世代SSDのストレージ容量と速度はどこまで進化するのか
第10世代V-NANDの採用により、今後のSSDはさらなる大容量化が可能となる。1ダイあたり1Tbの容量を持つため、16ダイを搭載したNANDパッケージでは最大2TBのストレージを提供できる。これを4パッケージ搭載すれば、M.2 2280規格のシングルサイドSSDで最大8TB、デュアルサイドであれば16TBの容量に到達する計算だ。
ただし、サムスンは近年デュアルサイドSSDを市場に投入していないため、主流はシングルサイドの大容量化になると考えられる。また、5.6 GT/sのインターフェース速度を活用することで、SSDの転送速度は大幅に向上する可能性がある。
例えば、10個のNANDチップを搭載すればPCIe 4.0の帯域を最大限に活かし、20個のチップであればPCIe 5.0をフル活用できる。さらに、32ダイを使用すればPCIe 6.0の理論限界に迫る性能が期待される。このように、V-NANDの進化は、PCIe規格の進歩と密接に関係しながらストレージ性能を押し上げていくことになる。
ただし、実際の製品化においては、熱問題や電力消費の増加といった課題も考慮しなければならない。特に超高速化するSSDは放熱対策が必須となるため、サムスンがどのような冷却技術を組み合わせて製品化するのかが重要なポイントとなる。
市場投入のタイミングと今後の課題
サムスンの第10世代V-NANDは、2025年の国際固体回路会議(ISSCC)で発表されたばかりであり、実際の製品として市場に投入される時期はまだ明らかになっていない。しかし、近年のNANDフラッシュの開発スピードを考えると、次世代SSDやUFSモジュールへの搭載は早ければ2025年末から2026年にかけて進む可能性がある。
一方で、サムスンがこの新技術をどのラインナップに最初に適用するのかも注目すべき点だ。一般消費者向けのSSDにいち早く採用するのか、それともデータセンター向けのエンタープライズSSDを優先するのかによって、市場への影響は異なる。
過去の傾向を見ると、新世代のNAND技術はまず高付加価値なデータセンター向けストレージで採用され、その後コンシューマー向けに展開されることが多い。この流れが今回も続くのか、それとも新たな戦略を打ち出すのかが注目される。
さらに、大容量化が進むことで、価格競争や耐久性の課題も浮上する可能性がある。特に3D NANDは積層数が増えるほど製造難易度が上がるため、歩留まりや生産コストが影響する。サムスンが第10世代V-NANDの量産をどこまで効率化できるかが、普及のカギを握ることになるだろう。
Source:Tom’s Hardware