AMDの最新フラッグシップCPU「Ryzen 9 9950X3D」が、Cinebench R23や3DMarkのベンチマークテストで評価され、そのパフォーマンスが通常の9950Xとほぼ同等であることが明らかになった。3D V-Cacheを搭載することでゲーム性能の向上が期待されたが、すべての用途で絶対的な優位性を持つわけではないことが示唆されている。

ブルガリアのハードウェア販売業者「PCBuild」が公開したベンチマーク結果によると、Ryzen 9 9950X3DはCinebenchにおいてマルチコアスコア42,413ポイント、シングルコアスコア2,279ポイントを記録。これは3D V-Cache非搭載のRyzen 9 9950Xとほぼ同等の数値であり、特定の用途での性能向上が限定的であることを示している。

加えて、3DMarkのスコアも16,593と、標準モデルの9950X(16,856)と大差がなかった。この結果から、9950X3Dの3D V-Cacheが万能な解決策ではないことがわかる。特にCinebenchのようなCPUベースのレンダリングソフトでは、キャッシュの追加が劇的な性能向上をもたらすわけではなく、通常の9950Xと比較しても明確な差は確認できない。

一方で、動作クロックはシングルコア時に最大5.7GHz、マルチコア時に4.9GHzを記録しており、冷却環境や負荷状況によってパフォーマンスが変動する可能性がある。

3D V-Cacheの恩恵を受ける場面と影響を受けにくいアプリケーション

Ryzen 9 9950X3Dは、AMDが誇る3D V-Cache技術を搭載し、ゲーム性能の向上を狙ったモデルである。しかし、今回のCinebenchの結果からも明らかなように、すべての用途でキャッシュの増強が劇的な性能向上につながるわけではない。

特にレンダリングや計算処理のようなワークロードでは、標準のRyzen 9 9950Xとほぼ同等のスコアを記録しており、3D V-Cacheが直接的なメリットをもたらしていない。一方で、ゲーム用途では異なる可能性がある。従来のRyzen 7 5800X3DやRyzen 9 7950X3Dの事例からも分かるように、キャッシュを活かせる場面ではフレームレートが大幅に向上することがあった。

特に、CPU負荷の高いタイトルや、メモリアクセスの影響を受けやすいゲームでは、3D V-Cacheの存在が大きく貢献する可能性がある。ただし、その効果はゲームごとに異なり、すべてのタイトルで均等に恩恵を受けられるわけではない。

また、動画編集や圧縮処理、AI推論などの用途では、キャッシュの影響は限定的であり、コア数やクロックの高さがより重要となる。実際にCinebenchのスコアが示すように、これらの用途では標準の9950Xと同程度のパフォーマンスにとどまっており、キャッシュの追加だけでは性能向上を実感しにくい。

つまり、3D V-Cacheが最大の強みを発揮するのは、特定のゲームタイトルやワークロードに限られる可能性がある。

9950X3Dの動作クロックと冷却環境がもたらす影響

Ryzen 9 9950X3Dの動作クロックは、シングルコア時に最大5.7GHz、マルチコア時に4.9GHzを記録しており、Zen 5アーキテクチャを採用することで高いパフォーマンスを発揮する。しかし、冷却環境によってはブーストクロックが安定しない可能性もある。

特に3D V-Cache搭載モデルは発熱が増加しやすい傾向にあり、適切な冷却が施されない場合、性能が制限されるケースも考えられる。例えば、前世代のRyzen 9 7950X3Dでは、熱管理の影響を受けやすく、特定のシナリオではブーストクロックが思うように上がらないことがあった。

今回のテスト結果でも、9950X3Dが最大クロックを安定して維持できるかどうかは明確ではなく、冷却性能によっては同等スペックの9950Xと比べて期待した性能を発揮できない可能性がある。また、動作クロックの変動はアプリケーションの種類にも依存する。

シングルスレッド性能が重要な用途では高いブーストクロックが活きるが、マルチスレッド性能を重視する場面では発熱によるサーマルスロットリングの影響を受けやすい。つまり、最大性能を引き出すためには、適切なクーラーの選定が重要であり、標準のエアクーラーではなく高性能な水冷クーラーを導入することで、安定した動作が期待できる。

Ryzen 9 9950X3Dは「万能」か、それとも用途を選ぶモデルか

今回のベンチマーク結果から見えてくるのは、Ryzen 9 9950X3Dが「万能なチップ」というよりも、「特定の用途に最適化されたモデル」であるという点だ。標準の9950Xとほぼ同等のスコアを記録していることから、あらゆる作業で圧倒的な差をつけるわけではなく、ゲームや特定のキャッシュ依存型アプリケーションに最適化された製品と捉えるのが適切だろう。

価格面でも考慮すべきポイントがある。9950X3Dの予想価格は約699ドルであり、これは通常の9950Xよりも高価な設定となる。もし主にゲームをプレイするユーザーであれば、3D V-Cacheの恩恵を受ける可能性は高いが、クリエイティブワークや生産性向上のためにCPUを選ぶのであれば、9950Xの方がコストパフォーマンスは優れているかもしれない。

また、Ryzen 9 9900X3Dという下位モデルも控えており、もし3D V-Cacheの恩恵を受けたいが、価格を抑えたい場合には9900X3Dの選択肢も魅力的だ。発売日は3月12日となっており、実際のユーザーによる評価がどのような結論を出すのか、今後のレビューに注目が集まる。

Source:Club386