NVIDIAは、転売業者による買い占めを防ぐため、「Verified Priority Access」プログラムを再導入した。この制度により、実際のゲーマーやクリエイターが、RTX 5090およびRTX 5080のFounders Editionを優先的に購入できる。ただし、対象は米国限定で、NVIDIAアカウントを2025年1月30日以前に作成していることが条件となる。
これにより、新規アカウントを利用した転売目的の購入を防ぐ狙いがある。過去の優先アクセスプログラムと異なり、GeForce Experienceのインストール要件は撤廃されたが、依然としてアカウント登録は必須となる。今後、他国での展開や、転売防止策としての有効性が注目される。
NVIDIAが転売対策を強化する背景とRTX 5090・5080の市場動向
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NVIDIAが「Verified Priority Access」プログラムを復活させた背景には、近年のGPU市場における深刻な転売問題がある。特に、RTX 3000シリーズやRTX 4000シリーズの発売時には、転売業者が在庫を買い占め、市場価格が大幅に高騰する事態が発生した。例えば、RTX 3080は発売直後に正規価格の2倍以上で取引され、RTX 4090も一時的に供給不足が続いた。
このような状況の中、正規の購入者が入手困難になることが大きな問題視されてきた。NVIDIAは過去にも優先アクセスプログラムを導入してきたが、効果が限定的だったという指摘もある。今回のRTX 5090・5080向けプログラムでは、購入者のNVIDIAアカウントの登録時期を条件にすることで、新規アカウントを用いた転売を防ぐ仕組みを導入している。
この手法は、特に過去のGeForce製品ユーザーを優遇する形となっており、転売防止策として一定の効果が期待される。一方で、今回の優先アクセスプログラムは米国限定であり、日本を含む他国のユーザーには適用されない。
この点については、今後の展開が注目される。特に、日本国内でも転売問題は深刻であり、公式ストアの在庫が即座に消えるケースが頻発している。NVIDIAが他国でも同様のプログラムを展開するかどうかは、今後の市場状況次第と言えるだろう。
Founders Edition限定の理由とサードパーティ製GPUへの影響
今回の「Verified Priority Access」プログラムでは、対象製品がNVIDIAのFounders Editionに限定されている。これは、NVIDIAが直接販売するモデルであり、サードパーティのカスタムモデルは対象外となっている。これにはいくつかの理由が考えられる。
まず、Founders EditionはNVIDIA自身が供給管理できるため、転売対策のコントロールがしやすい点が挙げられる。過去のRTX 3000・4000シリーズでは、ASUSやMSI、GIGABYTEといったメーカーが独自のカスタムモデルを提供し、それぞれの販売チャネルを通じて流通した。しかし、これらのモデルはNVIDIAの直接管理外となるため、転売防止策を統一するのが難しくなる。
また、Founders Editionは基本的にリファレンスデザインに基づいており、価格も比較的安定している。一方で、サードパーティ製モデルは独自の冷却システムやオーバークロック機能を搭載することが多く、市場価格が変動しやすい。そのため、今回の優先アクセスプログラムがFounders Editionに限定されているのは、価格の安定化と転売対策の観点から合理的な判断と言える。
ただし、サードパーティ製のモデルを求めるユーザーにとっては、この制約がデメリットとなる可能性がある。特に、オーバークロック性能を重視するユーザーや、水冷クーリングモデルを求める層にとっては、NVIDIAのFounders Editionでは選択肢が限られてしまう。今後、サードパーティ製モデルの販売方法にも同様の優先アクセス制度が導入されるかどうかが注目される。
NVIDIAの転売対策は成功するのか 今後の課題と期待
今回の「Verified Priority Access」プログラムは、転売業者の排除を目的とした施策だが、その効果についてはまだ未知数な部分が多い。過去にも類似の対策が取られたものの、転売を完全に防ぐことはできなかったからだ。
一つの課題として、対象が米国限定である点が挙げられる。RTX 5090・5080の需要は世界中に存在し、日本や欧州でも発売直後に在庫が枯渇する可能性が高い。もし米国のみで優先アクセスプログラムを実施し、他の地域では通常販売とする場合、結局のところ海外からの転売が横行する可能性がある。
また、NVIDIAアカウントを利用した認証システムも、転売業者が過去のアカウントを使って回避する手法を見つける可能性は否定できない。一方で、NVIDIAが直接販売するFounders Editionに限定することで、少なくとも公式チャネルでの転売リスクは低減できると考えられる。また、過去のアカウントを条件にすることで、短期的な新規転売業者の参入を防ぐ効果も期待できる。
今後の焦点は、このプログラムがどの程度の効果を発揮し、他国にも展開されるかどうかにある。仮に米国で一定の成功を収めた場合、日本を含む他国での実施も現実味を帯びてくるだろう。転売問題は長年にわたり続いているが、今回の取り組みが一つの解決策となるか、今後の市場動向を注視する必要がある。
Source:TweakTown