台湾の半導体メーカーMediaTekが、新たなモバイル向けチップセット「Dimensity 6400」を発表した。このチップは、6nmプロセスを採用し、2.5GHzのCortex-A76コアを2基搭載するなど、前モデルのDimensity 6300からわずかながらスペックが向上している。
Samsungは通常、ミッドレンジモデルにExynosまたはQualcomm製チップを採用する傾向があるが、一部市場ではMediaTek製チップを採用するケースもある。最近では「Galaxy A16」がDimensity 6300を搭載した例があり、次期「Galaxy A17 5G」に新たなDimensity 6400が採用される可能性が浮上している。
現時点では、Samsungのどのモデルにこの新チップが搭載されるかは不明だが、最初に採用されるスマートフォンとしてRealme P3xの名前が挙がっている。Dimensity 6400がどのようなパフォーマンスを見せるのか、今後の展開に注目が集まる。
Dimensity 6400はどの程度の進化を遂げたのか
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MediaTekが発表したDimensity 6400は、前モデルのDimensity 6300と比較すると、CPUのクロック速度が2.4GHzから2.5GHzにわずかに引き上げられている。しかし、それ以外の仕様はほぼ同じで、6nmプロセスやCPU構成(2× Cortex-A76 + 6× Cortex-A55)、対応ストレージ(UFS 2.2)、ディスプレイ解像度(FHD+)、カメラ対応(最大108MP)などの主要スペックは変更がない。
このようにスペック上の違いが極めて小さいことから、実際の使用感において体感できるほどの性能向上があるかは疑問が残る。ミッドレンジ向けのスマートフォンで最も影響を受けるのは、ゲームや高負荷な処理時の安定性だが、クロック速度の0.1GHzの向上だけでは、劇的な変化を期待するのは難しい。一方で、6nmプロセスを維持しているため、電力効率の面では一定のバランスが取れているとも言える。
また、MediaTekはDimensityシリーズのチップセットにおいて、AI処理の最適化や5G通信の強化を進めてきた。しかし、今回のDimensity 6400には、明確なAIエンジンの強化や5Gモデムの改善といった情報が見当たらず、実際のパフォーマンスの向上はごく限られた範囲に留まる可能性がある。
Samsungのミッドレンジモデルに採用される可能性
Samsungは、ミッドレンジのスマートフォン市場において、自社製のExynosチップセットを採用する傾向があるが、一部のモデルではMediaTekのSoCを選択するケースも見られる。特に、エントリーモデルや市場別の展開を考慮した製品において、MediaTek製チップセットが搭載されることがある。
直近では、「Galaxy A16」が市場によってExynos 1330またはDimensity 6300を採用しており、今後のモデルでも同様の傾向が続く可能性がある。そうした中で、次期「Galaxy A17 5G」にDimensity 6400が搭載されるのかが注目される。Exynos 1330は5nmプロセスを採用しているため、6nmのDimensity 6400と比較すると、製造プロセスの点では若干の違いがあるものの、CPU構成の面では大きな差はない。そのため、Samsungが地域ごとに異なるSoCを採用する可能性は十分に考えられる。
また、SamsungはハイエンドモデルではQualcommのSnapdragonシリーズを積極的に採用しているが、ミッドレンジやエントリークラスではコストパフォーマンスを重視する傾向がある。MediaTek製チップセットは価格と性能のバランスが取れており、Samsungのミッドレンジ戦略に合致しやすい点も考慮すべき要素となる。
Dimensity 6400の採用がスマートフォン市場に与える影響
Dimensity 6400の登場により、ミッドレンジ向けのスマートフォンにおける選択肢が広がることは間違いない。しかし、実際にユーザーがこのチップセットを搭載したスマートフォンを選ぶ際には、どのような影響があるのだろうか。
まず、SamsungをはじめとするスマートフォンメーカーがDimensity 6400を採用した場合、最も恩恵を受けるのはコスト面だ。MediaTekのチップセットは競合のQualcomm製品よりもコストを抑えやすく、その分、価格を抑えたスマートフォンの提供が可能になる。特に、価格帯を重視するユーザーにとって、Dimensity 6400搭載モデルが魅力的な選択肢となる可能性がある。
一方で、Dimensity 6400自体が大幅な性能向上を果たしているわけではないため、既存のDimensity 6300搭載機種と比べて、買い替えを促すほどのインパクトは薄いと考えられる。ただし、Samsungがこのチップセットを採用することで、ミッドレンジ市場におけるラインナップがより多様化し、選択肢が広がることは歓迎すべき点だ。
現時点では、Dimensity 6400がどのメーカーのどのモデルに搭載されるのか明確にはなっていないが、最初に採用が見込まれるのはRealme P3xである。Samsungがこのチップを採用するかどうかはまだ不透明だが、もし採用された場合、価格帯や性能のバランスを考慮したミッドレンジスマートフォンの選び方にも影響を与えることになりそうだ。
Source:PhoneArena