ベンチマークサイトPassMarkの最新データによれば、2025年の平均CPU性能が、デスクトップで0.5%、ノートPCで3.4%の低下を示している。これは過去20年間で初めての現象であり、従来は毎年性能の向上が見られていた。この傾向の背景には、ユーザーのニーズの変化や市場動向が影響している可能性がある。

CPUの進化が鈍化した背景とは?単なる技術停滞ではない理由

PassMarkのデータによると、2025年のCPU性能はデスクトップで0.5%、ノートPCで3.4%の平均低下を記録している。これは過去20年間で初めての現象であり、単なる技術的な停滞ではなく、市場の変化が影響している可能性がある。

まず考えられるのは、ハイエンドモデルの販売比率が低下している点だ。過去にはIntelのCore i9シリーズやAMDのRyzen Threadripperなどが市場を牽引し、大幅な性能向上を実現していた。しかし、2025年のデータを見る限り、それらの超高性能モデルが市場全体のスコアを押し上げるほどの影響力を持っていない。

これは、価格高騰や消費電力の増大によって、ユーザーがハイエンドモデルを敬遠し始めた可能性を示している。また、省電力志向のCPUの人気が上昇していることも関係している。特にノートPC市場では、性能よりもバッテリー持続時間を優先するユーザーが増えており、各メーカーもそれに応じた製品開発を行っている。

AMDのStrix PointやIntelのArrow Lakeなどの新世代チップは、従来よりも効率性を重視した設計となっている。この流れが続けば、今後のCPUベンチマークデータはますます「平均性能の停滞」という形で表れる可能性がある。

加えて、ソフトウェア側の最適化の遅れも影響している可能性がある。OSやドライバ、アプリケーションのバージョンアップに伴い、新しいCPUが本来持つ性能を最大限に発揮できていないケースも少なくない。特に、Windows 11の最新アップデートでは、特定のCPUモデルでパフォーマンス低下が報告されるなど、ハードウェアとソフトウェアの適合性が課題となっている。

ゲーマーやクリエイターにとって何が変わるのか?

CPUの性能停滞が続くことで、ゲーマーやクリエイターが体感する変化は何か。まず、大きな影響を受けるのはゲーマーだ。従来は、CPUの世代更新によってフレームレートが向上し、快適なゲーム環境が手に入るというのが通例だった。しかし、最近ではGPUの性能向上が重視される傾向が強まっており、CPUのアップグレードがもたらす恩恵は限定的になりつつある。

特に最新のRTX 50シリーズが登場する中で、多くのゲーマーは「CPUよりもGPUの買い替えが優先」と考えているようだ。実際、最新のAAAタイトルでも、CPU性能がボトルネックになるケースは減少傾向にあり、適切なGPUを選べば、数世代前のCPUでも十分なパフォーマンスを発揮できる。一方で、CPU性能が劇的に向上しないことで、ゲーミングPC市場が低迷する可能性もある。

一方、クリエイター向けのワークロードにおいても、CPU性能の停滞は一定の影響を及ぼす。動画編集や3Dレンダリングでは依然としてマルチコア性能が重要視されるが、最近の傾向として、特定の作業はGPUや専用アクセラレータが担うようになってきている。

例えば、Adobe Premiere ProやDaVinci Resolveなどのソフトウェアは、GPU処理を積極的に活用することで、CPUの負荷を軽減している。このため、従来ほどCPUの性能向上がクリエイターにとって必須ではなくなっているのも事実だ。

また、AIの活用が進むにつれ、AIアクセラレータや専用のプロセッシングユニットの重要性も増している。特にIntelは次世代CPUにAI処理専用のNPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載する計画を進めており、今後は純粋なクロック速度やコア数よりも、AI演算性能が重要な指標となる可能性が高い。

これからのCPU市場はどこへ向かうのか?

今後のCPU市場がどのように進化するかを考えると、単純な性能競争から、新たな価値提供へとシフトしていくことが予想される。これまでのCPUは、クロック速度やコア数の増加による性能向上が主軸だった。しかし、近年では電力効率やAI処理能力、統合型グラフィックの進化といった要素が重要視されつつある。

特にノートPC市場では、IntelとAMDの両社がバッテリー持続時間の改善を競っており、AppleのMシリーズチップのように、低消費電力で高いパフォーマンスを発揮する設計が求められている。IntelのArrow LakeやAMDのStrix Pointも、この流れを反映した製品になるとみられる。

また、AI統合は今後のCPU市場の大きなトレンドとなる可能性が高い。現在、多くのタスクがGPUや専用アクセラレータに依存しているが、CPU自体にAIプロセッシング機能が搭載されれば、一般ユーザーでもAIを活用した作業がスムーズに行えるようになる。

すでにQualcommやAppleは独自のAIエンジンを搭載したチップを開発しており、IntelやAMDもこの分野に本格参入することが予測される。一方で、ハイエンドCPUの需要は限定的になりつつある。特に一般ユーザー向け市場では、高性能なCPUを必要とするアプリケーションが限られており、今後はプロフェッショナル向けと一般向けで、より明確な棲み分けが進む可能性がある。

例えば、ワークステーション向けのCPUは引き続き高性能化が進む一方で、一般ユーザー向けのモデルは、消費電力やコストパフォーマンスの最適化が主眼となるだろう。

こうした変化を踏まえると、今後のCPU選びにおいては、従来の「性能重視」から「用途重視」へと考え方をシフトする必要があるかもしれない。ユーザーごとに最適なバランスを見極めることが、今後のPC選びの重要なポイントとなるだろう。

Source:NotebookCheck