Appleが新たに申請した特許により、Apple Vision Pro向けのゲームコントローラー開発が進められていることが明らかになった。この特許は「Handheld Input Devices(ハンドヘルド入力デバイス)」と題され、従来型のゲームコントローラーに類似するデザインが示されている。
2024年12月にはAppleがSonyと提携し、ハンドヘルドコントローラーを開発しているとの噂が浮上していたが、今回の特許はApple自身もコントローラーの開発を進めている可能性を示唆するものとなっている。特許の申請書では、「ゲーム」という単語の登場回数は非常に少なく、デバイスがゲーム用途専用である確証は得られない。
特許の内容からは、コントローラーが加速度計や触覚フィードバック機能を備えており、ユーザーの動きを検出する仕組みが組み込まれていることが分かる。しかし、そのデザインや機能は既存の製品と大差ない可能性があり、革新性に欠けるとの見方もある。Appleはこれまで数多くの特許を取得しているが、すべてが製品化されるわけではなく、今回の申請が実際に市場に登場するかは不透明だ。
Apple Vision Pro向けコントローラーの特許が示す設計の特徴
Appleが申請した特許「Handheld Input Devices」には、Apple Vision Pro向けの新たなハンドヘルドデバイスの詳細が記されている。この特許の中で特に注目すべき点は、慣性計測ユニット(IMU)や触覚フィードバック機能の搭載、そして視認マーカーの利用である。
IMUはデバイスの動きを高精度で追跡する技術で、加速度計やジャイロスコープを用いてスワイプや振る動作、回転といった多様な操作を認識する。また、触覚フィードバック機能(ハプティクス)は、ユーザーの手に振動や圧力を伝え、操作時の没入感を高める役割を果たす可能性がある。さらに、赤外線LEDや視認マーカーが搭載されることで、外部カメラによる追跡精度の向上が期待できる。
特許の図面にはWiiリモコンのような形状が示されており、Nintendo WiiやMeta Questのモーションコントローラーに似た設計が採用される可能性が考えられる。しかし、Appleは特許申請において製品の最終デザインを開示することはほとんどなく、この形状がそのまま製品化されるとは限らない。
ただし、Appleが過去に特許を取得しながらも製品化しなかった事例があることを考えると、このコントローラーが市場に登場するかどうかは現時点では不透明である。
Appleの特許に見るゲーム体験への影響
この特許が示す技術が実際にApple Vision Proで活用された場合、ゲーム体験にどのような変化がもたらされるのかが注目される。Apple Vision Proは空間コンピューティングを強く推進するデバイスであり、従来のコントローラーによる操作とは異なる没入感を重視している。
そのため、Appleがあえて従来型のハンドヘルドコントローラーを開発する背景には、直感的な操作性や精密な入力が求められるゲームに対応する狙いがあると考えられる。特許に記載されているランヤード(ストラップ)は、デバイスの安定性を高めるだけでなく、モーションコントロールの精度向上にも寄与する可能性がある。
さらに、スピーカーが搭載されることで、音響フィードバックによる臨場感の強化も期待される。これらの機能が組み合わさることで、ゲームプレイ中の手の動きがより直感的に伝わり、従来のコントローラーでは実現できなかった操作方法が可能になるかもしれない。
しかし、Apple Vision Proはすでにジェスチャーコントロールや視線追跡による操作を備えており、これらの技術と新しいコントローラーの使い分けが課題となる可能性もある。Appleが従来のゲームコントローラーの形状を選択した場合、既存のユーザーにとっては親しみやすいデザインではあるが、これがApple Vision Proの体験をより革新的なものにするかどうかは未知数である。
Appleのゲーム戦略におけるこの特許の位置付け
今回の特許申請は、Appleがゲーム分野での取り組みを強化していることを示唆している。Appleはこれまで、MacやiPhone、iPadでのゲーム体験を強化するためにMetal APIを進化させてきたが、Apple Vision Proにおいてもゲームを重要な要素と捉えている可能性がある。
2024年12月にはAppleがSonyと提携し、Apple Vision Pro向けのコントローラー開発を依頼しているとの噂が浮上していた。もしこの情報が正しければ、Appleが自社製コントローラーと他社製コントローラーの両方を視野に入れていることになる。
Apple Vision Proは高性能なハードウェアを搭載しているものの、専用のゲームコントローラーがなければ本格的なゲームタイトルを提供するのは難しい。したがって、この特許がAppleのゲーム市場参入の足掛かりになる可能性もある。
ただし、Appleはこれまで従来型のコントローラーではなく、タッチ操作やジェスチャーによる直感的なインターフェースを推進してきた。そのため、今回の特許が示す「従来型コントローラーの設計」は、Appleらしさを欠くとも言える。
今後の展開次第では、Apple Vision Proが独自のゲームエコシステムを構築するのか、あるいは既存のゲーム市場に寄り添う形で進化するのかが問われることになるだろう。
Source:AppleInsider