Intelの新型プロセッサ Core Ultra 7 255H「Arrow Lake-H」 が、シングルスレッド性能で驚異的なスコアを記録した。Passmarkのベンチマーク結果によると、同CPUのシングルスレッドスコアは 4631ポイント で、前世代のCore Ultra 7 155H「Meteor Lake-H」から 32%の向上 を達成している。

特に注目すべきは、AMDの Ryzen AI 9 HX 370「Strix Point」 を 約17%上回る 数値を記録した点だ。しかし、Intelが ハイパースレッディングを廃止 した影響で、マルチスレッド性能では期待を下回る結果となった。総合スコアでは、逆に Strix PointがArrow Lake-Hを約20%上回る という結果が出ている。

本ベンチマーク結果は、Intelの最新アーキテクチャ Lion Coveパフォーマンスコア と TSMCのN3Bプロセス による最適化の成果と考えられる。ただし、実際の使用環境では異なるパフォーマンスが出る可能性があり、合成テストの数値だけで判断するのは早計かもしれない。

Intel Core Ultra 7 255Hのアーキテクチャとシングルスレッド性能向上の理由

Intel Core Ultra 7 255H「Arrow Lake-H」が驚異的なシングルスレッド性能を発揮した背景には、新しいアーキテクチャと製造プロセスの進化がある。本モデルは、Lion Coveパフォーマンスコア を採用し、TSMCのN3Bプロセス による最適化が行われている。これにより、前世代のMeteor Lake-H と比較してシングルスレッド性能が32%向上 している。

Lion Coveコアは、以前のRaptor Coveコアと比較して動作効率が向上し、より高いクロック速度を実現しやすくなっている。また、N3Bプロセスはトランジスタ密度を高めつつ、消費電力を抑えることが可能となっており、電力効率と性能のバランスが強化されている。

特に、CPUのキャッシュ構造が最適化されたことで、データアクセスの遅延が削減され、シングルスレッドの処理速度が向上している点も見逃せない。ただし、Intelは本世代でハイパースレッディングを廃止 しており、これがマルチスレッド性能に影響を与えている可能性が高い。

Intelはシングルスレッド処理を強化する戦略を採っているものの、これが全ての用途に最適な方向性かは議論の余地がある。特に、動画編集や3Dレンダリングなどのマルチスレッドを活用するアプリケーションでは、競合製品との差が大きくなる可能性がある。


AMD Ryzen AI 9 HX 370との比較で見えた意外な落とし穴

今回のPassmarkベンチマークでは、Intel Core Ultra 7 255Hがシングルスレッド性能でRyzen AI 9 HX 370を約17%上回る という結果が示された。しかし、総合スコアでは逆にStrix Pointが約20%上回る という興味深い結果となっている。

この違いの大きな要因の一つが、Intelのハイパースレッディング非対応 によるマルチスレッド性能の低下だ。対するAMD Ryzen AI 9 HX 370は、Zen 5アーキテクチャを採用し、スレッド数をフルに活用できる仕様となっている。そのため、シングルスレッド性能では劣るものの、マルチスレッドでの処理能力に強みを持つ。

また、Ryzen AI 9 HX 370は、内蔵Ryzen AIエンジン による強化が施されており、AIタスクや高度な並列処理が求められる場面では、より優れたパフォーマンスを発揮する可能性がある。近年、クリエイター向けのワークフローやAIを活用したアプリケーションが増加しているため、こうした用途を重視する場合にはRyzenの方が適した選択肢となることも考えられる。

この結果は、Intel Core Ultra 7 255Hが純粋なシングルスレッド処理に特化したプロセッサである一方で、Ryzen AI 9 HX 370はバランスの取れた総合性能を重視した設計であることを示唆している。用途によって最適な選択が異なる点を考慮すると、一概にどちらが優れているとは言い切れない。


今後のIntelとAMDの動向とユーザーが注目すべきポイント

今回のIntel Core Ultra 7 255HとRyzen AI 9 HX 370の比較から、IntelとAMDの異なる戦略が浮き彫りになった。Intelはシングルスレッド特化 の設計を採用し、特にゲーミング用途やシングルコア依存のアプリケーションに適した進化を遂げた。一方で、AMDはマルチスレッド性能とAI処理能力の強化 を重視し、幅広いワークロードに対応する方針を打ち出している。

特に、今後のPC市場ではAI処理の重要性が増していくと考えられる。Ryzen AIエンジンのような専用AIユニットの搭載が主流になれば、Intelの現在のシングルスレッド重視の方針がどのように影響を受けるのかが注目される。次世代のLunar Lake では、IntelもAI処理に重点を置くとされており、競争がさらに激化することは間違いない。

また、バッテリー駆動時間や発熱など、実際の利用シナリオにおけるパフォーマンスも重要な指標となる。高性能なシングルスレッド処理が可能でも、それが発熱や消費電力の増加につながる場合、モバイルデバイスでの運用にはデメリットとなる可能性がある。そのため、今後登場するノートPCやミニPCに搭載された際の実測データにも注目すべきだろう。

今回のベンチマーク結果は、あくまで特定の合成テストにおける数値であり、実際の使用環境とは異なる可能性がある。ユーザーにとって最適な選択肢は、用途に応じたトータルのパフォーマンスを考慮することにある。IntelとAMDの次なる一手が、どのようにPC市場に影響を与えるのか、今後の動向が期待される。

Source:PassMarkNotebookCheck