サムスンが今年のスマートフォン戦略として、AI機能を前面に押し出す方針を明らかにした。2024年第4四半期の業績報告では、ハイエンドモデルの売上拡大を目指し、「よりパーソナライズされたAI体験」を強調する姿勢を示している。

しかし、同社は半導体事業で課題を抱えており、特にNVIDIAの認証を受けられないHBM3Eメモリチップの問題が響いている。この影響もあり、スマートフォン事業への依存が高まる見通しだ。

一方、折りたたみ式モデルの強化が計画されるものの、部品コストの上昇を背景に大幅なハードウェアの進化は期待しにくい。今年の新型Galaxyシリーズは、AI機能の強化が最大の特徴となりそうだ。

Galaxy AIが生み出す新たなユーザー体験とは

サムスンは今年、スマートフォンの進化をハードウェアではなくソフトウェアの強化に重点を置く方針を打ち出した。その中心となるのが「Galaxy AI」だ。同社はGoogleのAI技術「Gemini」との連携を深め、より多くの機能を提供するとしている。具体的には、サムスン独自のアプリケーションとGeminiの統合を進め、アシスタント機能の向上や翻訳、画像編集、検索の最適化などが期待される。

また、Galaxy AIの導入により、デバイスの操作性が向上すると考えられる。例えば、リアルタイム翻訳機能は旅行やビジネスシーンで活用でき、AIによるカメラ補正機能は撮影体験を大きく変える可能性がある。これにより、従来のスマートフォンと一線を画す新たなユーザー体験が生まれるかもしれない。

一方で、AI機能の充実に伴い、デバイスのバッテリー消費や処理能力への影響が懸念される。サムスンは最新のExynosチップやSnapdragonプロセッサとの組み合わせによる最適化を進めるとみられるが、実際の使用感がどうなるかは未知数だ。加えて、AI機能がクラウド依存なのか、ローカルで処理されるのかも重要なポイントになる。これらの要素がGalaxy AIの実用性を左右することになるだろう。

折りたたみスマホの進化は足踏みか Galaxy Zシリーズの行方

サムスンは、折りたたみスマートフォンの市場を牽引する立場にあるが、今年のモデルでは大幅な進化は期待しにくい。理由のひとつが、部品コストの上昇だ。同社は「主要部品のコストが増加する」と警告しており、特にハードウェアの刷新には慎重な姿勢を見せている。これにより、Galaxy Z Fold 6やGalaxy Z Flip 7は、デザインやディスプレイ、ヒンジ構造の改善はあっても、劇的な性能向上は見込めない可能性がある。

さらに、Galaxy Z Flip 7にはサムスン独自のExynos 2500チップが搭載される可能性が指摘されている。これまでGalaxy ZシリーズはQualcomm製のSnapdragonチップを採用してきたが、Exynosへの移行はユーザーの間で賛否を呼ぶだろう。Snapdragonは発熱や電力効率の面で高い評価を受けており、Exynosがこれに匹敵する性能を発揮できるかが鍵となる。

とはいえ、サムスンは引き続き折りたたみスマホ市場をリードする意向を示している。耐久性の向上や、折り目の目立たないディスプレイ技術の開発は継続されており、新しい折りたたみ機構の可能性も模索されている。今後のアップデート次第では、ユーザーにとって魅力的な選択肢となるかもしれない。

スマートフォン市場の未来 AIか、それともハードウェアの革新か

サムスンがGalaxy AIに力を入れる背景には、スマートフォン市場全体の変化がある。近年、ハードウェアの進化が鈍化し、スマートフォンの性能向上が体感しにくくなってきた。そのため、各社はAIを活用した新たな付加価値を模索している。サムスンだけでなく、AppleやGoogleもAI技術の導入を加速させており、スマートフォンの使い方そのものが変わる可能性がある。

しかし、すべてのユーザーがAIを求めているわけではない。特に、ハードウェアの進化を重視する層にとっては、カメラ性能やバッテリー技術、プロセッサの向上が優先される要素となる。もしAI機能がメインとなり、ハードウェアの進化が停滞すれば、一部のユーザーにとっては物足りないと感じるかもしれない。

今後、サムスンがどのようにAIとハードウェアのバランスを取るのかが重要になってくる。AI機能が充実しても、基本性能が伴わなければ魅力は半減する。これからのスマートフォン市場は、AIを軸にしながらも、ユーザーが求める体験をどこまで提供できるかがカギとなるだろう。

Source:SamMobile