Googleは来月、車載OS「Android Automotive」向けアプリを増やす新たな「カー対応モバイルアプリプログラム」を開始する。このプログラムは、タブレットやChromebook用に最適化された既存の大画面対応アプリを選定し、車両内での安全な使用を可能にすることを目的としている。
初期段階では動画やゲーム、ブラウザなどの特定カテゴリーが対象となり、利用可能な車種もGoogle認定のモデルに限定される。将来的にはアプリカテゴリーと対応車種のさらなる拡大が予定されており、車内エンターテインメントの新たな可能性が広がる。
車載アプリ開発の障壁とGoogleの戦略的アプローチ
車載OS「Android Automotive」向けのアプリ開発は、従来のスマートフォン用アプリとは異なり、厳格な安全基準を満たす必要がある。車内では運転者の視線や操作が制限されるため、従来のタッチ操作中心のUIは危険を伴う可能性がある。
これに対しGoogleは、既存の大画面対応アプリを「カー対応モバイルアプリプログラム」を通じて再評価し、車両環境に最適化する方針を示した。具体的には、画面上に戻るボタンを追加する「システムバックボタン」や、ドライビングモード中に特定機能を制限する仕組みを導入する。
このアプローチは、既存リソースを活用しつつ新規開発の負担を軽減するという点で効率的である。しかし、対象となるのはx86チップを使用する車両のみであり、ARMアーキテクチャのデバイスは対象外とされている点は注目に値する。これにより、車載OSのハードウェア統一を進めつつも、開発の多様性に課題を残す可能性がある。
初期対象アプリの選定基準と期待される拡大
プログラム初期段階では、動画配信アプリ、ゲーム、ブラウザが対象となる。これらのカテゴリは、主に駐車中や停車時の利用を想定しており、エンターテインメント要素を強調しているのが特徴だ。特にストリーミングサービスの「AMC+」などが例示されていることから、Googleは長距離移動や充電待機時間中の利便性向上を視野に入れていると考えられる。
一方で、従来の車載アプリ市場ではナビゲーションや音声アシスタントが主流であったため、エンタメアプリの増加は市場の需要変化を反映している。今後、対応カテゴリーが増えることで、教育系や情報提供型アプリの追加が期待されるが、Googleがどのような基準で新カテゴリを追加するかが重要なポイントとなる。
Googleはこのプログラムによって車載OSの差別化を図り、AppleのCarPlayなど競合OSとの差別化を進めているとも言えよう。
対応車種の拡大が利用者体験に与える影響
「カー対応モバイルアプリプログラム」の対象アプリは、Google認定の車種でのみ利用可能である。これにより、プログラム初期の段階では対応する車両が限られるが、Googleは将来的に新旧問わず認定車種を増やしていく計画を示している。
これにより、既存車種に対するアップデート提供や、新型車への対応が重要となる見込みである。ただし、全ての車両がアップデート可能ではないため、利用者間での体験差が生じることも考えられる。Android Authorityによる報道によれば、互換性の高い車種を増やすことで市場全体の普及を目指しているが、既存の車両オーナーにとってはハードウェア要件が高い壁となり得る。
こうした課題を解決するためには、サードパーティ開発企業や自動車メーカーとの連携が今後さらに重要となるだろう。