ラスベガスで開催されたCES 2025では、ロボットとAI技術が日常生活にどのように浸透するかを体現する数々の革新が披露された。リアルタイム会話を実現するリアルボティクスの「Aria」、個別化された旅行支援を提供するデルタ航空の「AIコンシェルジュ」、次世代車載システムを搭載するBMWの「パノラマiDrive」など、多岐にわたる分野でAI技術の進化が注目を集めた。
また、音声翻訳を可能にするHumetrixのアプリや、日常的な作業を支援するロボット掃除機「Roborock Saros Z70」など、家庭や仕事の場で役立つ製品が目立った。これらの展示は、技術がより人々の生活に密接に結びつく未来を示唆するものである。
AIコンシェルジュが変える旅行体験の未来
デルタ航空がCES 2025で発表した「Delta Concierge」は、AIを活用した次世代の旅行支援サービスである。このシステムはDelta Flyアプリに統合され、利用者ごとに個別化されたサービスを提供する仕組みだ。具体的には、リアルタイムのフライト変更情報や目的地でのアクティビティの提案、さらには緊急時の対応まで行える高度なサポートが注目を集めた。このサービスは、AI技術がもたらすパーソナライズ化の可能性を象徴するものであり、航空業界に新たな基準を提示したといえる。
ただし、全ての利用者に恩恵が均等に行き渡るわけではない点も課題である。AIの判断基準が透明性を欠く場合、優先順位の設定や対応のスピードに不平等が生じる懸念がある。一方で、利用者からのデータ収集が過剰になることでプライバシー問題が浮上する可能性も排除できない。このような課題を克服しつつ、AIコンシェルジュがどのように利用者の体験を高めていくかが、今後の鍵となるだろう。デルタ航空の取り組みは、業界全体がAIの進化をどのように活用するかを示す重要な事例といえる。
次世代ロボットが示す家庭でのAI利用の可能性
CES 2025では、家庭内でのAI活用を目指した様々なロボットが展示された。その中でもリアルボティクスの「Aria」は、生成AIを活用してリアルタイムの自然な会話を可能にし、社会的知能を備えた設計が特徴である。このようなロボットは、従来のタスク遂行型から「感情的繋がり」を重視する方向へと進化している。CNETのジェシー・オラル氏も指摘したように、Ariaの設計は単なる効率性を超えた新しい価値観を家庭内にもたらす可能性を秘めている。
一方で、このようなロボットが普及するには、技術的な課題と共に文化的な受容の壁も存在する。特に、日本のようにプライバシーを重視する社会においては、家庭内でのデータ収集に対する懸念が普及の障害となり得る。また、ロボットの導入コストも多くの家庭にとって高いハードルである。しかし、こうした課題を解決できれば、次世代ロボットは家庭生活を豊かにするパートナーとして受け入れられるだろう。CESで示された技術は、その第一歩といえる。
車載システムが切り開くモビリティの未来
BMWの新型EV「Neue Klasse」に搭載される「パノラマiDrive」は、車載システムの次なる進化を象徴する存在である。このシステムは、ドライバーと車両のインタラクションを新たなレベルへと引き上げることを目指しており、視覚的に洗練されたディスプレイとAIを活用した操作性が特徴である。CES 2025では、この技術が将来的にすべての新型車両へと展開される計画が明らかにされた。
しかし、モビリティの進化には、インフラの整備が追いつく必要がある点は見過ごせない。高度な車載システムは、より複雑な通信ネットワークやエネルギー供給システムを必要とするため、政府や企業の連携が不可欠である。また、デジタルデバイドが進化の恩恵を受ける地域を限定する可能性もある。それでも、パノラマiDriveのような技術は、モビリティの未来を切り開く重要な鍵を握っているといえる。BMWの取り組みは、その変革の一端を強く印象付けた。