System76が提供する最新ワークステーション「Thelio Astra」が注目を集めている。このマシンは128コアのAmpere Altra Max CPUを搭載し、Cinebench 2024で5,000ポイントを超えるスコアを記録。HWBotのデータによれば、これにより128コアチップとして世界記録を更新した。
価格は標準構成で3,299ドルからだが、最高仕様では25,000ドルに達する。高い計算能力に加え、1.7TFLOPSのFP64性能やBlenderでの卓越した処理性能を発揮。この性能を支えるのは、512GBのオクタチャネルRAMやデュアル25GbE NICなどのハイエンド構成だ。
一方で、Windowsでの利用時にNvidiaドライバーが未対応であることや、シングルコア性能の課題なども指摘されている。エンスージアスト向けではないが、System76はこのシステムを自動車ソフトウェア開発者向けに提案。プロトタイピングに最適な処理能力を備えており、技術革新の可能性を広げる製品といえる。
Ampere Altra Maxがもたらす128コアの新時代
Thelio Astraに搭載されたAmpere Altra Max CPUは、128コアという桁外れの構成である。これにより、並列処理が重要なワークロードで比類ないパフォーマンスを発揮する。特にCinebench 2024でのスコアは5,003ポイントに達し、HWBotデータベースに記録された他の128コアCPUを上回る結果を示した。
このスコアは、計算能力が求められるシミュレーションや動画レンダリングといった用途で大きな優位性をもたらすものである。Ampere Altra Maxの特徴は、低消費電力で高いマルチスレッド性能を実現する点にもある。FP64の計算性能が1.7TFLOPSという数値は、科学計算やデータ解析にも十分対応可能であることを示唆する。
一方で、シングルコア性能では3.0GHzという周波数が限界であるため、単一プロセスの処理では最新のx86系CPUには劣る場面がある。だが、全体としての性能バランスを見れば、Armアーキテクチャの限界を大きく押し広げた点は特筆すべきだ。
System76が目指すのは、エンスージアスト市場だけではなく、自動車産業などの特殊用途におけるプロトタイピングツールとしての利用である。この多目的性が、Thelio Astraの市場価値をさらに高めているといえる。
高性能にも課題あり Windows環境での制約とその影響
Thelio Astraの可能性を最大限引き出すにはLinux環境が適しているとされるが、それはWindowsでの利用にいくつかの制約があるためである。特にNvidiaのWindows on Arm用ドライバーが未提供であることが問題となり、RTX GPUを活用した高度なグラフィックス処理や加速機能が利用できない。
この制約は、Windows環境でのゲームやクリエイティブ用途を主とするユーザーにとっては課題となる。また、Thelio Astraの設計上の制約も見過ごせない。PCIe 4.0やDDR4メモリという仕様は安定性を保つ一方で、最新のDDR5やPCIe 5.0規格に比べるとパフォーマンス面でやや物足りなさを感じる場面がある。
さらに、フロントI/Oが搭載されていない点については、利便性よりもデザインを優先した結果ともいえるが、実用性の観点から改善を望む声も聞かれる。これらの課題を考慮すれば、Thelio Astraは万人向けではなく、特定用途に特化したパフォーマンスを求めるプロフェッショナル向けであることが明確である。そのため、用途に応じた選択が求められるだろう。
未来の可能性を感じさせる製品の進化
Thelio Astraは現時点での性能でも驚異的だが、その構造は今後のさらなる進化を予感させる。たとえば、現在の構成でもRTX 4080 SuperやGeForce RTX 5090への対応が視野に入っており、未来のグラフィックカードやアクセラレーターに柔軟に適応できる設計となっている。この拡張性は、今後の技術革新に対応しやすいという点で非常に大きなメリットを持つ。
加えて、System76が独自に提供するLinux環境との組み合わせにより、企業向けの開発ツールとしての地位もさらに強固なものとなる可能性がある。公式のコメントでも、自動車ソフトウェアの迅速なプロトタイピングに最適であるとされており、この点は特定業界での利用を意識した設計の一端を垣間見ることができる。
一方で、現在の市場においてArmアーキテクチャの普及はまだ始まったばかりであり、その将来性がどう展開されるかは未知数である。しかし、Thelio Astraのような製品がその先陣を切ることで、他のメーカーにも影響を与え、Armアーキテクチャを採用したデスクトップPCの選択肢が広がる可能性は大いにあるだろう。