AMDの次世代CPU「Ryzen AI 7 350」がPassMarkベンチマークに姿を現した。Zen 5とZen 5cコアを組み合わせたKrackan Pointベースの同モデルは、シングルスレッド性能で3,919ポイントを記録し、同じZen 5世代の上位CPU「Ryzen AI 9 HX 370」とほぼ同等の結果となった。

一方、マルチスレッド性能は21,127ポイントにとどまり、前世代「Ryzen 7 8845HS」や競合のIntel Lunar Lake、Qualcomm Snapdragon X Eliteに対しては若干の苦戦を見せた。

シングルスレッド性能ではIntelのCore Ultra 7 258Vが4,109ポイントとわずかにリードするが、Ryzen AI 7 350はQualcommのSnapdragon X Eliteを大きく上回っており、世代を超えた競争力を証明した。45W TDPとRadeon 860M内蔵GPUを搭載するこのモデルは、CES 2025での正式発表が期待されており、真の性能や新たなラインアップが明らかになることになるだろう。

Zen 5とZen 5cの組み合わせが示すRyzen AI 7 350の新たな特徴

Ryzen AI 7 350は、AMDが新たに採用するKrackan Pointアーキテクチャを基盤に構築されている。従来のHawk PointベースのRyzen 7 8845HSでは、8つのフルZen 4コアを採用していたが、今回は4つのZen 5コアと4つのZen 5cコアのハイブリッド設計を導入している。この構成がシングルスレッド性能を向上させた要因の一つだが、マルチスレッド性能においては完全なZen 5コアのみで構成されるCPUには及ばないことが明らかになった。

Zen 5cコアは省電力設計であり、消費電力を抑えつつ性能を確保する目的で導入されている。一方、Zen 5コアは高性能処理を担うことでバランスを取っている。このようなハイブリッドコア設計は、モバイル向けプロセッサの進化を示すトレンドの一つともいえるだろう。ただし、PassMarkの結果ではマルチスレッド性能が21,127ポイントにとどまったことから、ソフトウェアやタスクによっては性能の頭打ちが見られる可能性も考えられる。

AMDはこの新しい設計で競争力を維持しつつ、シングルスレッド性能の向上と消費電力の最適化を図っていると考えられる。CES 2025での正式発表後、さらに具体的な仕様や最適化の詳細が明らかになるだろう。

ライバルとの性能比較から見えるRyzen AI 7 350の立ち位置

競合となるIntelの「Core Ultra 7 258V」やQualcommの「Snapdragon X Elite X1E-80-100」との比較は、Ryzen AI 7 350の強みと課題を浮き彫りにする。シングルスレッド性能では、IntelのCore Ultra 7 258Vが4,109ポイントでリードしているものの、Ryzen AI 7 350は3,919ポイントと僅差に迫っている。一方で、QualcommのSnapdragon X Eliteは3,318ポイントにとどまり、Ryzen AI 7 350の方が大きく上回っている。

マルチスレッド性能では、Intel Core Ultra 7 258Vが20,018ポイント、Snapdragon X Eliteが23,400ポイントを記録し、Ryzen AI 7 350の21,127ポイントは中間的な結果となった。しかしSnapdragon X Eliteはハイパースレッディング機能を搭載せずにこの数値を達成しており、その点で驚異的な結果といえる。一方、AMDはTDP45Wの電力枠でこの性能を実現しており、モバイル市場でのバランスを意識した設計が見て取れる。

こうした比較結果は、Ryzen AI 7 350がシングル性能において優位性を発揮しつつも、マルチスレッド性能では競合との競り合いが続いていることを示している。AMDがCES 2025でどのような最適化や追加発表を行うのかが、今後の注目点となるだろう。

CES 2025での発表が示すAMDの戦略と期待

AMDはCES 2025でRyzen AI 7 350を正式に発表する予定であり、同時にStrix HaloやHawk Pointリフレッシュ版といった新モデルの投入も期待されている。この発表のタイミングは、モバイル向けCPU市場においてIntelやQualcommと直接競合する戦略の一環とみられる。

AMDはZen 5世代において、消費電力と性能のバランスを取るアーキテクチャ設計を進めており、特にAIタスクや効率的な電力管理において強化が図られる可能性が高い。Ryzen AI 7 350はRadeon 860M内蔵GPUを搭載しており、AI演算やグラフィックス性能の向上が期待される分野でもある。これが競合との差別化要素としてどこまで発揮されるかが、今後のカギとなるだろう。

CES 2025は、AMDが新世代モバイル向けCPUに込めた戦略や技術力を披露する場として注目される。発表を通じて、Ryzen AI 7 350がIntelやQualcommに対してどのような競争力を持つのか、また市場の反応がどのように推移するのかが今後の焦点となるだろう。