AMDの次世代APU「Strix Halo」がGeekbenchに登場し、その性能が注目を集めている。「Ryzen AI Max+ Pro 395」とされるこのモデルは、16コア32スレッドのZen 5アーキテクチャとRDNA 3.5ベースのRadeon 8060S iGPUを搭載し、Vulkanベンチマークで67,004ポイントを記録。これはNvidia RTX 4060モバイルGPUを上回る数値だ。
テスト環境には64GBのDDR5メモリとWindows 11 Proが使用され、初期段階でこれだけの性能を示したことから、今後の最適化でさらなる進化が期待される。AMDは2025年のCESで正式発表を行う見込みであり、この新ラインナップが市場でどのような影響を与えるか注目される。
Strix Haloの性能を支える革新技術とは
AMDの新APU「Strix Halo」は、Zen 5アーキテクチャとRDNA 3.5ベースのRadeon 8060S iGPUを搭載し、これまでのAPUの限界を超えた設計が特徴である。このモデルは16コア32スレッドというハイエンド仕様に加え、64MBのL3キャッシュを備えている。
このキャッシュ容量は、効率的なデータ処理を可能にし、特にマルチタスクや高負荷な処理において他の同クラス製品を凌駕する要因となる。さらに、RDNA 3.5アーキテクチャを採用したiGPUは40のコンピュートユニット(CU)を持ち、GPU性能で独立型GPUをも脅かす存在として注目されている。
これらの革新技術により、Ryzen AI Max+ Pro 395はVulkan APIで67,004ポイントというスコアを記録し、Nvidia RTX 4060モバイルGPUを超える性能を示した。この結果は、AMDがAPU設計の範囲をゲームパフォーマンスにも拡張したことを物語っている。一方で、現在のスコアは初期ドライバの影響を受けたものであり、さらなるチューニングが進めば性能の上限が広がる可能性が高い。
AMDがこの技術革新をどのように市場戦略に結びつけるかは今後の注目ポイントであるが、Strix Haloは従来のノートPCやデスクトップ向けプロセッサの在り方を再定義する可能性を秘めている。この革新が具体的にユーザー体験にどのような恩恵をもたらすのか、今後の発表に期待が寄せられる。
テスト環境と性能の相関関係
Strix Haloの性能を測る上で使用されたテスト環境は、通常のエンドユーザー環境を反映しているとは限らないが、その内容は非常に興味深い。AMDは今回のベンチマークで「MAPLE-STXH」というリファレンスボードを使用し、64GBのクアッドチャネルDDR5メモリを搭載した。1,994 MT/sというメモリクロックは、現在の市販モデルで一般的な速度を上回り、性能評価における優位性を示している。
さらに、64ビット版Windows 11 Proが採用されたことで、最新のOS機能とハードウェアの統合性が試されている。この環境で得られたスコアは、ハイエンドな条件下での性能を示しており、実際の利用状況とは異なる可能性がある。だが、このようなテストが持つ価値は、最適条件での能力を明らかにする点にあると言える。
一方で、これほど高い性能を発揮する背景には、AMDがリファレンスボードを通じてAPUの設計を最適化している点が挙げられる。市場投入後、この性能が一般消費者向けの製品にどれだけ反映されるかはまだ未知数だ。だが、この結果は、AMDが開発において性能と効率性の両立を重視していることを示しており、競合他社にも影響を与える可能性が高い。
ラインナップ全体の位置づけと市場への影響
Strix Haloシリーズは、Ryzen AI Max+ Pro 395をフラッグシップとしながらも、その他のモデルによる幅広い市場への対応を視野に入れている。Ryzen AI Max 390やRyzen AI Max 385、さらにはRyzen AI Max 380といった下位モデルもラインナップされ、これらはコア数やiGPUの性能によって細分化される。
たとえば、Ryzen AI Max 385では32のCUを持つRadeon 8050Sを搭載し、Ryzen AI Max 380では16 CUという構成となる。
この多層的な構造は、AMDが多様なユーザーニーズに応える戦略の一環と考えられる。上位モデルはハイエンドユーザーやゲーマー向け、中位モデルはパフォーマンスとコストパフォーマンスを重視する層をターゲットにしている可能性がある。さらに、TDPが55Wから130Wの範囲とされることは、省電力設計と高性能の両立を目指している証だ。
AMDは2025年のCESでStrix Haloの正式発表を行うと噂されているが、このタイミングは競合他社に対抗するための布石と捉えられる。市場が高性能かつ効率的なプロセッサを求める中、Strix Haloの登場は競争を激化させるだけでなく、業界全体の技術革新を促進する引き金になる可能性がある。