AMDは10年前、Intelの価格対抗の選択肢として市場に存在していた。しかし、2014年にリサ・スーがCEOに就任して以降、同社は技術的再構築を進め、RyzenやEpycシリーズの登場により市場での競争力を大幅に強化した。

特に、Zenアーキテクチャの成功は、AMDをデスクトップおよびサーバー市場の主要な競争者に押し上げ、パフォーマンス面でIntelに対抗する立場を築いた。加えて、AIやモバイル市場への進出により、AMDはさらに成長を遂げ、今ではデスクトップ市場で29%、サーバー市場で24%のシェアを占めるまでに至った。

AMDが手にした競争優位性の鍵

リサ・スーがAMDのCEOに就任して以来、同社は技術的な立て直しを進め、競争優位性を手に入れた。その最大の要因は、Zenアーキテクチャの導入だ。Zenシリーズは、AMDがそれまでの不安定なパフォーマンスから脱却し、Intelに対抗する基盤を作った。

特に、Zen 3では単一スレッド性能が改善され、Intelの優位性を打破することに成功した。これにより、AMDはデスクトップ市場において強力な立場を確立し、Ryzenシリーズが多くのユーザーに受け入れられるようになった。

さらに、Epycプロセッサはデータセンター市場でも存在感を発揮しており、サーバー市場でのシェアを急速に拡大している。AMDが価格とパフォーマンスのバランスに優れた製品を提供する一方で、Intelは依然として高価格帯での支配力を持ち続けている。これらの技術的優位性が、AMDの成長を支える要因となっており、今後の市場競争において重要な要素となるだろう。

AMDは、Zenアーキテクチャを進化させることで、デスクトップからサーバー、AI市場までの広範な領域で競争を激化させている。この技術的な転換が、同社の成功の礎となり、さらなる成長の基盤を築いている。

AIとモバイル市場への進出

AMDはAI分野においても積極的に進出している。2022年にXilinxを買収したことにより、同社はAI市場での存在感を強化し、特にニューラルプロセッシングユニット(NPU)を搭載した製品群が注目されている。これにより、モバイル製品にもAIエンジンを搭載することが可能となり、AMDは新たな技術領域においてもシェア拡大を狙っている。

AI市場は今後ますます重要な成長分野となると予想され、AMDはこの領域における競争力を強化していくことが求められる。

一方で、モバイル市場におけるAMDのシェアは依然としてIntelに比べて小さい。特に最上級のモバイルモデルにおいて、AMDはまだ市場のリーダーにはなっていない。しかし、Ryzen Mobileはそのパフォーマンスと電力効率のバランスにおいて着実に進歩しており、OEMからの採用が増加している。今後、AMDはさらにモバイル市場での地位を強化する可能性が高い。

モバイル市場での競争が激化する中、AMDがどのようにしてIntelに挑戦するのか、またAI分野での成長をどこまで実現できるのかが注目される。

GPU市場でのAMDの挑戦

GPU市場におけるAMDの挑戦は続いているが、依然としてNvidiaに対する劣位が目立つ。RDNAおよびRDNA 2アーキテクチャは、パフォーマンスや電力効率で顕著な進歩を遂げたものの、Nvidiaの持つCUDAエコシステムやレイトレーシング技術には及ばない。特に、NvidiaのGPUはAIや機械学習、ゲームのグラフィックス処理において優れたパフォーマンスを発揮しており、その支配力は依然として強い。

AMDのGPUは、コストパフォーマンスに優れる点が強調されるが、ゲームやクリエイティブ用途においては、Nvidiaの支配的な地位を打破するにはまだ時間がかかるだろう。

AMDがRDNAアーキテクチャを進化させ、より高いパフォーマンスを実現することができれば、Nvidiaにとっての脅威となる可能性もある。しかし、GPU市場での支配を握るためには、技術革新と開発者支援の両面でさらなる努力が必要だ。

Nvidiaの強みを踏まえた上で、AMDがどのようにしてGPU市場での地位を向上させていくのか、今後の戦略に注目が集まる。