日本のIT大手NECが、青森県六ヶ所村にある六ヶ所核融合エネルギー研究所で稼働予定のスーパーコンピュータを発表した。この新システムは、Intel XeonプロセッサとAMD Instinctアクセラレータを組み合わせ、理論上の計算能力40.4ペタフロップスを達成する見込みである。
NECは、核融合科学研究に必要な高度なシミュレーションや計算を支援するため、量子科学技術研究開発機構(QST)向けに構築を進めており、既存の核融合プロジェクトの計算力を約2.7倍に引き上げることを目指している。
システムは、360台のNEC LX 204Bin-3ユニットにIntelの6900Pプロセッサを720基搭載し、さらに70台のNEC LX 401Bax-3GAユニットには280基のAMD Instinct MI300Aを搭載している。また、ストレージにはDDN社のES400NVX2を採用し、計42.2ペタバイトの容量を持つ。
このスーパーコンピュータが実際に稼働すれば、最新のTOP500スーパーコンピュータリストで約23位にランクインすると推定されており、今後の核融合研究において重要な役割を果たすだろう。
核融合研究を支えるNECの最先端技術とその挑戦
NECが開発中のスーパーコンピュータは、核融合研究におけるシミュレーションと解析能力を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。現時点で日本の量子科学技術研究開発機構(QST)が目指す核融合研究では、高度なシミュレーション技術が必須とされ、NECの新システムはそれに応える構成となっている。
IntelのXeon 6900PシリーズプロセッサとAMDのInstinct MI300Aアクセラレータの組み合わせにより、既存のシステム性能を約2.7倍に引き上げる設計が施されているのだ。
NECはこれまでにも国内外の研究機関と連携し、スーパーコンピューティング技術の向上を支援してきたが、今回のシステムは核融合研究の発展に向けた一大プロジェクトの要とされる。特に、六ヶ所核融合エネルギー研究所での稼働は、ITERプロジェクトのような国際的核融合プロジェクトの一翼を担うものであり、システムがどれだけ正確かつ迅速に核融合反応のモデル化や実験予測に対応できるかが今後の成果を左右する。
NECはこのような最前線での貢献を通じて、核融合エネルギーの実現に向けた技術的な基盤を提供することに注力している。
DDN社の高度ストレージと冷却システムの役割
NECのスーパーコンピュータは、計算能力だけでなく、膨大なデータの処理速度と安定性を支えるストレージシステムにも最新技術が導入されている。DDN社のES400NVX2ストレージとStorage Fusion Architecture(SFA)によって、42.2ペタバイトの容量を持ち、最大300万IOPSという圧倒的な処理能力を提供する。
これにより、ITERプロジェクトでの実験データの蓄積や分析が効率化され、次世代トカマク炉設計へのフィードバックが迅速に行えるようになる。
さらに、NECはGiga Computing社が設計した液冷システムを採用し、超高性能なCPUとアクセラレータが発する膨大な熱を効果的に冷却する体制を整えている。冷却技術の進化はスーパーコンピュータの安定稼働に欠かせない要素であり、これにより運用コストの低減や長期的な信頼性も高まると期待されている。
ストレージと冷却技術の双方で最新の取り組みを取り入れることで、NECは単なる計算能力の提供に留まらない、高効率かつ高耐久なシステム構築を実現している。
スーパーコンピュータTOP500に向けたNECの戦略とその意義
TechSpotの報道によると、NECの新システムはTOP500スーパーコンピュータリストで世界23位にランクインする可能性があると見込まれている。このランキングに名を連ねることは単なる名誉にとどまらず、今後の技術開発や研究投資における重要な指標ともなり得る。NECがこのプロジェクトにIntelやAMDといった国際的企業と協力して挑む理由の一つに、競争力の強化と技術者の育成があると考えられる。
ランキング上位に入ることで国内外の研究機関からの注目度が増し、今後の共同研究や技術提供の機会も広がる可能性がある。NECが核融合研究において他の技術ベンダーと連携を深めることで、日本の研究機関が最先端技術を活用し続ける土壌が確立され、より持続的な技術革新が見込まれる。
こうした位置付けは、NECがグローバルなスーパーコンピューティング業界でのプレゼンスを強め、日本が主導する技術領域の一つとして核融合研究を支える役割を担うことにもつながるといえる。