AMDは、EPYC 9005「Turin」シリーズ向けにAMD P-Stateドライバを標準とするLinuxパッチを公開した。この変更により、EPYCプロセッサは従来のACPI CPUFreqドライバではなく、より効率的なP-Stateを使用することになる。

特に最新世代のEPYCサーバー向けには、標準での電力効率の改善が期待されている。この新たなドライバはLinux 6.13のパワーマネジメントシステムに組み込まれる予定で、11月後半のマージウィンドウを経て、安定版のリリースは来年2月になる見込みだ。AMDはこれに伴い、さらなるパフォーマンス向上を目指したテストを実施中である。

AMD EPYCがついにACPI CPUFreqからP-Stateへ移行

AMDは、これまでサーバープロセッサに対して長く採用されてきたACPI CPUFreqドライバを、5世代目のEPYCプロセッサ「Turin」シリーズ以降でAMD P-Stateドライバに置き換える決定を行った。これにより、Ryzenプロセッサと同様に、EPYCシリーズも標準で新しい電力管理システムを利用することになる。

AMD P-Stateドライバは、CPUの動的な周波数調整をより効率的に管理することで知られており、電力効率の向上が期待されている。従来のACPI CPUFreqドライバは、汎用性が高い一方で、特定の用途における最適化が不十分なケースがあった。AMDはこれを受け、EPYCシリーズ向けに専用のドライバを開発し、電力管理においてさらなる改善を目指した。今回の移行により、サーバー環境においてより低い電力消費と高いパフォーマンスの両立が実現する可能性が高まるとされている。

新ドライバで電力効率が向上する見込み

AMD P-Stateドライバは、従来のACPI CPUFreqドライバと比較して、より細かい制御を実現する点が特徴だ。AMDのエンジニアによれば、この新しいドライバでは、CPUの最小動作周波数を「非線形周波数」の最も低い値に設定することが可能になり、システム全体の電力消費を抑えながらも効率的な運用が可能になるという。

また、特に新しいEPYCプロセッサでは、サーバー向けのワークロードに最適化されたP-Stateドライバが、パフォーマンスと省エネのバランスを大幅に改善することが見込まれている。こうした最適化により、電力効率が重視されるクラウドコンピューティングやデータセンターでの導入が進むことが期待されている。AMDは、今回のP-Stateへの移行が持つエネルギー効率への影響を精査するため、さらなるベンチマークを行う予定である。

Linux 6.13のマージウィンドウは11月後半に開始

Linux 6.13のマージウィンドウは、2024年11月後半に開始される予定であり、この時点でAMDのP-Stateドライバが正式に組み込まれる見通しである。マージウィンドウとは、Linuxカーネルの次期バージョンに向けて新しい機能や修正を取り込む期間であり、これにより新機能が安定版に向けて準備されることになる。

このプロセスが終了した後、2025年2月にリリースされる予定のLinux 6.13の安定版において、EPYC 9005シリーズプロセッサがデフォルトでP-Stateドライバを使用することが確定する。マージウィンドウ期間中には、さらなる最適化や調整が行われる可能性があり、これによりドライバの性能がさらに向上することが期待されている。開発者コミュニティの注目も高く、この変更が持つ影響に対して慎重な検証が進められている。

5世代目EPYCプロセッサ向けベンチマーク結果に注目

AMDは、5世代目のEPYCプロセッサ向けにP-StateドライバとACPI CPUFreqドライバの比較ベンチマークを進行中である。この結果は、企業が新しいプロセッサとドライバを導入する際の判断材料となる重要な要素であり、特にパフォーマンスと省エネのバランスに関するデータが注目されている。

初期の報告によれば、P-Stateドライバは従来のドライバと比較してより効率的な動作が期待できることが示唆されているが、詳細な数値が公開されるのは今後の予定である。データセンターやクラウド環境など、電力消費を最小限に抑えつつ高いパフォーマンスが求められる分野での効果が特に注目されている。AMDは、今回のドライバ移行により市場での競争力をさらに高めることを目指しており、今後のベンチマーク結果がどのような評価を受けるかが注目される。