初代Google Pixel Foldは、他の折りたたみスマホとは一線を画すデザインで登場した。縦長が主流の中、Pixel Foldはワイドなデザインを採用し、開いたときの16:9のアスペクト比はまるでタブレットを操作しているかのような感覚を提供した。
しかし、後継機のPixel 9 Pro Foldは、他の折りたたみスマホと同様の縦長デザインへと回帰した。
Googleのこの決定が正しいのか、初代モデルが持っていた利点を振り返りながら検証していく。

初代Pixel Foldの革新的なデザインとは

初代Pixel Foldは2023年に登場し、他の折りたたみスマホとは異なるワイドなデザインで注目を集めた。多くの折りたたみスマホが縦長で狭いデザインを採用している中、Pixel Foldは閉じた状態でも横幅が広く、開いた時には16:9のアスペクト比を持つランドスケープモードで展開される。これにより、ユーザーはよりタブレットに近い体験を得ることができ、動画視聴や作業効率を向上させる設計となっていた。

このデザインは単にユニークであるだけでなく、アプリの使い勝手にも大きな影響を与えた。特にGoogleのアプリ群においては、Pixel Foldの大画面を活かしたタブレットライクなインターフェースが提供され、他のスマホでは実現できない効率的な操作が可能であった。このように、Pixel Foldのデザインは「本のように折りたたむ」というコンセプトを最大限に活用し、従来のスマホ体験を超える新たな次元を切り開いた。

このデザインアプローチは、一部のユーザーからは高く評価されつつも、市場全体では主流にならなかった。しかし、Pixel Foldはその独自性で一部のニッチ層に支持され続けている。

Pixel Foldのワイドデザインがアプリに与えた影響

Pixel Foldの広いアスペクト比は、アプリの表示や操作性にも大きな影響を与えた。特に、Googleのアプリケーションにおいては、広い画面を最大限に活用するように設計されており、通常の縦長スマホでは見られない独自の利点があった。例えば、Gmailではタブレットのようにフォルダリストとメール本文が左右に並んで表示され、メールの管理が非常に効率的に行えるようになっていた。

また、YouTubeなどの動画アプリでもPixel Foldのワイドなディスプレイは効果的に活用され、ビデオの視聴体験が向上した。特に「フレックスモード」で画面を半分折りたたみ、下半分をスタンド代わりに使う場合、Pixel Foldの16:9比率は黒い余白が少なく、映像が大画面で楽しめるのが大きな特徴だった。この点は、他の折りたたみスマホにはない利点であり、エンターテインメント用途においては非常に魅力的な要素となっていた。

しかし、多くのアプリはPixel Foldのデザインに最適化されていなかったため、全てのアプリがその恩恵を受けたわけではない。この点は、広いアスペクト比のスマホ全般に共通する課題であり、アプリ開発者側の対応が求められる部分でもあった。

次世代Pixel 9 Pro Foldの伝統的デザインへのシフト

次世代のPixel 9 Pro Foldは、初代Pixel Foldのワイドなデザインから、より伝統的な縦長の折りたたみスマホデザインへとシフトした。これは、他の多くの折りたたみスマホが採用しているトレンドに沿ったものであり、閉じた状態では従来のスマホに近い使い心地を提供し、開いた時にはより縦長の画面を活用するアプローチである。これにより、従来のスマホユーザーにとって違和感の少ないデザインとなっている。

しかし、この変更により、初代Pixel Foldが持っていた広い画面を活かした操作性やアプリ体験が失われることとなった。特に、メールや動画視聴、チャットアプリなど、広い画面を前提としたユーザー体験は、Pixel 9 Pro Foldではやや劣るとされている。例えば、Discordのようなアプリでは、Pixel Foldのワイド画面ではサーバーリストとチャットが同時に表示されていたが、Pixel 9 Pro Foldでは画面が狭く、これらが切り替え表示となり、操作性に違いが出ている。

Googleがこのデザイン変更を選択した理由として、主流のスマホデザインへの回帰が市場での受け入れを狙ったものと考えられるが、独自性を犠牲にしたとの声も少なくない。

折りたたみスマホ市場の未来:Googleの選択は正しかったか

折りたたみスマホ市場は、今後も成長が期待されるが、デザインに関する選択肢が限られてきていることは否めない。GoogleがPixel 9 Pro Foldで伝統的な縦長デザインに回帰したことは、ある意味で市場の主流に合わせた戦略と言えるが、その一方で、初代Pixel Foldが持っていた革新性や独自性を捨てたとの見方も強い。特に、ワイドな画面を求めるユーザー層にとっては、Pixel 9 Pro Foldは物足りない選択肢となっている。

今後、Googleが再び独自のデザインアプローチを採用するのか、それとも市場のトレンドに従い続けるのかは不透明である。多くの折りたたみスマホが似たようなデザインに収束していく中で、Googleがどのような方向性を取るかは、折りたたみスマホ市場全体の未来にも大きな影響を与えるだろう。

現在、SamsungやHuaweiなどの競合他社も折りたたみスマホ市場に参入しており、それぞれ独自の強みを活かしているが、Googleが他社との差別化を図るためには、再び革新的なデザインを取り入れる必要があるかもしれない。